コリーニ事件のレビュー・感想・評価
全107件中、1~20件目を表示
戦争犯罪とその報復を取り上げた骨太作品。
この世に顕現化した地獄。第二次世界大戦。
戦争犯罪を加害者、被害者双方から見つめた作品。
単に加害者=敗戦国 被害者=戦勝国ではなく、戦争という特殊な環境下で、自らの凶暴性、残忍性に飲まれる人間の性に焦点を合わせた作品。
細かい演出から垣間見える、加害者側の人間味が、戦争の恐ろしさを想起させる。
罪とは何か
私は作家シーラッハのファンだ。彼の簡潔で抑制の効いた文章、研ぎ澄まされた筆致に痺れる。
フェルディナント・フォン・シーラッハは、ナチ党青少年最高指導者の孫である。本作は、こうした出自を持ち現役の刑事事件弁護士である著者が、祖父の時代の犯罪に真っ向から取り組んだ法廷小説。原作は200ページ弱と決して長くない小説なのに、濃密で衝撃の読了感。
そして映画は映画でまた素晴らしかった。映画らしいアレンジも効いていて面白かったし、主人公が私の頭の中のビジュアルに近くて大満足!
主人公は黙秘する犯人を通して、法の解釈や量刑よりも、問題はまったく別のことだと思い至る。問うべきなのは、虐げられた人のことなのだ。
全ての元凶ドレーアー博士の起草した法律の過ちを認めさせたところでコリーニの復讐は完結。現実では2012年に「ナチの過去再検討委員会」が設置されている。
同時に、祖父は祖父、自分は自分。
現在まで残る傷跡
ドイツが舞台となる映画は何本か観てきたかいずれも過去の傷がテーマとなっている。
とある殺人を犯した犯人。犯人は理由をなにも語らない。弁護するのは新人。そこから明らかになる真実とは?
戦争で受けた悲しみや怒りは何十年経ってもやはり消えないんやなと。ウクライナとロシアの戦争も終結したとしても当人たちにとっては終わることはない苦しみなんやろうなと感じた。物語的には静かにスタートし終始派手な展開はないんやけど、常に緊迫感があり途中から集中して観ていた。
殺される前のシーンがとても印象的やった。戦争中とはいえ、この人自身も過去の過ちを悔いていたのかなと感じさせるシーンやった。
ナチス物は飽きたので鑑賞したが…
ドイツ映画といえばナチス絡みが多いので、うんざりしているのも事実だが、これはイタリアからの出稼ぎ労働者と、ドイツに多いトルコ系の軋轢を描く映画かと思って入場。
結果、またもやナチスものでした🥺。
事件のキーガジェットとして「ワルサーP38」が出ています。おかけでWikipediaでP-38を調べました。私の世代だとP-38は「ナポレオンソロ」や「ルパン三世」に出てくる現役兵器ですが、21世紀の今日では古物なのですね。そこを押さえないと本作は理解出来ない。勿論トルコ系弁護士にも「世が世ならアンタはケパブ屋台のあんちゃん」などと辛辣な言葉が浴びせられています。それにしても「裏切者イタリア」への対応はドイツらしいというか、厳しいモノがあります。「1対10」ね。それをホントにやるとは。「事件」が起こったイタリアの田舎町は現在も第二次大戦時も風景にさしたる違いはなく、そこにヨーロッパの積層した歴史を感じました。
正義とは
二次大戦ドイツ、戦争の背景と犠牲について考えさせられる映画。
フィクションですが、なかなかノンフィクション的な雰囲気のある映画。
見ごたえありますし、考えさせられます。
二次大戦のドイツ市民の背景を勉強するには非常に良い映画です。
現実に似たようなことがありそうだな~と。
見た後は、重い、重すぎるため、見たことを忘れていました。
戦争と一言で言っても置かれた立場と状況で全く異なりますよね。
第二次大戦に限らず、私たちが教えられている戦争の事実は本当に真実なのか?
改めて考えました(戦争以外でも真実は見つけにくい)。
戦争というものを考えるのには、とてもいいフィクションの映画だと思います。
ですが、現実にありそうで可哀そうで、見た後は気分が重いです。
戦争や内戦の背景も色々ありますよね。
【ロシアとウクライナ】
東ドイツが西ドイツと統一されたとき、アメリカ(西ドイツもかな?)はソ連と約束をしました。
「これ以上の東方へのNATOの拡大はしない」と。
こうして、ソ連の許可を得て、ドイツは統一されました。
ところが、今は、その約束は守れていません、ロシアは怒りました。
【イスラエルとパレスチナ難民】
第二次大戦のころ、ユダヤ人は西欧人として同化している人たちと、シオニズムを重要視する人たちとに二分化していました。
収容所に運ばれていくユダヤ人とは別に、シオニズム重要視のユダヤ人は船でイスラエルに運ばれていきます。
また、イギリスはユダヤ人(シオニズム系)には、「パレスチナをユダヤ国家とすること」を約束します。その一方ではアラブ人にも「アラブの国家独立」も約束します。
多くのユダヤ人がパレスチナに来て、アラブ人を追い出しました。
こうしてパレスチナ難民が生まれました、アラブの国家は作られていません。
ガサ地区のアラブ人は気の毒です。
本のレビューに「ユダヤ人だって同じことをイスラエルでしている」、と書いてあったのを見たことから、少し調べて事実をしりました。
イスラエルが、何故、国家として認められないのかを初めて知りました(最近は認める国も増えましたね)。
ユダヤ人が侵略し、パレスチナからアラブ人を追い出したことを知りました。そのやり方が酷かったことも。
第二次大戦中のドイツではユダヤ人迫害が行われてもいましたが、
時期同じくして、イスラエル建国のために船で運ばれていたユダヤ人も多くいました。
なんとも、やるせない現実です。
【レビューまとめ】
コリーニは完璧フィクション映画ですが、実によくできたフィクション映画です。
戦争の背景にあったできごとに焦点を当てています。
戦争の後片づけ、いまだ終わっていないことが多いですよね。
日本の憲法は戦後アメリカが作ったという話は、本当なのでしょうか?
日本の戦争も終わっていないな~、とか。
映画見終わった後に、ぼんやりと考えました。
一緒に見た旦那と、無言で映画館を後にしました。
旦那は可哀そうだと何度か言っていました。
見た後の気分は軽くはないので、気持ちが元気なときに勉強のために見るといいかも。
悪法もまた法なり
「終戦の日」が近づくと話題になる「戦犯」。
日本では処刑された戦犯まで靖国神社で「英霊」(=神)として祀られていて、問題視されているが、
ドイツでも似たような問題があるんだな。
何というか、「身内を裁く」ことの難しさを痛感させられる。
併せて、「正義とは?」
「法から見放された者はどうすれば?」を静かに問いかける作品。
あとは、ドイツの法廷って日米とも全然違うんだな。
ガラス張りの被告席とか、証人が判事を向いてたり…
法なんかで裁くからこんなことになるんだ。
こんなテーマは誰にも答えだせるわけないんだから、
答えを出そうとするのをやめよう。
ぐるぐるぐるぐる頭の中で、
真実とは、悪とは、正義とは、戦争とは、憎しみとは・・・
って考えて考えて、
そんで明日から頑張って生きていこう。
「映画」という枠で見ると、
法廷モノってズルいよね。
説明シーンが冗長になりづらいから。
でも、冒頭のホテルでのシーンが白眉。
ちゃんと映像で伝えてる。
ボクシングシーンは意味不明。
幼少期のカスパーとフィリップが出会ったのに、
次のシーンで出てきたのがヨハナ。ここで混乱。誰?
操作のシーン、回想シーンともに丁寧で分かりやすい。
ただ、ハンスとカスパー家の関係がよくわからん。
なんで面倒みてやったの?実の父親も生きてるし。
それでも、よくできた法廷劇。
それでも、人は殺してはいけない。
それでも、戦争はしてはいけない。
それ以外に、この映画を評する言葉を
私は知らない。
重厚なテーマを扱った法廷サスペンス
ドレーア法の欺瞞
ドイツの暗部ドレーア法の欺瞞を暴くシーラッハの法廷ミステリー小説を映画化。
ホテルで年配の実業家ハンスが殺される、犯人コリーニは完全黙秘、弁護人は法廷経験のない新米ライネン、しかも被害者のハンスはライネンの大の恩人という普通なら不適格な胡散臭い設定。
死体の惨状から相当の恨みを持つ者の犯行と誰でも察しはつくだろう、ドイツだからおそらくナチス絡みだと予想は着くが犯人がユダヤ人でなくイタリア人なのでそう単純ではなさそう、仕事絡みの怨恨かとも思えるし・・、ハンスの孫のヨハナとのラブシーンなど挟まり一向に調査は進まないので前半は耐えるのみ。そういえば冒頭のボクシングシーンは何だったのだろう、不屈の闘士と言う面を見せたかったのか・・。
イタリア人迫害は意外だったが早々にイタリアが降伏してしまいナチスとしては不甲斐なく見下していたのだろう、ナチスの戦争犯罪の免責時効を狙ったドレーア法は本作で初めて知りました。
ナチスが軍資金や技術資料をもって敗戦前に国外逃亡、実業家として成功していた例はよく聞いたので温厚で面倒見の良い好好爺が元ナチスという設定もあながちフィクションともいえないのだろう、映画だからドラマ仕立ては分かるが骨太のテーマだけに色恋沙汰や親子の確執などのサイドストーリーは要らなかった気がしました。特にヨハナはロンドンに夫が居るようだし「祖父が支援しなかったらあんたなんかケバブ店の店員がいいところ」とライネンを明らかに見下したセリフを吐いていただけにしおらしいところを見せても白けます。見方を替えればライネンは恩を仇で返したようにも思えます、著者のシーラッハさんの祖父も元ナチスだったそうですから複雑な思いをライネンに込めたのかも知れませんね・・。
全107件中、1~20件目を表示