「スケートボードが生き甲斐の少年達と自身の過去がシンクロするドキュメンタリー」行き止まりの世界に生まれて よねさんの映画レビュー(感想・評価)
スケートボードが生き甲斐の少年達と自身の過去がシンクロするドキュメンタリー
イリノイ州ロックフォードは“ラストベルト“に位置する寂れた町。そこで生まれ育ちスケートボードに夢中になった3人組、本作の監督ビン・リューとキアー、ザックの12年間を捉えたドキュメンタリー。
ビン自身が自分達の姿を撮り溜めた映像から垣間見えるのは、閉塞感に満ちた町で精神的にも肉体的にも追い詰められていく少年達がスケートボードに救われるがそんな彼らを飲み込むのは所得格差、人種差別、性差別、学歴差別といったそこら中を縦横無尽に張り巡らされた段差。原題の”Minding the Gap”とは段差に気をつけろの意味ですが、段差を乗り越えて颯爽とスケートボードで街を走り抜ける3人の勇姿と厳しい現実の中でなんとか生活していこうともがく3人の姿が何度も何度も重なって、どこにも出口のない深い闇が浮き彫りになっていく様が圧倒的に切ないです。しかしここで描かれている不寛容で窒息しそうな社会はこの日本でも昭和からずっと続いている風景。3人の姿はそのままその社会でどうにかこうにか生きてきた自身の分身であるかのように見えてきて、『mid90s ミッドナインティーズ』とは逆にスケートボードで街を滑走する姿を背後から捉えた映像が不寛容な現実を乗り切っていこうとする彼らの姿とシンクロしてとても他人事とは思えず胸が痛みました。
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