「大森立嗣監督は人気俳優も本物の役者にしてしまう --- "女優"長...」MOTHER マザー よしさんの映画レビュー(感想・評価)
大森立嗣監督は人気俳優も本物の役者にしてしまう --- "女優"長...
大森立嗣監督は人気俳優も本物の役者にしてしまう --- "女優"長澤まさみの本気を見た。大衆的な作品に出ることの多い彼女は正直、役者としての実力を昨今思う存分活かしきれていたとは言い難かったと思う。そんなイメージも本作で終わりだ、クズ男演じる阿部サダヲと共に。特に男どもを引き付けるときの何とも言えぬ間と語らずとも異彩を放つ存在感。そこには確かに本作殆どを占める鬼クソババアの隙間から垣間見える妖艶さみたいなものもあった。でも結局のところ大森監督の作品だなとも思った。今までも何かしら傷を負っていたり不器用だったりする人々のコミュニケーションを描いてきた印象のある監督が今回は愛すら超えた絆を紡いでみせた。そこに役者の熱量も合わさって時に圧倒される。実際の事件に着想を得たらしい本作は決してオーディエンスフレンドリーな作品ではないし、長澤まさみ演じる秋子は本当に徹頭徹尾不愉快極まりなく現実社会における害そのものようだけど、彼女の胸糞な身勝手さが周平を際立たせ、様々な問題も普遍的な感情も司るよう。こんなクソか掃き溜めみたいな世の中ではよほど目を凝らさないと本当のものなんて見つけられないのかもしれない。ただ、終盤は幾分セリフで本作のテーマとかを直接的に語り過ぎなのでは、とも思ってしまった(もちろん僕なんかの思うところよりずっと深い意図があってのことなのだろうけど)。
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