「ソリッドで重たいけれど、テンポ良く観られた」コリーニ事件 CBさんの映画レビュー(感想・評価)
ソリッドで重たいけれど、テンポ良く観られた
無抵抗の相手の顔に三発の銃弾を撃ちこんだ上に、その顔を激しく踏み付けるという殺人犯の、国選弁護人をすることになった新人弁護士が、苦戦しながら真実を解き明かそうとする話。おまけに、被害者は、主人公にとって、育ての親とも言える存在だった。
オープニングの映像と重々しい音楽が象徴的な、全編通して "ソリッド" な映画。
容疑者の男の完全黙秘で何の手掛かりもないまま、無力感と焦燥感に支配される前半と、主人公がふと呟いた "不仲な父との話" を聞いた容疑者が呟いた一言をきっかけに、気持ちよい速度で糸が解れていく後半。
観ている我々には終盤にならないと謎は解けないのだが、容疑者の一言を手掛かりにして、主人公が手ごたえを感じ始めることだけは、テンポよく伝わってくる。
主人公は、人手が必要なため、 2才の時に出て行ってしまった父親にやむなく協力を頼むのだが、それに伴う会話の中で進む緩やかな和解も、そっと作品を支えている感じ。
法律まで含めた本作の内容は、原作となった小説のヒットをきっかけに、2012年にドイツ連邦法務省が省内に調査委員会を立ち上げたほど、限りなく重たい。
犯人の気持ちは痛いほど解き明かされるし、被害者の家族の言葉も切実に届く。犯人は、どうすることが正しかったのか、今でもわからない。終盤で容疑者が呟く、「死者は報復を望まない」が、結末を予兆させる言葉だったのか。
そんな、限りなく重たい映画だが、前半後半の語り口の違いが際だっているため、気持ちよく観ていられる。
どんな結末になるのかは、是非劇場で観てください。
観るべき映画だと思うし、ちゃんと楽しめる点はすごいと思う。
ドイツにおける、トルコ系ドイツ人の扱いもよくわかりますよ。
おまけ
「被害者は、181cm.93kg.93歳」ドイツ人、さすがにでかいですね〜