「泣いたシロクマ」泣く子はいねぇが kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
泣いたシロクマ
2018年にユネスコ無形文化遺産の「来訪神:仮面・仮装の神々」として「男鹿のナマハゲ」が登録された。日本人のほとんどが知っているナマハゲ。今では衰退しているのでぜひとも保存してもらいたい伝統行事の一つ。生の禿だと思っていたが、実は“神”なのだ。子供を怖がらせることによって、親が子を守るという重要な要素もある。同じ年に石川県の「能登のアマメハギ」も登録されたようだが、石川県人の俺も知らなかった・・・
「神なんだから何してもいいじゃん」などと言う人もいたが、ストリーキングはやりすぎ!まぁ、テレビ中継されたために秋田に居られなくなった太賀演ずるタスク。初めての子ども凪が生まれたばかりだというのに、離婚の決定打となってしまったどうしようもないダメ男タスク。地元を離れ上京するも、趣味のサッカーを続けながら人生の目標さえ見失っていた。で、仕事は何をしてたんだよ!タスクという名前すら冗談みたいに思えてしまう・・・
そんな時、サッカー仲間(マネージャー?)の女子(古川琴音)といい仲になりそうだったのに童貞扱いされる始末。その後に「シロクマ効果」について教えられるが、結局嫌われてしまったようだ。このシロクマ効果。「シロクマのことだけは絶対に考えないでください」と言われるのに余計に考えてしまう皮肉過程理論のこと。おかげで別れた妻や娘のことを思い出してしまったのだろうか。再び故郷に戻ることになってしまうタスク。
人間関係の面白さもさることながら、徐々に失った家族のことを一途に考えるようになるというストーリー。琴音の親のことだとか、全く興味がなかったのに死亡を伝えられてますます未練がましくなる様子。「いつまでもあると思うな、親と金」といった言葉にもテーマが隠されていたし、未熟な精神のままで大人になることの厳しさなども訴えてくる。
さらにコミカルなシーンも多く、笑っちゃ不謹慎だと思われるところにも噴き出してしまいそうになりました。個人的に一番ウケたのはキャバクラ店長。「ちょっとお願いがあるんですが」を何度も繰り返すシーンは夢に出てきそうなくらいインパクト大。風俗や卑猥な建造物といったものまで、世の中を風刺している感もある。親友のサザエ密漁だとか、先の見えない不況も皮肉っていたのかもしれません。
感情の高ぶりMAXとなる終盤では、再婚も決まった琴音を諦め、実娘である凪への思いが爆発する。面の下の涙はこういう意味だったのかと、ダメ男なのに感情移入してしまい、子を守る親というナマハゲの本質を教えてもらった気がした。ほぼスッピンの吉岡里帆も良かったし、生の秋田弁・柳葉敏郎も観ることができたし、寒い中で“ばばヘラアイス”を売る余貴美子も最高でした。やっぱり純な性格のため、愛すべきダメ男。これは太賀の代表作になること間違いなし!佐藤監督も将来が楽しみ。
「泣いたシロクマ」はラストの泣いた赤鬼(鬼じゃなくてナマハゲだけど)に掛けてます?ナマハゲとアマミハギって名前が似ていますね。ナマハゲが一番と言い切ってしまい失礼しました。
キャバクラの店長の ちょっとお願いがあるんだけど? しゃべり方が気持ち悪くて、何回繰り返すんじゃ! ぇっ、お願いはビデオ録画かよ! 怖さとのギャップ。 最後のお面はおやじの残した資料での自作でしたね。能登の御陣所太鼓のお面も怖いですね。昔、七尾でサワラ釣りしました。夜釣りで、トロ箱3箱ぐらい釣れました。大漁でした。