劇場公開日 2020年10月9日

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「ひとりの人として生きるために必要なこと」82年生まれ、キム・ジヨン 映画野郎officialさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ひとりの人として生きるために必要なこと

2020年10月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

多様化における家族という病。

女性が共感する映画と言われるが、男性こそ観るべき作品。ダイバーシティの時代に女と男で語るのもナンセンスと言われてしまうかもしれないが、それが現実だし男女問題は現代でも根深く残っている。

82年はどんぴしゃの世代で、なにもかもが刺さりまくり。時代による家庭環境や考え方の変化は韓国も一緒なんだなって感じた。そして子育て世代の男としては耳が…目が痛い話。家事はもちろん育児は男でもできるが、母でしかいけないこともある。そこでいかに妻を支えられるかが大事。分かってはいるもののなかなかできない男性が多いリアルが描かれている。

子育ては偉大で価値ある仕事だ。男性の育児休暇しかり、それを守りとして捉えることが間違いで、子孫を反映していくという人類にとって大切な攻めの営みなはずである。

家族・親族関係、仕事と社会進出、結婚・出産に育児、性被害、偏見や固定概念による誹謗中傷…あらゆるところに蔓延る「女性の生きづらさ」という問題。それらを説明くさく、説教くさくなくストーリーに染み込ませ自然と考えさせられる構成が素晴らしい。(原作を読んだ人にはものたりないようだが…)

多様性とは区別を細分化し差別をなくすということより、お互いのことを理解し合うことが重要。ときれいごととして言うは易しで、当事者にならないとなかなか分からないものである。そういう意味で意義ある映画だし、それを伝えられるのがエンターテインメントの力である。

子どもは本来望んだ幸せなのに、なぜこれほどまでに苦しめてしまうのか。人類の本能であろうが、生涯独身を選ぶ人の気持ちも分かる。人生において本当にやりたいことはなにかを改めて考えさせられる。

仕事をつらいこととして嘆く人もいるが、働きたい人もいて、それは生きて活きていくための承認欲求や自己実現のために必要なエネルギーなのであろう。

生きづらい社会で必死に生きる女性をほぼノーメイク?で演じきったチョン・ユミの悲壮感漂う演技は見事だ。

(P.S どうでもいいけど…チョン・ユミとコン・ユが何度も上戸彩と大沢たかおに見えてしまった。笑)

もの語りたがり屋