劇場公開日 2021年6月18日

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「もっと観る側にトドメをさすぐらいのインパクトがあっても良かったかなと思います。」モータルコンバット 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5もっと観る側にトドメをさすぐらいのインパクトがあっても良かったかなと思います。

2021年7月2日
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鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

なんとなく気になっていた作品ではありますが、この手のジャンルの作品は期待しすぎると結構な確率で肩透かしを喰らうので、あんまり期待せずに鑑賞しましたw

で、感想はと言うと、うん。期待通りのB級感w
ここまで安定のB級テイストの作品も珍しいのではないかと思うぐらいですが、大味でも意外と面白かったw

最初に思ったのは「何故、今モータルコンバットを映画化しようと思ったのか?」と言う点。

今から30年程前に発表された格闘ゲームでなかなか大味な味付けは正直日本でブームになったとは言えず、また映画化も以前にされているがやっぱりヒットには至ってないと言う印象。
ただ、日本での評価は高くなくてもアメリカにおいては人気が高く、現在もシリーズが着々と制作され、eスポーツの競技種目に選ばれたりしている。

「ストリートファイター」や「バーチャファイター」「鉄拳」と言った国産格闘ゲームの繊細かつ練り込まれた世界観や操作方法に慣れていると「モータルコンバット」は日本人には大味過ぎて合い難いけど、独特の世界観や残酷描写は癖になる感じは分かるんですよね。
なので一部でのカルト人気は知れば知るほど頷けます。

ただ、やっぱり何故今になって?と言う点が気になったんですが、開発会社の「ミッドウェイゲームズ」が倒産して、その権利を「ワーナーブラザーズ」のグループ会社が買い取って、その流れから映像化に至ったとの事。
映画化のネタとなる物を探しまくっているハリウッドが日本のマンガ、アニメ、ゲームと言ったサブカルの作品権利を早い段階で買い占めているのは割りと有名な話ですが、アメリカ発の作品を映像化すると言うのも至極当たり前の流れで、ましてや自社が権利関係を握っているなら尚の事なんですが、ただそれが世界的にウケるかどうかは別の話。
ましてや日本での評価は正直おしなべて低いと言うのは分かっていると思うんですが、アメリカでの評価は高いだけに踏み切った感じはあります。
でも、世界公開に置いて、日本が重要なマーケットの一角を占めているのは理解しているからこそだし、作品のオリエンタル要素を醸し出す上で真田広之さんや浅野忠信さん、篠原ゆき子さんの起用があると思うんですよね。

キャスティングでもかなり重要な役柄を演じている真田広之さんや浅野忠信さんの活躍はやっぱり嬉しい。
また、真田広之さんのキレッキレのアクションは凄いとしか言い様がないくらい。
ただ、それでもツッコミどころは多々あるのが、ある意味モータルコンバットらしいなぁw

で、何がツッコミどころかと言うとこんな感じ。
・主人公があんまり活躍が薄いし勝ってない!
ルイス・タン演じるコール・ヤングは胸にドラゴンのアザを持ち、ハサシ・ハンゾウの子孫。主人公であることは間違いないんですが、活躍が薄い。
と言うよりも、対戦となった際に言う程勝ってなくて、殆どタナボタ状態w
またMMAで家族を養っているとの事ですが、主戦場の総合格闘技の団体やリングもどう観てもマイナーな地下格闘技。そこに連戦連勝なら良いけど負けが込んで引退寸前ってどうなんですかねw
少なくとも「UFC」や「ベラトール」とまで行かなくても、もう少しメジャー感が無いと総合格闘技の選手と言われても「?」が付いてしまうんですよね。
なので全然強さが見えないし、主人公っぽくない。覚醒してのスーツっぽいのもなんか微妙w
他のアクの強いキャラの中では埋没してザコキャラ感が漂う主人公ってどうなんでしょうかw

・格闘トーナメントの前哨戦やんw
太古より繰り広げられてきた格闘トーナメント「モータルコンバット」との事で、どんなトーナメントか思いきや、前日譚と言うか、それ以前のお話w
もう、続編ありきの作り方ですが、正直続編が作られるまで制作陣のテンションが持つのか? 次回作の製作費稼げるのか?と思ってしまうw
個性的なキャラクターのお披露目は良いにしても、細かく言えば「モータルコンバット」になってない。これってどうなんでしょうかね。

・作品最大の見せ場が少な〜い!
「モータルコンバット」と言えば、既にグロッキー状態の相手を惨殺するトドメ専用の演出「フェイタリティ」が最大の見せ場かと思うんですよね。
一応、様々なトドメのフェイタリティ的な演出もあるんですが、正直トドメの一撃と言うよりかは逆転の必殺技になってたりしている。
モータルコンバットのウリは各キャラクターがトドメの一撃を喰らわす情け容赦の無さ。
だからこそ「残虐格闘ゲーム」と称される訳なのに、そこがまだ足りない。
一番の足りない点は「サブ・ゼロ」のフェイタリティ「Spine Rip」。
「脊髄ごと首を引き抜く」というショッキングな内容はあまりのインパクトがあり過ぎて、そのままモータルコンバットのイメージになってしまったくらい。
賛否は置いといても、これが無いモータルコンバットって「クリープの無いコーヒー」みたいな物かとw
「脊髄ごと首を引き抜く」と言うのはあまりにも描写がキツイんですが、よく考えたら「プレデター」の劇中でもプレデターがやってたし、「真・仮面ライダー:序章」や「トランスフォーマー:リベンジ」でもあったので割とポピュラーなのかとw
やっぱりアレが無いのは物足りないです。

制作に「ソウ」のジェームズ・ワンが入っているのでちょっと期待してたんですが、それでも足りない所が多数だし、監督のサイモン・マッコイドは今作が監督デビュー作との事を考えると割とよく出来てるとも思えるんですが、作品の世界観や設定がもう出来上がってたりしているので、観る側が求めるのはより爽快な残虐性と珍妙な世界観の構成かと思うんですが、如何でしょうか?

大味でアメリカらしい格闘作品なので細かい演出部分は正直そんなにいらない。
そこが練り込まれ過ぎると作品の本質や味が見失われる感じもするんですが、それならもっとコンパクトかつスカッと爽やかなゲチョゲチョのグログロでの残虐性を欲しかったなぁw

観る側が何処を求めているかによりますが、個人的にこんなもんかなのB級作品。
キャラクターに癖と味のあるのが多いだけにちょっと惜しい感じがしますが、個人的な一意見と捉えて頂ければ幸いです。

松王○