「彼女の圧倒的なパフォーマンスに心震える」ワイルド・ローズ ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
彼女の圧倒的なパフォーマンスに心震える
英国映画には伝統技のごとく、一つの才能が逆境を超えて羽ばたいていく名作が存在する。その代表作『リトル・ダンサー』『ブラス!』『フル・モンティ』はいずれもサッチャリズムの時代を背景にしたものだったが、あれから数十年を経て、現代に生まれた『ワイルド・ローズ』もどこか似た香りを持つのが興味深い。
舞台はグラスゴー。この地で出所したばかりのシングルマザーが、子供達を養いつつ、カントリー歌手としてナッシュビルに立つ日を夢見る。もうこの組み合わせだけで十分パンチが効いているが、そこに半ば夢断たれた現実や社会状況を描き、その一方に、逆境を吹き飛ばすかのような彼女のパワフルな歌声がある。すべての核たるジェシー・バックリーのパフォーマンスは一目触れただけで惚れ惚れするほど。さらに人間的な成長と共に、彼女の生き様が変化し、凛々しい表情を宿していく様も心揺さぶる。誰しもに笑顔と底知れぬ元気をもたらす秀作だ。
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