劇場公開日 2020年9月18日

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「ある意味『ダークシティ』?複雑怪奇な展開の向こうに透けて見える作家性に圧倒される150分」TENET テネット よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ある意味『ダークシティ』?複雑怪奇な展開の向こうに透けて見える作家性に圧倒される150分

2020年9月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

キエフの国立オペラハウスをテロリストが占拠。館内に特殊部隊が突入、ある人物を救助しようとした隊員の一人がテロリストに捕らえられてしまう。彼が昏睡状態から目覚めるとそこにはフェイと名乗る男がいた。フェイから告げられたミッションは未来からやって来た敵が時間を逆行する装置を使って第3次大戦を引き起こして人類を滅亡させようとするのを阻止するというもの。この不可解なミッションのキーワードは”TENET”、何から何まで訳の解らない状況でミッション遂行できるのか?

これはとにかく難解極まりない。予告でも告げられていた通り「理解しようとするな。感じろ」の燃えドラ主義で鑑賞するのが正解。理解しようとすると物語に置いてけぼりを食らってしまいます。ただ目の前で起こることに身を委ねるとぼんやりと作品の全体像が掴めます。何を書いても野暮ですが、かろうじて言えるのは数日前に『インターステラー』を再鑑賞しておいたのが功を奏したということ。主人公クーパーの娘マーフィーの部屋にあったある書籍の背表紙を見つけた時にピンと来たことが本作のバックボーンにあるのは間違いないかと。『メメント』、『インセプション』、『インターステラー』等で追及されていたテーマをまた新しい視点と複雑怪奇な展開で繰り返すクリストファー・ノーランの揺るぎない作家性に圧倒されました。

とにかく実写に拘るノーランをがっつりサポートする撮影監督ホイテ・ヴァン・ホイテマがエストニア、ノルウェー、デンマーク、イタリア、英国、インドといった国々で捉えた映像はどれも優雅で美しく、とにかく出来る限り大きなスクリーンで鑑賞するのが吉。一度の鑑賞で全てを把握するのは困難、鑑賞中に疑問に思ったことを憶えておいて何度も鑑賞することで補完していくような作品だと思います。個人的にはエリザベス・デビッキの凛とした美しさが魅力的。全然作風もあらすじも異なりますが、アレックス・プロヤス監督の『ダークシティ』のヒロインを演じたジェニファー・コネリーを思い出したことも申し添えておきます。

(2020/9/27 2回目鑑賞)

4Dxで再鑑賞。やはりIMAXと比較すると映像が圧倒的に物足りない。水や熱風噴射他の演出はライド感覚で楽しむ分にはいいですが初鑑賞でこのフォーマットを選択すると気が散って仕方がないかも。疑問点を整理して答え合わせをしに来ましたが、ロータス社の名前の由来等気になっていたことがすっきりした半面、オペラハウスの座席下の銃痕、BMW右サイドのドアミラー、予告にも登場する上下で爆発が前後する廃墟ビル等一体どうなってんだ!?とさらに気になってしまう点も多々出てくる始末。とはいえ主人公がのび太だと思えばほぼ劇場版ドラえもんだし、ある意味劇場版クレヨンしんちゃん的とも言えるシンプルな話ではあるので、まずは1回IMAXで観てあとは適当にフォーマットを変えながら繰り返し鑑賞するといいのかなと思います。結構混んでるかもと思って警戒している人もいるかと思いますが杞憂です。今回の鑑賞は日曜午後なのに6人しかいませんでした。

よね