「実際はどうであったにせよ、イーサン・ホークとノオミ・ラパスとの説得力ある好演で大人の鑑賞に耐えうる作品になっている。」ストックホルム・ケース もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
実際はどうであったにせよ、イーサン・ホークとノオミ・ラパスとの説得力ある好演で大人の鑑賞に耐えうる作品になっている。
①「ストックホルム症候群」といわれる人質側に生じる犯人との心理的な連帯感(病気ではありません)と言えば先ず1974年のアル・パチーノ主演の傑作『狼たちの午後』を思い出します。②この映画の場合、イーサン・ホークが人の善い(?)犯人という設定だから人質側に「ストックホルム症候群」が生じたわけで、犯人の人格や犯罪の状況による為、全ての人質事件で起こるものだとは解釈しない方が良い。③ただ、人質の心理としては他の何よりも「死にたくない。助かりたい。」という気持ちが先立つ筈なので、犯人への怒りや恨みは生じるだろうが、その場で社会的正義感や悪を憎む気持ちなど起きはしない。一方、警察や政府側は面子の問題もあるだろうし社会的正義を行使する方を優先するだろう。そうなると勢い人質の心理としては「警察等が犯人の言う通りにすれば自分たちは助かるのに」という警察側に対する苛立ちや不信感が芽生えるのも、これまた自然な感情と言える。また、生き延びるためには犯人の言う通りにしなければならないと思うのも当然。そこに犯人が同情・共感・好意を寄せられ得る人間であれば、犯人への心理的な連帯感が生じるのは決してあり得ない話ではないだろう。④この映画の場合、イーサン・ホークがどうしても憎めない犯人像を、ノオミ・パラスがそういう犯人に惹かれていく女心を説得力のある演技で見せていくので飽きない。⑤演出は切れや冴えは無いが無難にまとめている感じ。⑥ボブ・ディランの曲を上手く使っていると思う。⑦あと、ビアンカの夫は良い人だけどビアンカの言う通りにしなかったことでビアンカの心にすきま風を起こしラースに心惹かれる結果を作ってしまう。下作りした魚のバターソテーと冷凍のミートローフのが、そのまま男と女の違いとなってしまう。仕方のないこととはいえ、洋の東西を問わず男と女の問題は難しいですなぁ。