「E・エステベスらしい、地味で実直な一本」パブリック 図書館の奇跡 regencyさんの映画レビュー(感想・評価)
E・エステベスらしい、地味で実直な一本
個人的に、エミリオ・エステベスには苦労人というイメージが強い。
デビューしてすぐにブラット・パックの中心人物となり、監督業にもいち早く進出するなど華々しく活動していたのに、次第に主演映画も寡作になり、監督作もインディペンデント資本が中心になったせいか、メジャーの第一線のレールからどんどん外れていってしまった。
『ボビー』も製作資金が集まらないためにほとんど身銭を切ったのに、興行的にも批評的にも振るわなかったと聞いて、つくづく運のない人だなぁと思ったもの。
本作も構想から完成までに11年を費やしたと宣伝されているが、裏を返せば、それだけ製作体制の確立(資金の調達など)に苦慮したという意味でもある。
閑話休題。
観た感想は、やっぱりエステベスらしい、地味だけど実直な映画だなということ。出演者の大半がノーギャラだったという『ボビー』同様、本作も、彼がいかに俳優仲間からの信頼が厚いことが証明されている。
アメリカの格差社会とフェイクニュースを、知識と教養の宝庫である図書館を通じて問題提起。弟チャーリー・シーンがやたらとゴシップ誌と縁が深いのに対し、兄エステベスはアメリカ文学の引用をサラリとやってのける。しかも、図書館と縁深い「怒りの葡萄」をチョイスしているあたりも生真面目さを感じる。
「図書館は民主主義の象徴」という言葉にハッとさせられた。
とにかく地味だし、奇をてらった作りではないが(否、ラストはいろいろな意味で「奇をてらっている」かも…)、だからこそじっくり腰を据えて観てみては。
ただ、サブタイトルの『図書館の奇跡』は、ちょっと違うと思う。
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