エルヴィスのレビュー・感想・評価
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コテコテの濃厚映画
とにかくさまざまなエピソードがシームレスにつながって息つく暇もないほど濃い。
スコセッシのグッド・フェローズ、オリバーストーンのナチュラル・ボーン・キラーズを超えるほどコテコテ。
完全なアート映画。
素晴らしい歌唱で、主演が吹き替えなしで歌ってる場面多いいんだけど、BGMで流れる時は今風なアレンジが加わってるのが残念。
当人はどうだったのかわからないけれど、音楽への愛、R&B黒人音楽へのリスペクトなど台詞で語られることはなく映画的には行動と音楽で表現しているのがどこまで伝わっていたか!?
パフォーマンスの誕生秘話はよくわかったけど、歌唱法など音楽的な創作秘話がほとんどなかったのが残念。
なんでかR&Bが好きだったというだけなら仕方ないけど。
策士マネージャーの目から見た描写が多く、その手法はちょっと疑問。
伝説のスターの素顔は少ししか垣間見れない。
エキストラの演技が素晴らしく、というか、取り巻く人みんなの演技も素晴らしく、エルビスが虚構と化してしまっているのが残念。
エルビスもマネージャーも内面を独白するシーンはなく、映像と演技とストーリーで語っていく力技は見ていて疲れる。
でも見てよかった。
パフォーマンスシーンは、聴衆の熱狂ぶりやリアクションが素晴らしい。
多分、凝った映像、音楽のリアレンジを加えることで、当時の人々の衝撃を今の感覚で伝えたかったのだろう。
余計なお世話が多いアート映画であったが、エリビスの素晴らしさを再認識できた。
余談だけど
昔も今も、あそこまで聴衆を魅了するには、なにかしら無茶をして酒や薬に頼って身を滅ぼしてしまうのが悲しい
音楽を楽しむ
物語より、音楽を楽しむ作品だなと、思いました。
偉大なアーティストがステージ上で見ていた世界が、
どのようものだったのか、凡人の私には解るはずもないですが、愛という言葉では物足りないのではと。
エルヴィスと言えば、鋭い眼光のイメージでしたが、
ラストのライブシーンで、こんなにも優しい眼の方だったんだなぁと。
エンドロールの後の言葉が凄く良かったです。
マネージャーの物語だね…
彼には観客(ファン)の愛が必要だ!ということが痛いほど伝わる作品…
Elvis has left the building.
熱狂の渦に呑まれる --- 人種差別と公民権運動の高まりマーティン・ルーサー・キング・ジュニアが、ロバート・ケネディが、シャロン・テートが次々と殺された激動の時代の渦中で、奇しくも中心人物となっていくオースティン・バトラーの憑依したような熱演が魅せる!ロック伝記の王道パターンをなぞりながらも超えてくる!! バズ・ラーマン監督の彼らしいケレン味やバキバキに作り込まれたきらびやかな世界、現代らしくないキラキラ感とエルヴィスのそれがよくマッチしていて、ショーマンシップやイメージをよく表していたと思う。後で足したような過剰なカメラ揺れや動きもあって、作品にしっかりと"クセ"があった。劇中で初めて女性客が熱狂する瞬間の演出も完璧、よく合っていた。ただ、『監獄ロック』など名曲の歌われた映画たちをスルーしてサラッと既出の曲として出てくるという英断に本作の製作においての取捨選択を感じた。あくまでステージ上の歌手とそこから降りた人生にスポットを当てる。
この作品を"愛さずにはいられない" ---《愛》ステージ中毒とファンの愛。本作によってオースティン・バトラーの名を世界中が知ることとなるだろう。ビートルズやディランが影響を公言したような、今尚最も売れたソロアーティストである"エルヴィス"という現象を体現する。色気ダダ漏れ腰クネクネ高速ステップも流石。その過程/道中、彼にとっての音楽的原体験を象徴する人物であるマヘリア・ジャクソンも亡くなった…。ただ、本作以前から"大佐"スノーマンの存在は知っていたから、いい作品だったけどツラすぎて二度と見たくない『ラブ&マーシー』のポール・ジアマッティのように搾取するさまを見るのが怖かった。しかもそれが世界で一番愛されている役者と言っても過言ではない"いい人"なイメージしかないトム・ハンクスが演じるという。世界ツアー回らせずに、ラスベガスのホテルインターナショナルに軟禁して、ディナーショーみたいなところでライブさせまくってたのヤバすぎ。例えば『ボヘミアン・ラプソディ』などとは違って、存命のときにはあの寄生虫野郎とは決別できなかったか…ただ、最後のアンチェインド・メロディーはヤバすぎて鳥肌立った。。エルヴィスは出ていきました。
P.S. 大々的にピンクな服はキツいかもしれないけど久しぶりに小物や靴下なんかでピンク色のものを纏いたくなった。あと、バズ・ラーマン作品で一番好きな『ムーラン・ルージュ』の人がエルヴィスの父親役だった。
試写会当たったのに仕事で行けなかったの残念
Snowman strikes back again!
【”不世出の偉大なるロックンローラーの孤独と哀しみ”エルヴィスのデビューから壮年期までを演じたオースティン・バトラーのステージングと、悪徳マネージャーを演じたトム・ハンクスの怪演に魅入られた作品。】
ー 年代的に、エルヴィス・プレスリーについては殆ど知らなかった。
曲も“ハートブレイクホテル””監獄ロック”を知っている程度であった。
だが、この作品で描かれる、ロックスターの華やかさの陰にあった、悪徳マネージャーのパーカー大佐との確執、稼いでも稼いでも消えていく大金、愛し合ったはずの妻プリシラとの別れなど、エルヴィス・プレスリーの辿った、大スクリーンに映し出される、ジェットコースター人生に物凄い勢いで、魅入られた作品である。-
◆感想
・エルヴィス・プレスリーが、幼少時に貧しきゆえに黒人街に住み、目にし、聞いたゴスペル、R&Bに感化されていく姿。
ー 彼の音楽的素養が、黒人音楽に有った事。
そして、1950年代の黒人蔑視の時代背景や、1960年代に入り、起こった人種差別撤廃を訴え続けたキング牧師を始めとする暗殺事件に影響されるエルヴィスの姿を、彼がスターダムに駆け上がって行く姿と対照的に描く手法の見事さに、唸る。ー
・保守的思想が色濃かった時代に、若きエルヴィスの腰を激しく震わせながら歌うスタイルの対しての、古臭い保守層からの批判。
だが、それを上回る女性達からの熱狂的な歓迎も実に巧く描かれている。
時代が変遷しつつあったという事も併せて。
・エルヴィス・プレスリーの才能を見出し、超一流のロックンローラーの地位まで引き上げたパーカー大佐を演じた、トム・ハンクスの怪演振りも凄い。
ー 鑑賞中、トム・ハンクスの事が物凄く嫌いになってしまった程である。
自分の借金返済のために”海外へ行きたい”と言っていたエルヴィスを、ラスベガス・カジノにあるインター・ナショナルホテルでのショーの契約を勝手に結ぶ、強欲振り。
酷い奴だが、エルヴィスをスーパースターに、育て上げたのも、パーカー大佐であるという事実。-
・何よりも、エルヴィス・プレスリーのデビュー時から壮年期までを、あの華やかなステージングと自らの声で数々の歌を歌い上げたオースティン・バトラーの凄さ。”こんなに凄い俳優だったのか!”と驚いた。
<パーカー大佐の企みにより、ラスベガスのカジノに出演し続けるエルヴィス・プレスリーの哀しき姿。彼はここでスターに返り咲くが、見返りは大きく過労を薬物依存でごまかす生き方から抜け出せなくなっていく。
晩年(と言っても、僅か42歳である。若すぎるであろう。)、愛する妻プリシラは去り、独り豪奢なホテルの一室で薬物に依存しながら暮らし、夜は大観客の前で歌い続けるエルヴィス・プレスリー。
何とも切ない物語であるが、それでも多くの人に夢を与え続けたエルヴィスのゴスペル魂溢れる姿を、オースティン・バトラーが渾身の演技と歌で魅せる作品である。>
ロックンロールの始まりの人でKing of Rock 'n' Ro...
ロックンロールの始まりの人でKing of Rock 'n' Roll、エルヴィスプレスリーの伝記映画。
前評判が高い作品で、公開初日の今日(2022年7月1日)、有楽町丸の内ピカデリーのドルビーシアターの第1回目の回に行ってきました。
平日(金曜)の午前中というのもあって、お客様の年齢層が60代~70代のシニア層が多いか
なという印象でした。エルヴィスプレスリーのファンの世代だから…ということもあるのでしょうが、アロハやプレスリーTシャツで来場されていらしたり、上映前から(エルヴィスを満喫しようぜ!Rock 'n' Roll)なムードでした。
エルヴィスプレスリーは私が生まれた時にはすでに大スターでした。日本でも彼の曲は大ヒットしてたし、お笑い番組では芸人さんが盛んにプレスリーの物まねをしていました。
1977年8月16日は彼の死が報じられて、 世界に衝撃が走りました。その後、悲劇的な人生について盛んに報道されたので、-私も晩年はラスベガスのホテルでショーをやっていて、そのまま死んだ、人気が出過ぎて表に出れなくなって太って、薬を多用して、急に死んだというのは覚えていましたが、こんな話だったなんて!!
が、この映画、主役のプレスリーを演じたオースティンバトラーさんが最高にCUTE!
それで、すべて救われます。
なんというか、乙女心をわしづかみにしてしまうBOYで、スクリーンに出てくる彼の一挙手一投足に、胸がキュンキュンさせられます。
まだ若くて甘いマスクの彼のあどけない表情。やわらかくて癒されてしまう声質。それでささやくように歌うラブソング、一転して青春の雄叫び、体の芯から動き出す、震えるようなダンス。
震える声。
ホンモノのエルヴィスも、スターダムに乗った若い頃、オースティンバトラーさんのように本当に本当にCUTEなBOYだったんだろうなあと、想像したり、エルビスに恋をする当時のファンの気持ちを追体験しました。
バズラーマン監督作品なので、ひねった趣向がある作品なのかな? と予想していたのですが、きちんと描がかれた作品でした。
ただ、この作品では単純に下半身の動きで女性が狂ったように彼にヘロヘロになっていくかのように描いており、(この表現はちょっと違うんじゃ?)と思ったので、私的にはこの作品の減点ポイントになりました。当時は黒人のR&Bは細かい複雑なリズムを刻んでいるという理解がなくて、ただ「腰をふってる」という理解のされ方をされたのかもしれませんが、それってスポーツ選手を性的対象として写真をとりまくる人の感覚に近い認識だと思います。
そこに男性の認識している性と女性の認識する性の認識の違いを感じました。
若い女子ウケする男性のセクシーさというのは、清潔感やCUTEさがないと成立しないと思います。ジャニー喜多川さんがご存命だったら、うまく解説してくださるところなんでしょうけれども、だからこそ、私からみてCUTEなオースティンバトラーさんの起用で「プレスリー」というスターが誕生する必然が描けていたと感じた次第です。
あと、この作品、最高だった点はR&Bとゴスペルをプレスリーの原点としてしっかりと描いているところです。
この作品は、がっつりとブラックミュージックを愛したプレスリーの話で、ブラックミュージックを愛する方にお勧めです。
また、この作品は親代わりでもあった老獪マネージャーとの共依存関係が、上手に描かれています。また「親ガチャ」に苦しむ若者の話でもあるし、いろいろ考えさせられるところが多かったです。
悪くないがもう少し盛り上りが欲しい
バズ・ラーマンとエルヴィスのベストマッチ
とても良い映画です。もっと人種差別反対を唱えても良かった。
『エルヴィス』観ました。正直言って「とてもよかった」です。素晴らしい映画を観たと言う感じがします。監督は脚色のプロ、バズ・ラーマンですから、過去の彼の作品同様かなり思い切った脚色があるかと思いました。
しかしながら割とエルビスの人生をそのまま映し取っているように感じまし
大胆な脚色はなかったように思われます。主役はエルプスではなく、エルヴィスのマネージャーだったパーカー大佐です。エルヴィスのような大スターには必ず悪徳マネージャが登場してきます。クイーン、エルトン・ジョンも同様に悪徳マネージャーに搾取されました。
特に薬物を盛られる場面は胸を痛めてしまいます。アーティストを扱った映画のほとんどは酒・薬物に溺れて、身を滅ぼしていく結末が多いからです。
音楽もとても良かったです。エルビスの楽曲も流れますし、エルビスが影響受けたであろうアーティストたちが登場しました。
そして1番心を寄せたのは、エルヴィスが黒人たちと同じように貧しい環境で育ち、ゴスペロの心を持っていたと言うことです。映画ではそれほど強く描かれていませんでしたが、エルヴィスは人種差別に反対していた人物だと思います。その点をもう少しアピールすればいい映画になったのではないでしょうか。
『運だぜ!アート』のluckygenderでした
エルヴィスはブラックミュージックを心から愛していた
僕が外国のポップミュージックに興味を持ち始めた頃(小学校高学年だよ)、かつてスーパースターだったエルヴィスが「サスピシャスマインド」「この胸のときめきを」(これは日本でも大ヒットした)とヒット曲を連発し復活を遂げ、さらにラスベガスのライブ「エルヴィスオンステージ」のド派手な衣装とパフォーマンスで大絶賛を浴び、まさにロックミュージックの生きる伝説となったところでした。しかし、この復活も何年かするとドーナツの食べ過ぎ(都市伝説?)による肥満が噂され若くして亡くなってしまった。これが僕のリアルなエルヴィス体験である。
この頃僕はマーヴィン・ゲイ、テンプテーションズ、ジャクソン5が好きになり、特にエルヴィスには興味はなかったのだが、黒人音楽を取り入れて人気を得たということは知っていた。模倣?流用?なんて思っていたが、エルヴィスの音楽は単なる模倣ではなく、その出自から始まり心からのブラックミュージックへの愛情から来たものだということがわかりすごーく感激してしまった。
当局からエルヴィスの黒人的なパフォーマンス(白人を貶める、性的で猥褻などという戯言)を止められたにもかかわらず、友人であるブルースの神様B.B.キングの助言もあり、自らのスタイルを貫き通し逮捕された下りでは不覚にも涙がこぼれてしまった。エルヴィスって凄いんだ(何を今さら)。
エルヴィスが世間に見つかってしまった冒頭のステージ、自らの思いを貫き禁じられたダンスパフォーマンスをするステージ、低迷から復活を遂げたステージ、この3つのステージ(そこに至った背景とオーディエンスの熱狂ぶりを含む)を観られただけで星5つ、大満足である(-0.5は終盤のマネージャーとのごたごた)。リトル・リチャードみたいな歌手(あの人リトル・リチャードだよね)が出てたのも感動もん。50年代のブラックミュージックを感じられたのも良かった。観て良かったなあ。エルヴィスをもう一度聞き直してみよう。
映画「ボヘミアン・ラプソディー」もそうだったけど史実を弄っているのだろうが、野暮なことは言うまい。観るものを感動させるラーマン監督の手腕を褒めておこう。
期待しすぎました
どっぷりエルヴィス
超えられない壁
承認欲求の代償と隷属
面白かった。
悪く言えばボヘミアンラプソディの二番煎じ、良く言えば全て描き切ったボヘミアンラプソディ。
この物語は奴隷のように使われる労働者は、案外その立場に理解と納得してしまっているというジレンマをテーマにしていると思うのだが、おそらく監督が推したいのは承認欲求だろう。
初めは母親にピンクのキャデラックをプレゼントをしたいという夢を持つ好青年がスターになった時何を望んでいくのか。
栄光と挫折の連続。
映画化する上ではうってつけの人生を歩んできたエルヴィスだが、映画の題材上どうしても比較されてしまうクイーンと違う点、
というよりどうしても劣ってしまう点は、ロックスターの原点が故、時代が遡りすぎるが故、現代人が誰でも知っている曲というものが少ないところにある。
この手の映画はどれだけ主人公が作った曲を知っているかが楽しむために重要になる。
気づかぬ間に知っていたという曲が目の前のスクリーンに映し出されるキャラクターをよりスターたらしめるからだ。
そのアドバンテージがあまりにもあるクイーンをあのような完璧な脚本で見せつけたのだから、比較されてしまえばどうということもない映画なのだが、
より人間らしく、栄光から没落までを主観と客観を織り交ぜながら描いたこの作品にも意義は大いにある。
何よりの理由はエルヴィスという人間をこの映画で知れたからである。
個人的な満足度は5200円ほど。
知ってるけど知らなかったスター
名前も顔もよく知ってるが、世代的に
どんな活躍したのか、どんな死に方したのか
など知らなかったスター。
かっこよかった。改めて曲を聴きたくなった。
細い頃のエルヴィスはかっこよかったんだろうな。
太いのしかみたことなかった。ほぼ。
大スターの恍惚と葛藤。
面白かったです。
中途半端なメルヘン
キチンとやるならそれなりに汚いところも見せるべきだと思うし音楽だってもっと全面に出して行くべき。
なんだってエルビスプレスリーだよ!
リサとか居なくても全然問題無かったと。
大佐が悪者役なのは間違いないんだけど完全なヒールでもない…
そりゃ太ったエルビスなんて美しくないし?スマートなほうが画にもなる。
昔の映像絡めるにしてもあまり上手では無いし当時の世相を絡めるに手法も…(凄い変革期だったのは間違いないけど)
あれだけ偉大なエルビスなんだからこの際汚いところには完全に蓋してもらいたかったです。
ミュージカルやるくらいに崩してほしかった。
期待していたのですが…
ビートルズもそのうち映画化されるんだろうからエルビスの家に遊びに行くシーン入れてほしかったな(無理だろうけど絶対楽しそう)
タイトルなし(ネタバレ)
1972年、米国ラスベガス。
4年目のショウを行っていたエルヴィス・プレスリー(オースティン・バトラー)は開幕直前に倒れてしまう。
が、マネージャーのトム・パーカー大佐(トム・ハンクス)は、主治医に薬を打たせ、エルヴィスはステージに立つ。
「エルヴィスを殺したのは俺じゃない!」と十数年後、ラスベガスの病院のベッドに横たわるパーカー大佐は夢の中で叫ぶ。
「そうだ、エルヴィスを世に出したのは俺だ。あれは53年の夏だった・・・」とパーカー大佐は回想する・・・
といったところからはじまる映画で、冒頭の15分ほどのあらすじを書いたわけだが、書いたのには理由がある。
とにかく、エルヴィスとパーカー大佐が出逢うまでの時制がコロコロ入れ替わり、さらには画面分割の手法まで使っているので、すんなりと映画に入っていけない。
「あれは53年の夏だった・・・」の後に、カーニヴァル育ちのパーカー大佐のエンタテインメント哲学や回想があり、
ファーストステージ直前に震えるエルヴィスの後ろ姿に、彼の生い立ちをコミック風にクロスカッティングし、
ステージにおける観客の戸惑いと熱狂のスローモーション、と続いていく。
「万華鏡のような演出」といえば聞こえがいいが、ごった煮のような演出で、エルヴィスに関心がなければ、まぁ、このあたりで寝落ちするでしょう。
(実際、隣席の婦人は寝落ちしていました)
ということで、エルヴィスにそれほど関心がないわたしは(わたしが知っているプレスリーは晩年のブクブクに太った姿だけなので)、いやはやどうしたものかといったところ。
ですが、観進めると結構面白い。
というのも、エルヴィス・プレスリーの音楽人生再現映画ではなく、「エルヴィスを通して観た米国暗黒歴史」映画だったからで、キリスト教的偏見と白人至上主義が色濃く残る(つまり黒人差別)50~60年代を毒々しく描いているからで、雰囲気的にはアメリカン・ニューシネマ的、映画でいうとジョン・シュレシンジャー監督『イナゴの日』、ロバート・アルトマン監督『ナッシュビル』を思い出しました。
その上、パーカー大佐の出自が、第一次大戦の脱走兵、グリーンカードのない不法移民というあたりも、移民に苦しむ米国の姿が投影されており、興味深い。
肝心の音楽シーンなのだが、これはあまりいただけない。
『ムーラン・ルージュ』などでみせたバズ・ラーマン得意の細切れ演出で、ダイナミズムを殺いだ感じ。
1曲1曲たっぷりと聞かせてほしいんだけれど、そこいらあたりはフラストレーションが溜まる。
おおお、と感動するのは、最後の最後に登場する本人歌唱の「アンチェインド・メロディ」。
これは圧巻。
また、「好きにならずにいられない(Can’t Help Falling in Love)」が編曲されて繰り返し繰り返し劇伴として使われているのも好ましいです。
全365件中、341~360件目を表示