「ドブネズミみたいに美しくなりたい。こんな映画撮ったジェームズ・ガンもヤベーけど、それを許したDCとワーナーが一番ヤベー!!💦」ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
ドブネズミみたいに美しくなりたい。こんな映画撮ったジェームズ・ガンもヤベーけど、それを許したDCとワーナーが一番ヤベー!!💦
スーパーヒーローが一堂に会するアメコミアクション映画「DCEU」の第10作にして、ヴィランで結成された決死隊”スーサイド・スクワッド”の活躍を描く『スーサイド・スクワッド』シリーズの第2作。
スーサイド・スクワッドの新たな任務は、南米に浮かぶ独裁国家”コルト・マルテーゼ”にある秘密研究所を破壊すること。フラッグ大佐やハーレイ・クインは、新メンバーと共に決死の上陸作戦を試みるのだが…。
監督/脚本は『ドーン・オブ・ザ・デッド』(脚本)や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのジェームズ・ガン。
○キャスト
ハーリーン・クインゼル/ハーレイ・クイン…マーゴット・ロビー。
リック・フラッグ…ジョエル・キナマン。
スーパーマンを病院送りにした事もあるという戦闘のプロフェッショナル、ロバート・デュボア/ブラッドスポートを演じるのは「MCU」や『ズートピア 』の、名優イドリス・エルバ。
半人半鮫の怪物、ナナウエ/キング・シャークの声を演じるのは『ロッキー』シリーズや『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』の、レジェンド俳優シルベスター・スタローン。
スーサイド・スクワッドのメンバーであるクレオ・カゾ/ラットキャッチャー2の父親、ラットキャッチャーを演じるのは「MCU」や『ジョジョ・ラビット』の、映画監督としても活躍するタイカ・ワイティティ。
製作総指揮を務めるのはザック・スナイダー。
MCU作品『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)の大ヒットにより、一躍アメコミ映画界の寵児となったジェームズ・ガン。しかし、続編『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017)も成功を収め、シリーズ第3作の制作も決定するなど乗りに乗っていた矢先の2018年7月、Twitter上で行っていた過去の発言が問題視され、なんとマーベルの親元であるディズニーから解雇を言い渡されてしまう。
その後の展開はなかなかにサプラ〜イズ。MCUに対抗して立ち上げたシリーズ「DCEU」が思いの外上手く回らず四苦八苦していたDC及びその親会社であるワーナーと、才能はあるのにそれを活かす場を失ってしまい途方に暮れていたガンがまさかの悪魔合体を果たす。
”制約一切なし”という超厚遇で迎え入れられたガンちゃんが作り出したのは、残酷お下品なんでもあり、ファミリー層をガン無視した狂気のおバカムービーだった。…こんなん撮ったガンもイカれてるけど、これを通したワーナーが1番イカれてるような気がする。
『悪魔の毒々モンスター』シリーズ(1984-)で知られるZ級映画製作会社トロマ・エンターテインメント出身のガンちゃん。
『ガーディアンズ』シリーズでは猫を被ってやがったんだなこのヤロウ!…と言わずにはおれない、トロマ精神溢れるナンセンスさこそが本作の魅力である。グロや流血は当たり前、ヒーロー映画なのにチンポやオッパイまで映し出されており、レーティングは当然の如くR15指定。これ、スーパーマンとかバットマンと同じフランチャイズの作品なんですよ。信じられます?
『プライベート・ライアン』(1998)のオマージュで幕を開ける本作。ノルマンディー上陸作戦も真っ青なパーティーメンバー皆殺し、これには普通のヒーロー映画だと思って鑑賞していたお客さんはさぞや驚いた事だろう。まるで主人公かのように登場していたマイケル・ルーカーや、前作のメインキャラクターであるキャプテン・ブーメランまで速攻でおっ死んじゃうんだからたまらない!!
そこからブラッドスポート率いる特攻野郎Bチームへと焦点が入れ替わり、物語は本格的なスタートを切る。
このBチームの面々がとにかく魅力的!危険すぎる”キャプテン・アメリカ”のピースメーカー、仲間も食べちゃおうとするサメの怪物、寝ぼけ娘のラットキャッチャー2に、なんじゃその能力!?な水玉マンなど、とにかく1人1人のクセが強い!
そんな彼らが友情を築き、チームを作り上げていく過程が本作の癒しポイント。ブラッドスポートとピースメーカーの意地の張り合いやネズミ娘とサメ男の友情など、彼らの掛け合いはとても楽しい♪いつまでもこのチームを眺めていたいと思わせる心地よいバイブスが心を満たしてくれます😊
ちなみに自分の一押しはラットキャッチャー2。気だるい雰囲気とふとした時に見せる優しい表情がなんとも言えず良い。なにより演じた女優ダニエラ・メルシオールが可愛いすぎる!!💕これまでハーレイ推しだったけど、これはちょっと推しを変更するしかないですねぇ…。シカタナイシカタナイ。
それだけに、後半ピースメーカーが裏切る展開には素直に驚かされた。あのジョン・シナが演じているんだからどうせ最後にはまた仲直りするんだろ、と思っていたら…。
使命と友情の間に揺れるも、結局は”アメリカ”のために残酷な選択をするピースメーカー。このアンビバレントな心境を見事に表現してみせたジョン・シナに本作の最優秀俳優賞を贈呈したい。この人こんなに演技が上手かったんだ!!バカみたいなコスチュームに身を包んでいるけど、実はこのキャラクターってジョン・シナのキャリア上1番シリアスな役どころだったんじゃないか?
悪趣味なギャグと過剰なグロに目が行きがちだが、非常に政治的な内容を描いている事もこの映画の特徴の一つ。
確たる証拠や根拠を持たずに軍事介入を行い、自国の”正義”を押し付け、それに異を唱えるものは容赦なく殲滅し、都合の悪い事実は揉み消し、弱者は容赦なく切り捨てる。アメリカという国家がこれまでに歩んできた、そしてこれからも歩み続けるであろう血染めの道を臆する事なく揶揄し、それに対して明確なNOを突きつける。一見バカバカしい大作B級映画なのだが、その芯はどこまでも真面目で真っ直ぐ。こういうガンの素直なところに、観客は惹き寄せられてしまうのかもしれない。
ガンの実直さには確かに好感が持てるが、それだけに映画も優等生になりがち。せっかくヴィランで結成されたチームなのに、結局は良い人たちの寄せ集めじゃん、というのは前作から感じていた不満なのだが、その印象は監督が変わった本作でも全く変わらなかった…どころか余計に強くなってしまった。もっと無茶苦茶な奴らが欲望を剥き出しにして無茶苦茶に駆けずり回る、という映画でも良かったような気がするのだが。
グロやブラックコメディの要素は確かにスーパーヒーロー映画としては異端。しかし、良い人たちがチームを組んで悪を挫くために奔走するという点ではその他のヒーロー映画となんら違いはない。むしろその点がしっかりと描かれている為、王道すぎるほど王道なヒーロー映画という印象が鑑賞後に残った。それが悪いという訳ではないが、ガン×悪党×やりたい放題という方程式の解にしては少々肩透かし。ま、問題児に見えてもやっぱり根は真面目な人なんだろうねガンちゃんは。
と、両手を挙げて絶賛というテンションではないものの、一個のエンタメ映画としてはこれ以上ないほど良く出来ている。やっぱりジェームズ・ガンは凄えや!!
「スーパーヒーロー映画疲れ」なんて言葉が囁かれる昨今だが、このレベルの映画ならどんどん観せて欲しい。ヒーロー映画が多すぎることが問題なんじゃなくて、要はヘナチョコな映画が多すぎることが問題なんだよね。
興行的には大コケ。前作を遥かに下回る数字だった。とはいえ、これはコロナ禍、そして動画配信サービス「HBO Max」で劇場公開と同時にリリースされたことも影響しているのだろうから一概に大失敗と断じる訳にはいかない。
事実、この後ガンはDCの映画製作部門「DCスタジオ」のCEOに就任する訳だから、本作が数字以上の評価をされているのは間違いないだろう。
ガン主導で作られるシン・DCユニバース。その第1作『スーパーマン(仮)』は来年公開予定。今から楽しみすぎるぞおいっ!!
…作中でたびたび殺されていた鳥。冒頭でいきなりマイケル・ルーカーに訳なく殺され、独裁者のオッさんはオウムの鳥小屋に火を放った。
鳥、Twitterのロゴ、ガンの解雇…? あっ、そういう事ですか…。
※本作の日本語吹き替えは素晴らしい出来!✨
主人公は『ガーディアンズ』と同じく山寺宏一が務め、ライバルであるピースメーカーには名優・大塚明夫をキャスティング。ベテラン2人を悠木碧や宮野真守といった人気声優が支え、さらにキング・シャークに大御所・玄田哲章を配するという飛び道具が用意されている。名実共に文句なしの人材が揃ったと言ってよいだろう。
やっぱりタレントが1人もいない吹き替えというのは良いものですな!『シャザム!』(2019)の吹き替え作った奴はこの映画を1000回観ろっ!!