「最後の「告白」のための息苦しさ」MOTHER マザー タカさんの映画レビュー(感想・評価)
最後の「告白」のための息苦しさ
社会の枠から外れて孤立し、底辺の荒んだ生活を続けるクズな母とその子どもたち。作品が描く人物像は、現実世界では殆どの人が関わることのないであろう非日常の世界であるが、映画やドラマでは比較的ありふれた姿であり、「誰も知らない」や「万引き家族」などでも近い人物が描かれた。
助けを差し伸べる手を振り払い、ゆきずりの男と過ちを繰り返す母と子は、作品としての圧倒的なリアリティはあるのだが、あまりの腐り具合に全く共感することはできず、現実感はない。前述したように珍しいテーマではないため、新鮮味や驚きもそこまで感じられない。とにかく暗い展開が続き、救いの無さに辟易すると同時にまだ続くのかと疲労が溜まってくる。
このまま終わっていればこの作品は駄作であった。しかし、最後の「告白」が全てを覆す。この「告白」のための息苦しさだったのか、苦痛に思えた展開が絶対に必要であったことを思い知らされた。
この映画はどうか最後まで見てほしい。途中で見るのをやめてしまったら本当に何も残らない映画であるが、最後まで見れば間違いなく記憶に刻まれる映画になるであろう。
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