「ホラーだけじゃない」さんかく窓の外側は夜 さぁやりんさんの映画レビュー(感想・評価)
ホラーだけじゃない
「さんかく窓の外側は夜」新感覚ミステリーという予告、出演者に惹かれて観に行きました。邦画を観るのは久しぶりだったのですが、初めて2回以上観たいと思う作品でした。予告は1回見た切り、原作も読まずに挑んだのですが、OPから引き込まれ本当に存在しているかもしれないリアルな世界に魅了されました。滴る血や跳ねる泥、カレイドスコープ、誰かと誰かの手が繋がる描写など1回目は流し見でただ美しいなという感覚でしたが、2回目は1カット1カットじっくり観れました。登場人物の視点や記憶が現れる素敵なシーンだなと思いました。また、音で映画を楽しむのもこの作品の魅力の1つなのではないかなと感じました。生々しいシーンは耳を塞ぎたくなるような音、映像は悲惨なのに美しい音、サントラにつけられたタイトル1つ1つをシーンに当てはめるとパズルがはまったかの様な気持ち良さがありました。アレが出てくるときの曲は夜に聴くと眠れなくなりそうですが臨場感に溢れていて面白いです。個人的には七輪で焼肉をするシーンでの煙の色青とピンクが混ざり合う絵が美しくてとても好きです。
ストーリーでは冷川の「まともな教育を受けてこなかった」に当てはまる様な言動や態度が劇中に現れていたり、本作の中では唯一日常的だと感じられる母息子のたわいも無い会話と食卓のシーンが少しホッと感じられたり、エリカの心の声の不気味さ、三角が流す涙、全てのシーンに釘付けになりました。除霊のシーンは3回ありましたが2人の表情が全て違った様に感じられました。言霊が呪いとなって渦巻く現代のSNSの誹謗中傷について考えさせられました。最初自殺した記者のシーンでの音はすごく切なかったです。「言葉」は人の命を簡単に奪える刃物になるし、使い方を間違えてはいけないものだということを改めて認識しました。貯金箱に張り巡らされた糸に作られた言葉や不気味な音に不快感を感じながらも、基盤である冷川の母親の血によって穢れてしまったカレイドスコープが何故か美しくて見えました。映画全体としては、異なる特殊能力を持つ3人のバラバラの思いが段々と繋がることで1つの方向に向かう様が実写化らしい結末でした。多くの人を呪い自分も呪われてしまうエリカの背負う運命が重いことがラストシーンにドン!っと出るのもミステリーホラーらしくゾワッとしました。3回目はエリカの落書きと「衣装」に注目したいと思います。キャスト、スタッフの皆様のこの作品に対する愛情をたくさん感じました。