コリーニ事件のレビュー・感想・評価
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驚愕の真実
ドイツの現役弁護士作家のミステリー小説を、社会派サスペンスドラマとして映画化したドイツ映画。
ミステリーとドラマの融合で、だんだん引き込まれ、その展開に驚愕し、涙してしまう。
ベルリンのホテルで、67歳のイタリア人コリーニが、経済界の大物実業家を殺害するシーンで幕が開く。
この事件の国選弁護人を担当することになった、新米弁護士のライネン。
被害者はライネンの少年時代の恩人だった。被告人は動機について一切口を閉ざす。ライネンはその何故?という疑問の真実を知るために諦めない。
調査を続けるうちに、戦後ドイツの不都合な真実の歴史、衝撃の法のトリックでドイツ史上最大の司法スキャンダル、そして真実を暴き、国を激震させた衝撃の真実と向き合うことになる。
驚愕すべき法の落とし穴を見事に暴き鑑賞後は満ち足りた気分になった。
ワルサーP38と聞いてルパンを思い浮かべました。
長編国際ドラマ🇩🇪🇮🇹
戦争時の不条理に起因する物語。
ドイツとイタリアという物珍しさを除けば、内容的にはNetflixでも十分に楽しめそうな。。。
むしろ10話くらいのドラマで、被害者加害者双方の背景を深掘りしてくれた方が深みを感じられたかな〜
と、今回はかなり個人的な感想。
自国の犯した罪を反芻するが如きドイツ映画
2001年にドイツ・ベルリンで起きた殺人事件。動機を探る弁護士は1944年のイタリアにたどり着いた。
戦争というシステムの中で多くの人を殺したドイツ人がいた。多くの加害者・被害者の存在、そして彼らの死ぬまで癒えることのない傷をも想起させる傑作。
必見だ。
コリー二を演じたフランコ・ネロと再会した。
救われたような気がした
展開が非常に面白くて、様々な問題提起もある意欲的な作品である。台詞よりも表情で語らせる説明的でない演出もいいし、それに応える役者陣の演技も優れている。特にファブリツィオ・コリーニを演じたフランコ・ネロの存在感は凄い。新米弁護士が主役でともすれば法律談義の映画になってしまいそうなところを、この人の存在感で人間ドラマの範疇にとどまらせている。
ドイツではナチスを生んでしまったことに対する賛否両論がいまでも続いている。未鑑賞だが最近公開された映画「お名前はアドルフ?」は、生れてくる赤ん坊の名前のことで家族や友人が大論争を始める内容らしい。実際のドイツでも、他のどんな名前でもいいから赤ん坊にアドルフと名付けるのだけはよせと言う人は多いと思う。つまりそれだけナチスに対する反省が続いているということだ。対して日本では、松岡洋右や東条英機の名前さえ知らない人が当方の周囲でも結構いる。主に若者だが、本人の問題というよりも教育の問題だろう。
日本の高等学校までの歴史教育では近代史をほとんど教えない。だから戦争時の大本営発表に国民が沸き立ったことも、マスコミが軍と一緒になって嘘の勝利を報道し続けたことも知らない人が多い。南京大虐殺や従軍慰安婦問題などはまったく教えない。関東軍が中国で何をしたのか、大人になって映画を観るまで知らなかった。
文科省は日本の近代の戦争を教えることに消極的だが、日本の映画界の人々は積極的に戦争の本質を追求する。当方が観ただけでも、鑑賞が新しい順で紹介すると「この世界のさらにいくつもの片隅に」「日本鬼子(リーベンクイズ)」「アルキメデスの大戦」「東京裁判」「沖縄スパイ戦史」などがある。少し前だが「日本のいちばん長い日」「小さいおうち」「少年H」「一枚のハガキ」なども観た。
それぞれに視点も見方も異なるが、戦争を美化することなく正面から受け止める姿勢は共通している。映画人の戦争にかかわる世界観は、文科省のそれとは一線を画しているのだ。邦画の戦争映画の多くは戦争がどのようにして起き、人々がどのように苦しんだのかを目の当たりにさせてくれる。歴史の教科書を開く前に、中学生、高校生には戦争映画を観てもらいたい。
本作品の主人公カスパー・ライネン弁護士を取り巻く人間関係は、ストーリーの展開とともに少しずつ明らかになる。小声の台詞で明らかにされる過去もあり、注意深く鑑賞しなければならない。
物語の主眼はライネン弁護士が被告の過去を探り、その人生の真実に迫るところにある。被告が殺したことは明らかだが、動機がわからない。真相に迫るにつれて、もはや罪の軽重を争うことよりも、過去の真実を追及することがライネン弁護士の仕事となる。罪の軽重ではなく被告の人間としての尊厳を守るためだ。
ドイツに限らず、法定では当事者の素行が容赦なく暴露され、人格が攻撃される。それは被告や原告の利益のためである。しかし本当に大事なのは、当事者の尊厳が守られることである。名誉や虚栄ではなく人間としての尊厳。そこがこれまでの法廷映画とはまったく異なる、本作品独自の世界観である。
三つ子の魂百までというが、人は幼い頃の心の傷を一生背負って生きていく。その忍耐と意志には敬意を表したい。そして誰もが心の傷を負っているのだとしたら、人は他人の人生に敬意を持たねばならない。金持ちでもホームレスでも、その人生に貴賤はない。等しく他人の人生を敬すること、そこに人間の尊厳がある。
法定を通じて無名の人間のささやかな人生にも敬意を表し、人間としての尊厳を重んじる本作品の世界観に、なにかしら救われたような気がした。
1968年、ドイツでいわゆるドレ―アー法が施行され、多くの戦争犯罪者が罪を逃れた。
焦点は、謀殺か故殺か。何のことやら、です。簡単に言えば、戦争当時の行為が命令に従っただけなのか否か、ということ。それによって刑の重さが異なる。つまり、これでうまく逃げた奴がいたということ。
そこを軸に物語が展開されるのであれば、たいていの筋書きは察しが付く。被害者はドイツ財界の大物、犯人は黙秘を貫くイタリア人、その国選弁護人は裁判初舞台のトルコ人。おまけに被害者は、その弁護士を支援してきた恩人であった。人物像の背景は初めから出来上がっていた。
緊張感はあり、ドイツらしい重厚さもあり、物語に”誠実さ”もある。しかし、予想範囲内。
それでも最後、あれで救われた気がした。誰が、は言わないけど。
ドイツでしか作れない映画
なかなか硬派な映画である。裁判物と言えばハリウッドお得意の分野なのだが、ドイツでも、こういった内容で作られるのかと感心した。ただ結末まで若干間延びしてる感は否めないが、それでもラストに至るまでの過程として我慢すれば納得できる内容である。ドイツ人気質らしい?真面目な映画でした。ちなみにエンタメ要素は一切ありません。
ソリッドで重たいけれど、テンポ良く観られた
無抵抗の相手の顔に三発の銃弾を撃ちこんだ上に、その顔を激しく踏み付けるという殺人犯の、国選弁護人をすることになった新人弁護士が、苦戦しながら真実を解き明かそうとする話。おまけに、被害者は、主人公にとって、育ての親とも言える存在だった。
オープニングの映像と重々しい音楽が象徴的な、全編通して "ソリッド" な映画。
容疑者の男の完全黙秘で何の手掛かりもないまま、無力感と焦燥感に支配される前半と、主人公がふと呟いた "不仲な父との話" を聞いた容疑者が呟いた一言をきっかけに、気持ちよい速度で糸が解れていく後半。
観ている我々には終盤にならないと謎は解けないのだが、容疑者の一言を手掛かりにして、主人公が手ごたえを感じ始めることだけは、テンポよく伝わってくる。
主人公は、人手が必要なため、 2才の時に出て行ってしまった父親にやむなく協力を頼むのだが、それに伴う会話の中で進む緩やかな和解も、そっと作品を支えている感じ。
法律まで含めた本作の内容は、原作となった小説のヒットをきっかけに、2012年にドイツ連邦法務省が省内に調査委員会を立ち上げたほど、限りなく重たい。
犯人の気持ちは痛いほど解き明かされるし、被害者の家族の言葉も切実に届く。犯人は、どうすることが正しかったのか、今でもわからない。終盤で容疑者が呟く、「死者は報復を望まない」が、結末を予兆させる言葉だったのか。
そんな、限りなく重たい映画だが、前半後半の語り口の違いが際だっているため、気持ちよく観ていられる。
どんな結末になるのかは、是非劇場で観てください。
観るべき映画だと思うし、ちゃんと楽しめる点はすごいと思う。
ドイツにおける、トルコ系ドイツ人の扱いもよくわかりますよ。
おまけ
「被害者は、181cm.93kg.93歳」ドイツ人、さすがにでかいですね〜
原作既読者を失望させない良作
原作は数年前に読んでいたので映像化作品を見るとがっかりすることが多いのですが、これはよく作り込まれた映画だと思いました。主人公をはじめ登場人物が被告側、原告側、それぞれ役のイメージに合った役者さんで雰囲気が出てました。孤軍奮闘する主人公をピザ屋でスカウトした女性、確執があった父親、仲間の若手弁護士が助けるのも私が好きな流れ。ミステリの映像化はラストの謎解き部分が単調になってしまうのが難点ですが本作は現在の法廷、過去の回想が交互に描かれ緊張感が途切れないで最後まで見られました。失う物も多かった主人公ですが、ピザ屋のちょっとパンクな姉さんが助手になっていたのが救いでした
ドイツでのナチスの感じが分かった。
ドイツ映画ってあんまり観てないが、ナチスの扱いってこんな感じなんだね。
兵隊の横暴な感じと法廷の何とも言えない感が良い。
ただ、ストーリーは一本調子すぎるかな。もうちょっとサイドストーリーが欲しかったかな。
法で罪を量れるか
たった数行の文言が、人を有罪にも無罪にもする…
若き新米弁護士のカスパーが弁護する被告人、コリーニは、かつての恩人を殺害した人物だった。
自分の恩人を殺害した人物を弁護しなければならないジレンマに苦しみつつも、その苦しみのなかで本当の弁護士の顔になっていく。法の厳しさと意義、そしてカスパーの成長の物語。
被告人コリーニが黙秘を貫く中、上記の理由からモチベーションの上がらないカスパー。
それでも、ある人物のアドバイスをきっかけに、仲間たちと真実を見つけ出していき、それに応えるようにコリーニにも変化が…
恩人や愛する人を向こうに回し闘わなくてはならないカスパー。色んな意味で有能な相手弁護士の教授。
その法廷で争う教授こそも、弁護士として吹っ切れるきっかけを与えてくれた人物だということもね。。
コリーニの変化や、ワイルドなピザ屋姉ちゃん、疎遠だった父親、戦争犯罪人の真実、だんだんと笑わなくなってくる法廷内…登場人物や映画のつくりが皆自分好みで非常に楽しめた。
もうちょっと、自分の父親との話を掘り下げても良かったかもだけど。
人を殺してはいけないけど、コリーニがそれをしなければ結局法律も…どうなっていたか。
不勉強な自分も、昔は、罪人の罪を軽くするために奮闘するなんて…と思ったこともあったけど、改めて弁護士という仕事が大切であり、難しいものだと気づかされた。
法のちょっとした表現ひとつで事が大きく変わってしまうことに驚いたこと、また、最後には私情ではなく弁護士としての姿勢を全うしたカスパーの姿に、胸が熱くなった傑作だった。
Der Fall Collini
68年の悪しき法律が明かされた後、コリーニは自害。死者は復讐を望まず。
コリーニの葬儀後、子供時代のコリーニ父子を町で思い浮かべる。
ドイツも戦後の闇がまだまだ続いてる。
骨太。
一般的に、歴史は風化するという。視覚的なイメージで言えば、75年前に75センチあったY軸の高さが、年月とともに右肩下がりのロングテールな放物線を描きゼロに限りなく近づくように。しかしそれは主観の問題だ。本作品の被疑者の場合、真反対である。おそらくその怨念は時の流れと共にじわじわボコボコと発酵し、真っ当な訴えが悪法に阻まれることでマグマのように煮えたぎり、止める肉親を失うと原発事故のように臨界点を超えた。
歴史を風化させないためには、否、意図的に風化させられつつある歴史を再プリントしてアルバムに貼り直すためには、類い稀なモチベーションと正義感を持ち合わせたプロフェッショナルの力が不可欠だ。そういう意味では本作品内の弁護士がドイツ社会においてトルコ移民の血を引くマイノリティーであることは象徴的だ。もちろん、わが国もハイブリッド社会であってほしいと思う。
あまりにも哀しい社会派サスペンス
久々のドイツ映画です。
第二次世界大戦、ナチス、司法などなどがテーマとなって歴史を学べる映画でした。
サスペンスで、裁判のシーンなど、殺伐としているシーンも多い中、裁判所の建築物や主人公の部屋のインテリアのセンス、イタリアの美しい景色、回想風景などは目を見張るほど美しく、こういった点で流石だなと。
コリーニの殺害動機を知った時は涙が止まらなかった。なんて壮絶な人生だったんだと。純粋に楽しめた作品、個人的にはパラサイトを余裕で抜いた2020年上半期ベスト1の作品です。
ドイツ映画ってかっこいいなぁ〜と思わせてくれた良作です。
味わい深い
艶を感じる洗練された画面の美しさと、大真面目で影のある新米弁護士カスパー、解けていく謎に裏切らない面白さを感じた。
また観たくなる、裏切りのサーカス以来の作品だ。
印象的な思い出の回想シーンは美しく脳裏に焼き付き、終盤にハッとさせられる。
そんな偶然ある?!ちょっとした不自然さを感じるもどうでも良くなる。
償いだったかもしれない寛大だった優しさに、こちらも少し涙してしまうが駄目なものは駄目。
潔いカスパーの姿勢は正しい。
映画の中の正義に何かが奮い立つ。
濃厚ミステリー。
ドイツの有名な大富豪が頭に3発銃を打ち込まれ、さらに頭を踏みつけられて死亡。犯人はすぐに逮捕されたけどなぜ殺したのかを巡るミステリー。
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その動機は見て欲しいんだけど、ドイツの法律について知識がないとちょい分かりずらいからここに覚書として書いておく。
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ドイツの刑法は謀殺罪と故殺罪にわかれてて、謀殺罪が凶悪犯罪、古刹罪が日本でいう情状酌量がつくような犯罪。日本は情状酌量とかで段階的に罪を軽くできたり重くしたりできるんだけど、ドイツは完全に二つに分かれてるらしい(合ってるかな?)。
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これに関係したある新しく制定された法律がこの事件の鍵になる。これを見ると、憲法改正とかのニュースにちゃんと興味を持たないといかんなと、またケツを叩かれたような気分になったね。
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被害者が事件を担当する弁護士の主人公の祖父代わりのような人で、それとどう折り合いをつけて事件と向き合うかを、もうちょっと詳しく描いて欲しかった。一応貰った車をエンストさせるっていうところがあったけど、ぼーっと見てたからあんまりピンと来なかった(笑).
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もし判決がでたらどうなっていたか。
確信犯であることはコリーニの表情でわかる。
その後の心の動きや最後の憑き物が落ちたような表情。味わい深いフランコネロだった。
ドイツにいらぬ騒ぎを起こすイタリア人とトルコ系ドイツ人。異民族がドイツの安定を乱す、という空気が重い。
もし判決がでたらどうなってたか。たぶん検察の主張に沿うものになっただろう。法的にもドイツ人感情としても。コリーニの思いは最初の数分で達せられたし、トルコ系弁護士は彼の期待以上の働きをしてくれた。コリーニは満足していたと思いたい。
まさかの宙ぶらりんになったドイツ人の思いはどうなのか、原作を当たってみたくなる。
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