劇場公開日 2020年10月9日

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「反省してしまうし、考えさせられる」82年生まれ、キム・ジヨン さうすぽー。さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5反省してしまうし、考えさせられる

2020年10月14日
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観る前は子持ちの女性に共感出来る映画かなと思っていたのですが、これは女性だけでなく男性も観るべき映画だと確信しました。

そして男性は観た後に反省したくなります、自分も含めて。
ですが、自分は同時にとても感動しました!

韓国のベストセラー小説を「新感染ファイナルエクスプレス」と「トガニ」で共演したチョン・ユミとコン・ユのコンビが夫婦役で再共演して映画化されてる本作。

結婚を経て子育てに追われてるしっかりものの妻ジヨンが、ある時を境におかしくなってしまい、その状況に異変を感じた夫が奮闘する話を描きつつ、妻のジヨンの過去を丁寧に描いていくヒューマンドラマ。

まず先にキャストの事を話したいのですが、実を言うとキム・ジヨン役のチョン・ユミは「トガニ」と「新感染」に出てた事を覚えておらず、この魅力的で綺麗な女優は誰だろう?と思った次第です。
最初少し美人過ぎるかなと思ったのですが、しっかりしてそうで気分が浮き沈みが激しくなってしまうジヨンを見事に熱演していたと思います。
特に、しっかり者な雰囲気がありながらため息を付いてしまう場面は本当にこの人大丈夫かな?と思ったくらいです。
そして、コン・ユはやはり「情けなくて悩める男性」が凄く似合います。
今作で演じた夫の役も、コン・ユにやってもらうためにこの人物が生まれたのかとも感じます。

韓国の社会における女性を社会問題と共に描いている本作ですが、日本も決して他人事では無いと思います。
育休の制度は日本でもありますが、日本も育休したら社内に支障を来すみたいな事を思ってなかなか女性も男性も育休が取れない話も聞きますし。

働いてる頃のキム・ジヨンは劇中そんなに出てこないものの、しっかり仕事をこなすキャリアウーマンだったのがキャストの佇まいや普段の行動でよく解ります。
普段真面目でしっかりしてる方ほど気分の浮き沈みが激しくなる、てことをよく耳にしますが本作のジヨンは正にその典型的な例な気がします。
身の回りの人間関係や息苦しい社会に何とか自分を守ろうと自己防衛を取り続けた結果であるのなら、本作のキム・ジヨンだけでなく女性なら誰でも起こりうることのようで少し胸が苦しくなりますし、そういう所でも決して他人事のように観れないと悟りました。

そういった女性のフェミニズムを描いてる本作ですが、自分も普段女性の考えを尊重したり耳を傾けるつもりではいたのですが、本作を観ると自分もまだまだ女性の事理解できてないと痛感させられました。
本作を観て、自分を含めた誰かがその価値観を変えられたら素敵だなと思います。

本作の良いところは、ハリウッド映画における(特に実写ディズニー)押し付けがましさ満載な女性の描き方では無いところですかね。

女性の価値観を理解出来なかったと書いた後に書いてしまいますが、ハリウッド映画はポリコレを重視した作風が求めてるからか、どうしても「女性は強くあるべき!」みたいな傾向に描き出す事があって、そこに押し付けがましさを感じてたまに苦手です。
しかし、本作でも描いてるように女性だって強いだけじゃなくて弱い部分もあると思いますし、単に「女性は強い!」という風潮を押し付けるとかえって心を折らせてしまったりして逆効果だと思うんです。
だからこそ、本作はキム・ジヨンを「妻」や「母」だけでなく一人の女性として描いた本作を絶賛したいです。

とりあえず、「耳を傾けて相手と目を見て話し合う」というのが本作の結論です。

そんな色々な事を考えさせられる本作ですが、少しだけ不満を上げるとすれば中盤の「盗撮」の下りは個人的に要らなかった気がします。

色々と書いてしまいましたが、映画自体は彼女の取り巻く環境に息苦しくなりつつも希望を感じさせてくれる非常に良い映画でした!

傑作です!

さうすぽー。