「ヲタの数だけ人生がある。」あの頃。 時村さんの映画レビュー(感想・評価)
ヲタの数だけ人生がある。
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開始10分、主人公はひょんなことから松浦亜弥のシングルMクリップ集を見てなぜか涙してしまう。
ここで全て決まったと思った。この感覚がわかるかどうかで非常に賛否が別れる所だと思う。
タモリ倶楽部のハロプロ回で言及されていたが「アイドルは人の弱味につけこんでくる」。
以降の彼は坂道を転がり落ちるように(?)アイドル道を楽しんでいく。
しかしアイドルは偶像。事あるごとに現実が顔を見せる。彼は存在する虚構と現実の間で揺れ動く。
悩み苦しみまではしないが、享楽の最中にいながらなんとなく現実の不安が意識の中に頭をもたげてくるのはリアルだ。
ハロプロアイドルは新陳代謝を繰り返して半永久的に続くので、ずっと虚構に浸っていることはできる。
しかし上京して現実が動き始めたことでハロプロから徐々に離れ、コズミンの死によって決定的に主人公の青春は終わった。
ネット弁慶の彼が今際の際までフィギュアを握っていたのが象徴的だ。
生前葬は現実にやったことらしいが、「あの頃楽しかったよな」で非現実に終わりを告げる寂しさを表現したのは秀逸だと思った。
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