「稀代のエンターティナーは孤独だったんだね…」エルヴィス 瑞さんの映画レビュー(感想・評価)
稀代のエンターティナーは孤独だったんだね…
家族や取巻きもたくさんいるけど、何だかひとりぼっちの孤高の音楽家に私には見えた。そして、体制に逆らう反骨心があって、自分の音楽を大事にしていて、観客を喜ばそうとしていることも… 映画が始まった途端、ギンギラギンのタイトルバックで内心大丈夫だろうかとその内容が危惧されたが、思いの他まともな作りで安心した。伝記物は、その人の一時期しか描かない作品も多いが、この映画は生まれた時からではないが、子どもの頃から死ぬまで描かれていた。観る前は、どういう風に始まるのか、子どもの頃から順に描いて行くのか、それとも死ぬ前の回想かと思っていたら、意外な形で始まった。昔、オマセな友だちに誘われて、「エルビス・オン・ツアー」を観て、すてきだなと思っていた。映画は駄作ばかりということだが、音楽は良い曲がたくさんある。映画を観に行く前から、なぜか「好きにならずにいられない」を口ずさんでいた。でも、彼の人生はほとんど知らなかった。エルヴィスのすごいところは、黒人を差別していなくて、純粋にすばらしい音楽を愛していたところだと思った。そして、家族や友人を大切にしている、めっちゃいい奴だってことも。マネージャーには全く恵まれなかったけれどね… オースティン・バトラーは、いわゆるそっくりさんではないが、雰囲気が出ていたし、初期のモノクロ録音の曲は口パクではなく、自身で歌ったということなので、がんばっていたと思う。トム・ハンクスは、現代のジェイムス・スチュアートと思えるくらい善人役が多かったのに、今回は狡賢い悪役を付け鼻までつけて、さすがの演技力でねじ伏せていた。プリシラの助言に従って、静養すればよかったのに、もっと生きていてほしかった。マイケル・ジャクソンは50歳で亡くなったが、エルヴィスは42歳。若すぎる!