劇場公開日 2021年5月7日

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「4ストライク」ジェントルメン とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

4.04ストライク

2021年5月7日
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ザッツ・エンターテインメント!!!! 王と英国街中追いかけっこの帰還

今世紀における英国産ギャング映画のキング、待望の帰還!ジャングルの王は、王"らしい"振る舞いなんかで、疑いがあっては駄目だ。疑いは混乱を生み破滅を招く。『ロック、ストック〜』『スナッチ』『ロックンローラ』そして、4度目の英国産ギャング映画復権の狼煙で唯一無二なストリート感覚と裏世界観。
今までの作品だったらコーチ(コリン・ファレル)か、その教え子少年ジャージ軍団ストリートギャングたちが主人公だったろう。製作陣が同じ『レイヤーケーキ』なんかも含めて言えることで、具体的には『スナッチ』のミッキー・オニール(ブラピ)たちパイキー・ジプシーオチ。あの壮絶なリベンジのように本作もまた。
「待ってました!」とホッとしたイギリスの街の追いかけっこ。いい大人が曇り空の下、茶色いレンガの街並みを全力疾走するカット・シーンを見て「あ〜これを待ってたんだな〜見たかったやつだ〜帰ってきた!」という懐かしい気持ちになったし、今でもワクワクした。車でもなんでも何かしらのチェイスシーン、しかもそんなにシュッとしきていない泥臭さみたいなのが残っているのがいい味。しっかりとクセがあるダサカッコよさ。もちろんクロスカッティングやそれらしい音楽などでサスペンスドキドキハラハラも煽る。10分後に来い。
スポーツファンにはオリンピック、サッカーファンにはワールドカップ、映画ファンにはガイ・リッチーのギャング映画がある!反則ギリギリ最高すぎるタイトル × キャストからずっと期待値マックスだった本作を遂に見た!間違いなくガイ・リッチー節でしかない(ポスト・タランティーノな?)景気のいいセリフのやり取り、というより応酬・掛け合いがテンポよく展開されはするものも、正直、途中までそこまで気持ちよさを感じられず、むしろ作り手の一歩間違えたらサブいドヤ顔が見え透いてきそうなくらいだったけど、終盤は流石の一言に尽きる映画ファン冥利。種明かしそれ自体も無理やり付け焼き刃であって、見る人皆が唸るような理詰め的賢さではないけど、映画的カタルシスは十分。1時間後に来い。
本作を機に新規ファンを獲得しまくり再発見されるような超会心作というわけではなかった(し、本編後半くらいまでは個人的に3.5くらいの満足度だった)けど、終わってみればこれこれ!やっぱり好きだな〜とファンは満足するだろうし、何よりニヤニヤしちゃうくらい嬉しい作品で映画的出来事であったことは疑う余地なし(だからこそのこのスコア)。だから、どれだけハリウッド進出して世界的に売れても、原作モノやリメイク(ex.『コードネームU.N.C.L.E.』『キング・アーサー』『アラジン』)を撮るようになっても、これからもやっぱり定期的にこういうオリジナル映画を作っていってほしいと一映画ファンとして切に願うばかり。創造性は奪えない、枯渇・衰えないでほしい。

変わるものと変わらないもの。歳を重ねて益々ノリノリなマシュー・マコノヒー(主役!座長)、コリン・ファレル(withポジション!!)、ヒュー・グラント(&ポジション!!!)は本作でも裏切らない存在感。皆、キャリアが今日に至るまでに大きな転機を迎えたことがあり、今では映画ファン・批評家たちなどから厚い支持を得ていそうな手練たち。とりわけマコノヒー&ファレルは共に若い頃は大作御用達"ザ・"ハリウッドなイケメンスター的ポジション、メインストリームなスター街道だったのに、そこからまるで自らの意志・強い気持ちと実現・行動力で険しい道を歩んできた。
ミッキーとジプシー、揺るがない英国ブランド。最高にパンチの効いて、どっからどう見ても英国人でしかないイカしたビジュアルのコリン・ファレル(『ピーキー・ブラインダーズ』にでも入るのか?という髪型)は、本編見るまではもっと敵対する側かと思っていてマコノヒー vs ファレルに胸高まっていたけど、実際見てみるとこれはこれで良かった。というか心強かった。にしても相手の中国人(&ロシア人)に対して、味方が色んな意味で最強すぎないか?チャーリー・ハナムの役どころが結局一番格好いいナンバー2ポジション、信頼できるクールさ。同監督『キング・アーサー』主役も報われる。そりゃこの中ではまだまだ若いヘンリー・ゴールディングじゃこの百戦錬磨なメンツ(の経験値・頭脳そして迫力)には勝てないよ。
若者が年寄りに取って代わる時代の流れ、盛者必衰の理?そんなのまだまだ当分先。マシュー・マコノヒーは大麻を消費する方(先週公開『ビーチ・バム』)から供給する方、それも大元へ。マコノヒーだけでなく監督リッチーも歳を重ねて、ストリートギャングも大元へ。昔みたいにキッレキレという抜群の切れ味から円熟味が増して少しいい意味で枯れてきた(英国紳士らしい茶色がよく似合う)趣に。紳士という本作のテーマもあるのだろうけど、にしても渋すぎるオープニングを見ていて、コッテコテにバッキバキだった『スナッチ』のオープニングと比較して、昔は尖っていた側の筆頭であったろう彼もこういう風にメインストリームな英国ブランド(ex. 007ボンドシリーズ)を背負うようになったのかと思うと勝手に感慨深い。

気持ちよかった!本作終盤ミラマックスのオフィスでヒュー・グラントが続編の話をしているときに同監督『コードネームU.N.C.L.E.』のポスターが裏に貼られている、いつまでも続編の話の進まない作品。しかも、本国とは違って、日本公開のこのタイミングでは奇しくもU.N.C.L.E.主演の片方ソ連スパイ役アーミー・ハマーが干されていそうなのでなおのこと。それを予知して本作でもロシアンマフィアだった?
『ロック、ストック〜』ではストーン・ローゼズのFools Goldフールズゴールドが最後に流れるなど英国ロックの名曲を惜しげもなく使ってくれる根っからの"英国人"スピリット、揺るがないアイデンティティーを持ったガイ・リッチーは、本作ではザ・ジャムのThat's Entertainmentザッツ・エンターテインメントで。まさしく、これぞ一流のエンターテインメント。予告で流れていたクリームのSunshine Of Your Loveサンシャイン・ラブはやっぱり、例えば『マネーショート』におけるレッド・ツェッペリンのWhen The Levee Breaksレヴィー・ブレイクのように、ハリウッド大作あるある予告用だった。

最高すぎるタイトルとキャストからずっと見たかった『ジェントルメン』はやっぱりガイ・リッチー4度目の真骨頂だった。ヒュー・グラントがコッポラ『カンバーセーション盗聴』をディスるのは『トレインスポッティング』のシック・ボーイを、一室でチャーリー・ハナムが演説垂れるのは『パルプ・フィクション』のジュールス名演説を勝手に思い出した。あと衣装くれ

とぽとぽ