「祭儀としての誕生会」君の誕生日 taroさんの映画レビュー(感想・評価)
祭儀としての誕生会
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セウォル号事故によって息子を失った夫婦が、家族崩壊、精神不調、周囲との軋轢、孤立などの危機に直面しながら必死に日常を生きている状況が静かに辿られていく。パンフレットにはイ・チャンドン監督が本作を「素朴に正直に作ってある」と評したと書かれていたが、正にそんな印象を受けた。庶民的でありながら誇張しない作風で、どこか小津安二郎を思わせる。
イ・チャンドン監督の「シークレット・サンシャイン」もまた息子を失った母のその後を丹念に描いているが、「シークレット・サンシャイン」が感傷性を徹底して排除しているのに対し、本作はややウェットである。
クライマックスの誕生会は、故人の死に喪失感を抱える人々が集まり、感情を吐き出して悲しみを共有し、恨(ハン)を解く祭儀(チェサ)のようであった。詩の朗読が大切な人の死という出来事に表現をもたらし、苦痛を人生に組み込む力を発揮している場面も印象深かった。
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