「冒頭から最後までふざけまくった全編血塗れの怪獣版『イン・ザ・ハイツ』」ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
冒頭から最後までふざけまくった全編血塗れの怪獣版『イン・ザ・ハイツ』
アマンダ・ウォラー率いる政府組織はベルレーブ刑務所に収容されている凶悪な受刑者達から選りすぐりの悪党達を減刑を条件にしてタスクフォースXを結成、彼らは南米の小国コルト・マルテーゼに送られ、ナチスの残党が同国内に建設したヨトゥンハイム研究所を破壊しそこで進められている“スターフィッシュ計画”を殲滅することを命じられるが、上陸早々潜伏していた軍隊の総攻撃を受ける。彼らは自分達の持つ特殊能力で立ち向かうが・・・。
というのは冒頭5分くらいの話。デイヴィッド・エアー監督の『スーサイド・スクワッド』から一部のキャラはカブっているもののお話として繋がっているわけではないので、続編でもリブートでもない微妙な位置にある作品。錚々たるキャラが結集したエアー版がイマイチ弾けなかった理由については先日監督自身が吐露していましたが、ジェームズ・ガンが好きなように弄った本作は冒頭のジョニー・キャッシュをイントロに俺節を発揮。エアー版を観てるから細かいことはいいよねとばかりにテキトーなツカミの後はいきなりどエゲツない大殺戮。人間が一瞬で肉塊になる様を一切忖度なしに見せるわ、壮絶な殺し合いに拍子抜けするような悪趣味なオチをつけるわ、もうやりたい放題。ケレン味たっぷりに登場したキャラクターがあっという間に死んだり、逆になんでここにいるの?みたいなモブキャラが延々活躍したりとデタラメにも程があるので全然飽きません。ギャグとギャグの間に大量の死体を挟み込んでいく凶暴な映像を彩るのは個性の切り立ったサウンドトラック。クラシックなロックからコンテンポラリーなサンバまで煌びやかな楽曲チョイスにちょいちょい耳が持っていかれます。個人的にやられたと思ったのはブラジルのアーティストCéuの“Samba na Sola”。15年くらい前に愛聴していたアルバムからのチョイスに思わず仰け反りました。あ、そういえばブラジルからはアリーシ・ブラガが反政府ゲリラの闘士ソリアとして参加しています。
とにかく個性的な悪党ばかりが大活躍したりしなかったりする作品ですが、個人的にハマったのはポルカドットマン。凶悪な母親のせいで特殊能力を持ってしまいそれがゆえに幼少期からイジメを受けてきた男。ヒーローとは程遠い彼が誰よりも強いというのが強力なフックになっていて、随所で画面に登場する彼の抱えるトラウマがとんでもなく気持ち悪いので呆れ果てます。そしてクライマックスは東映でも東宝でも松竹でもなく大映テイストというのがいかにも。終始ヌメヌメと気持ち悪い展開に痺れます。
要するに冒頭から最後までふざけまくった全編血塗れの怪獣版『イン・ザ・ハイツ』、ラテンテイストの殺し合いは打ち水のように爽快です。