「決意と絆」モロッコ、彼女たちの朝 MARさんの映画レビュー(感想・評価)
決意と絆
過去に旦那を亡くし、心を閉ざしながら生きるアブラ。そんな彼女のもとに、妊婦だが夫のいないサミアが導かれ、お互いに抱える問題に向き合っていく物語。
内なる優しさはひしひしと感じるものの、それを表現せず、サミアを心から受け入れている様子は無いアブラ。
そんな彼女に戸惑いつつ、妊婦であっても何か役にたとうと動き出すサミア。
そんな2人が少しずつ、しかし確実に心を通わせていく様が美しい。
モロッコでの独り身の女性の生きづらさや産まれてくる子どものこれからの話等、色々と考えさせられる。
それでも、本作でワタクシが深く惚れ込んだ要素は、やっぱりアブラ!
表情1つで強さと寂しさの相反する人格を表現する様は見事!!かと思えば、スリマニの思いに戸惑ったりする様はとても可愛らしい。
イメージに反して比較的あっさりとサミアを家に入れたのも、哀しい経験や独りの女性の生き辛さを知ってたからなのかな。
後半はサミアの物語。自身の状況から、産まれてくる子どもをどうするか・・・。辛い現実に直面しつつも、彼女が下した決断は・・・!?
サミアの物語も良かったけど、個人的にはアブラ1本に焦点を当てたストーリーも見てみたかったかな。妊婦を助けることで心を取り戻した女性が、新たな幸せを見つけるとか・・・ベタですが。
あと、最初は絶対にヤバいやつだと思ったスリマニが、見れば見るほど愛らしい(笑)
序盤のサミアには、立場わかってるの!?・・・とツッコミを入れてしまったが、登場人物皆の素晴らしい演技に魅了された、思いがけない名作だった。
BGMも殆どない静かな中、表情で客席の感受性を揺さぶる業の数々に脱帽です。
ただ、ひとつだけ分からなかったのは、家の前で泥棒だどうだとガチ喧嘩してるのを皆で仲良く並んで笑って見てたが・・・あれ笑うとこなの(笑)??