劇場公開日 2020年9月18日

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「彼の(一貫した)集大成的"信条"を見た。」TENET テネット よしさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5彼の(一貫した)集大成的"信条"を見た。

2020年9月18日
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記録は未来に残る/無知は我々最大の武器だ --- 起きたことは仕方ない。ノーランがまたも我々の知的好奇心を刺激してくれる、それも「時間の逆行」というノーラン × 《時間》の終わりなき戦い = 彼が長年に渡って描き続けてきた永遠のテーマで(ex.『メメント』)。IMAX布教の立役者で徹底した"現実"リアル志向 = 我らが大天才クリストファー・ノーランのベストアルバム的内容(彼が愛する007はじめ"スパイ"モノまで ex.『インセプション』)でありながら、またも前人未到・未知の領域に、折り紙付きのクオリティーで踏み込んでいる --- そう、(始めから)全てつながっている(た)。
壮大なる挟み撃ち作戦!この面白さ/創造性は、核弾頭級の爆弾だ!--- 時折、難解すぎて観客を置いてきぼりにしてしまう = 映画的カタルシスが逆に損なわれてしまう可能性はあるだろう。確かに理論・理屈と直に訴えかけてくる感情・瞬発力なら、理論が勝っているだろう。故にキャラクターに感情移入する類の作品でもない。そうした面を差し引いても謎解きの気持ちよさはじめ最高。例えば、公開前から本作とは精神的姉妹分とも言われていた『インセプション』が個人的に特別と言っていいほど大好きなのだが、『インセプション』が「?!!!」だとすると、本作は「???!」。けど「!」の破壊力が尾を引くレベルで凄まじい。ス、ス、スゴすぎる…と圧倒的余韻の中、思考してしまう。例えばエンドロールの中、オペラハウスの救世主や主人公とニールが初めて言葉を交わす何気ないシーンを思い出しては鳥肌が立っていた。正直、(このスコアだが)本作のことをまるで理解しきれていないと思う。が、それでいい。本作は何十回もの鑑賞に耐えうる質が保証されている器の大きさを持ってして、僕たち世界中の人々を興奮させ思考させてくれる。究極の理詰めで愛すべき頭でっかち、入念に仕組まれた静的意味を動的興奮に変えてしまう。面白すぎる。
難解すぎる脚本 --- 細部までこだわりすぎな完璧主義的挟撃作戦に目を見張る。(背丈はあまり高くなさそうだが)運動能力で魅せる"主役"ジョン・デヴィッド・ワシントン、本作に"バディ"モノの興奮を呼び起こさせてくれる(最後まで)格好良すぎるロバート・パティンソン、異才を放つ美貌の"強い女性"エリザベス・デビッキ、『ゴジラ』以降すっかり筋骨隆々キャラが板についたアーロン・テイラー・ジョンソン、そして訛ったセリフ回しはその一端に過ぎず"007"チックなザ・悪役っぷりが様になりすぎなケネス・ブラナー。他にも出番こそ少なくとも演技派たち壮々たる面子が揃っているのも、流石はクリストファー・ノーラン作品(出たがるのも分かる)。あと忘れてはいけないのがワンシーンだけの登場でもWITHポジションなノーラン組常連マイケル・ケイン。他にも圧倒的衣装に圧倒的音楽など、全てが「これ!これ!」と身悶えするほどにノーラン・ワールドを形作っている。任務完了。

"プロタゴニスト"
彼の作品の特徴というか、勝手な共通点から本作を一見した上での(失礼極まりない稚拙な)感想を述べてみる。
ノーラン作品は…
・「アクションを撮るのが案外ヘタ?」
→「時間の逆行」という要素での斬新なアクションの組み立てもあってか、超大作での場数も踏んできたからか、編集が良いからか、(恐らくそのどれもだが)今回はしっかりとスクリーン映えするような没入感もあり、世界的規模のロケーションや興味関心を煽る題材それ自体に見劣りせず、相変わらずもっさりとした部分はあったものも普通(以上)に楽しめたと思う。いや、確信する。
・「小さな話を大きな規模でしている?」
→例えば『インセプション』では渡辺謙のライバル企業の息子に独立させるため("だけ")、『インターステラー』では娘の部屋の本棚での父娘の交流("だけ")。その点において本作でも途中、「あれ、(今回も)一人の女性を救う("だけ"の)話?」と早合点してしまいそうになったが、いやいや、今回はしっかりと世界を救う話だった。まるでNetflixドラマ『ダーク』を見たときのような哲学的興奮だ。
・「タイトルが2回出る?」
もちろん!
…ともあれ、実績のある原作もの、続編やリブートばかりが蔓延する何かと安牌な映画界・世の中で、これだけの規模の完全オリジナル作品を圧倒的クリエイティビティでコンスタントに製作でき(ワーナーさん感謝)、また世界的関心を持って迎えられ、興行的にも批評的にも成功し続けている貴重・稀代な存在で希望であることは疑う余地なし。シネフィルも大衆も等しく魅了し、観客は大手映画会社が思うほどバカじゃないと証明してくれた、天晴。これからも挑戦し、僕らが思いもしない方法で驚かせ続けてほしいと切に願う。
去年からずっと楽しみにしていた本作を遂に見た!そして是が非でもIMAXで観るべき!

我々は黄昏に生きる
赤色のストラップ、ダイエットコーラ
今度見るときはニールの線で見てみたい

P.S. 日本の公開近づくほどダサくなっていくプロモーションだけは本当どうにかしてほしい

とぽとぽ