「さて貴方はどの正義を振りかざす?」MOTHER マザー CINE LADAさんの映画レビュー(感想・評価)
さて貴方はどの正義を振りかざす?
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週末に気軽に本作をNetflixでチョイスし、観終わってがっくり肩を落とす。あまりにも救いの無い話は、実際に起きた事件を題材にした映画だった。
こんな結末を、映画を通して知ってしまった社会の傍観者は、親兄弟が悪い、役所は何をしていたんだ、警察は、ソーシャルワーカーは、マスコミはと、痛ましい事実を抑制出来なかった現実社会に腹を立てがちだ。なんなら政治にまで飛び火しそうな勢いすらある。
しかし映画で(しかもサブスクで)事件を知ったような人間が、後から遠く離れた土地で何を叫ぼうとも、どんな形の正義の拳を振りかざそうとも、何も解決することはない。所詮野次馬。事情も知らずにただ首を突っ込む姿は、偽善者と色眼鏡で見られること間違いなしだ。
この作品を目にして、明日から道端に佇むホームレスの家族のために何かしようとは思わない。お金もあげないし、話しかけることすらないであろう。人でなしと言われようが、関わることはない。だから私が、周平が生きてきた環境に文句を言う筋合いはないのである。
ただ、こういう事件が生まれる社会で、私らは生きていると知ることができた。正直それで十分だと思うのだ。
それにしても、重くて救いようのない題材を、せめて映画として成立させたのは長澤まさみのキャスティングのお陰だろうか。「カラダにピース。」なイメージを打ち消すほどの腐れ役。彼女もしっかりと嫌われ演技をやり遂げたが、それでも長澤まさみであることが唯一の救いだった。
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