るろうに剣心 最終章 The Beginning : 特集
超速レビュー「The Beginning」はシリーズ最高傑作
“終わり”と“始まり”を描く最終章
「るろ剣」2部作で感動の完結!
製作から10年間――。2011年から走り続けてきた「るろうに剣心」シリーズが、ただいま公開中の「るろうに剣心 最終章 The Final」、6月4日に劇場公開を迎える「るろうに剣心 最終章 The Beginning」をもって完結する。
累計観客動員数1000万人を超える国内有数のヒットシリーズであり、その人気・評価・存在感は“伝説”といって差し支えないレベル。そんな作品の最後の花道、我々映画ファンが映画館で見届けなくてどうする? しかも、この2部作は主人公・緋村剣心の十字傷の謎が明かされる超必見の内容。
いまこそ「The Final」「The Beginning」のダブル観賞で、勇気と希望を与え続けてくれた「るろ剣」を万雷の拍手と共に送り出そうではないか――。本稿では、シリーズ最高傑作である「The Beginning」の魅力をたっぷりと解説。後半では、シリーズを愛してやまない大ファンのライターによる超速レビューもお届けする!
二部作で明かされる「るろ剣」のすべて
この“最後にして最高のイベント”は参加必須!
これまでに3作が製作されてきた実写映画「るろうに剣心」シリーズ。だが、あなたはまだ本当の「るろうに剣心」を知らない――。
かつて伝説の人斬りだった緋村抜刀斎が、いかにして「不殺」を標榜する流浪人・剣心となったのか? 「最終章」2部作は、剣心の過去に大きく踏み込んだ物語。これを見ずして「るろうに剣心」は語れないし、逆に言えばこの2作を見れば「るろうに剣心」のイメージが180度変わると言っても過言ではない。
ストーリーはもちろん、スケール感やクオリティ、剣心役の佐藤健をはじめとする出演陣の演技においてもシリーズ最高純度の最終章に「参加必須」の理由を、3ポイントに分けて紹介する!
●超速プレイバック! 「るろうに剣心 最終章 The Final」
まずは、本年度実写No.1大ヒットの華々しいスタートを切った「The Final」の内容をおさらいしよう。舞台は、第3作「るろうに剣心 伝説の最期編」からしばらく経った時期。仲間たちと平和に暮らしていた剣心(佐藤健)のもとに、シリーズ最恐の敵・雪代縁(新田真剣佑)が現れ、剣心に関わるすべてを奪おうと東京に総攻撃を仕掛ける。
そして明かされる衝撃的な過去……。なんと剣心は、縁の姉であり、自身の妻だった巴(有村架純)を斬殺していたのだ! 姉の敵を討たんとする縁と剣心の壮絶な戦いが、いま始まる――。
「The Final」においては剣心と縁の死闘にフォーカスが当てられており、剣心が巴を斬殺した理由、さらに十字傷に隠された秘密については、過去編である「The Beginning」で明かされる仕掛けになっている。
すなわち、「The Final」と「The Beginning」は2作で1つ。両方を見ることで、初めて「るろうに剣心」は完成し、さらにはこれまでの1~3作の裏にあった“剣心の想い”が深く理解できるのだ! 「るろうに剣心」の“真実”が、ついに明かされる――。
●【参加必須①】遂に明かされる「十字傷の謎」!緋村剣心、その誕生秘話は必見
「るろうに剣心 最終章 The Beginning」が必見の理由……。それはやはり、「すべての謎が明かされる」からだろう。剣心のトレードマークである十字傷に隠されたドラマを知ったとき、剣心に対するあなたの見方は激変するはず。
そして同時に、「伝説の人斬り“抜刀斎”は、いかにして流浪人“剣心”になったのか?」にも注目。「The Beginning」で判明するその衝撃的なプロセスを、佐藤健の驚異的な演じ分けと共に見届けていただきたい!
●【参加必須②】前人未到の高みへ――過去の歴史を塗り替える、シリーズ最高傑作
過去作と比べても、「The Beginning」は特別であり最高傑作といっていいクオリティ。先に説明したストーリー面(ドラマの完成度)や、演技面の見ごたえは勿論のこと、アクションがこれまでとは全く違う!
というのも、今回の剣心は逆刃刀ではなく真剣で戦うから。人を“斬る”際の本物感が、段違いにパワーアップしているのだ。始めて実写化された伝説の人斬り・緋村抜刀斎の圧倒的な強さと恐ろしさに、震撼させられることだろう。こんな剣心、いままで見たことない!
●【参加必須③】本当に終わり――断言しよう、劇場で体感しなければ絶対に後悔する!
もしこの映画と同じ時代に生まれていたら、劇場で“完結”を体験したかった――。映画史に輝くヒットシリーズに対して、そう思ったことはないだろうか? 映画とは体験であり、人生に大きな影響を与えるもの。たった2時間の出合いが、一生ものになることだってある。
「るろうに剣心」シリーズ10年のラストとなる「The Final」「The Beginning」は、まさにその筆頭。壮大なサーガの締めくくりであり、参加しなければきっと後悔するだろう。本作の体験者となれるのは、いまを生きる私たちだけの特権なのだ。
「るろ剣」世代の「るろ剣」ファンによるレビュー
シリーズ最高アクション&ドラマはIMAX®で体感!
“すべての終わり”である「るろうに剣心 最終章 The Beginning」を、劇場で見てほしい――。そこで今回は、小学生のときから「るろうに剣心」の原作漫画やTVアニメに触れ、実写全作品を劇場で観賞してきたという「るろ剣」世代の映画ライター・SYOによるレビューを掲載。本作をIMAX版で観賞したガチファンが、オススメポイントを解説する!
原作ファンにとって待望だった名エピソードを、最高レベルで実写化
まず、今回の「最終章」で実写化されるエピソードは、「人誅編」「追憶編」として原作ファンの間ではとても人気の高いエピソード。これまで断片的にしか明かされていなかった剣心の過去が克明に描かれ、十字傷に秘められた切なすぎる物語が紐解かれる。さらには、「不殺」という剣心の信念がいかにして構築されたのか、その一部始終がつづられ、作品全体のテーマ性、つまり“「るろ剣」の精神”を改めて定義する内容になっているのだ。
そのため、2012年に公開された第1作「るろうに剣心」の時点で、「人誅編」「追憶編」の実写化への期待の声が上がっていた。約10年もの間、この日を待ち焦がれてきたファンも多かったように思う。自分自身、このエピソードが実写化されると聞いたとき、「ついに来た……!!」と小躍りしたものだ。
大友啓史監督は、これまでの「るろうに剣心」シリーズで原作を深く読み込み、あらゆる手を講じて三次元への最適化を模索してきたフィルムメーカー。原作者・和月伸宏も推薦した佐藤健の神がかり的な憑依演技も相まって、「何を見せてくれるのか」と日に日に期待が高まっていた。「るろうに剣心」を愛する者にとっては、見る前から「最終章」2部作は特別な存在だったといえるだろう。
そして――。そんな念願の「最終章」を見終えた直後の率直な感想としては、「ついに終わってしまった」という寂寥感と「最高のラストだった」という達成感に包まれた。ドラマもアクションも、映像も演技も文句なしの完結編。「The Beginning」は、「るろうに剣心」シリーズを締めくくるにふさわしい最高傑作だった。
作品のポテンシャルを最大限発揮できるのは、IMAX®
ここからは、「るろうに剣心 最終章 The Beginning」を120%楽しんでいただくために、少々コアなファン目線の注目ポイントをいくつか紹介していこう。まず、自分は通常版とIMAX版を見比べたが、やはりせっかくの機会、最高の環境といえるIMAX版で味わっていただきたい。その理由は、大きく分けて「映像」「音響」「劇場構造」、そして「演技」にある。
まず映像だが、IMAX版ではアクションはもとより、微細な表現を隅々まで堪能できる。特に本作は、幕末の動乱期の京都を完全に再現しており、抜刀斎=剣心(佐藤健)が寝泊まりする宿屋から市中、東屋などに至るまで、震えるほどに作り込みが凄まじい。IMAXの大画面によって、ポテンシャルが最大限発揮できるつくりになっているのだ。
ちなみに本作はこれまでのシリーズに比べてあえて色味を押さえ、リアリティをより追求した色彩設計に。また、本作での抜刀斎は闇にまぎれて躍動する暗殺者であり、これまで以上に直線的にデザインされた、シャープかつスピーディなアクションが展開する(本作の殺陣は目で追えないほどの“神速”!)。そうしたシビアな世界観にどっぷり浸かるためにも、色の“コントラスト”が段違いなIMAXは最適といえる。後半には、ポスターでも描かれているように一面の雪景色が広がるシーンも用意されており、その異次元の美しさに息をのむだろう。
高精度なサウンドで、没入感がグッと高まる!
次に、音響面について。今驚くほど澄んだ深みのあるサウンドを実現する特許登録されたスピーカーと高精度なサウンドは、完璧に調整されており、音の臨場感がまるで違う。腹の底にズンと響く大音響から、肩越しに聞こえるささやき、さらに人の耳では捉えきれない音域までカバーすることで、微妙なニュアンスも忠実に表現している。たとえば、動作に伴う音の背面で薄く這わせるように流れる音楽をきっちりと感じ取ることができ、サウンドデザインの意匠を隅々まで感じ取ることできる。
また、今回のメインキャラクターである抜刀斎と巴は、共に寡黙で感情を抑えた話し方をする人物。だからこそ、わずかな気持ちの震えまでも拾える立体音響で観賞すれば、彼らの“本当の想い”に触れることができ、作品の理解度がぐんと上がるのだ。
しかも、IMAXは、劇場のどこに座っても理想的なリスニング環境になるように設計されているため、場内の隅々まで臨場感あふれるサウンドで作品に没入できる。こうした「劇場構造」も、作品を120%楽しむためには外せないポイントといえる。
そして、最も注目していただきたいのは殺陣に伴う音の数々。抜刀術を行う際、刀を鞘に納める鍔鳴り(つばなり)の音は言わずもがな、今回は逆刃刀ではなく真剣になるため、人を斬る際の音の本物感が、没入感をグッと引き立てる。他にも衣擦れの音や環境音、そして……後半の戦闘シーンでは、“音”にまつわるある仕掛けが用意されているため、その部分を最大限に楽しむためにも、IMAXがオススメだ。
佐藤健や有村架純のすぐそばにいるような臨場感
そして、最後は演技について。今回、佐藤健が演じた抜刀斎と、有村架純が演じた巴のやり取りで重要なのは、「まなざし」。言葉少なな彼らは、目の表情に真意が現れる。そのため、目線の動きやまなざしの変化を大画面で確認できるIMAXで、佐藤と有村のハイレベルな目の演技の応酬をかぶりつくように見てほしい。
剣心と巴が同じ時間を過ごすことで“険(けん)”が抜け、目に少しずつ生気や優しさが灯り、人間らしさを得ていく道程が、非常に見事に設計され、演じられているのだ。
演者のまばたきまで追えるIMAXでは、冬のシーンで抜刀斎が話すシーンの白くなる息(細かい部分だが、喉仏が上下動する部分など、佐藤のファンにはたまらないのではないか)、巴の目に涙が浮かび、頬を伝うさま等々、ふたりのすぐ傍にいるような錯覚すら味わえる。彼らの一世一代の名演を、全部受け止めたい――。そんなファンの願望をかなえてくれる上映方式といえるだろう。
映画館での観賞の素晴らしさを、今一度教えてくれる
今回は主にIMAXでの観賞について語ってきたが、「るろうに剣心 最終章 The Beginning」は作品単体で見ても、日本映画の底力を感じさせる魂の映画だ。新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が発出され、公開延期や映画館の休業など、大打撃を受けた映画界。国内においても、その“被害”はいまだ続いている。そんな逆風の中でも毅然とした態度を貫き、気を吐く本作は、私たちに映画館の大スクリーンで作品を観賞するかけがえのなさを、今一度呼び起こしてくれる作品でもある。
伝説が、ついに終わる――。この十年を振り返り、エンドロールを誇らしい気持ちで見届けつつ、逆境を乗り越えていまこの作品が上映される意義を、身体と心の全部で感じていただければ幸いだ。(SYO)