劇場公開日 2020年10月3日

  • 予告編を見る

「焦点の外側の厚みが欲しかった」生きちゃった R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0焦点の外側の厚みが欲しかった

2024年9月11日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

物語もタイトルも解釈が難しい作品
小説においてタイトルは基本的に作品が出来上がった後に修正されるものだが、この基本形で思考するとこのタイトルに託した意味は、「それでもまだ自分は生きている」というような捉え方になるだろう。
その意味が作品と少し距離があるように思えてならない。
そしてこの作品には謎が多い。
特にアツヒサの素性は隠されている部分が多くわかりにくい。
彼は自宅に祖父のための仏壇を備えているという特殊な設定がある。
しかし祖父の死が彼に与えた影響は全くわからないままだ。
彼と祖父との関係と11年前という具体的な数字、そしてその後にサチコとの婚約、ナツミとの再会があったと思われる。
結果アツヒサは、サチコと別れナツミを選び結婚した。
ある日サチコが突然訪問し、彼女が妊娠できない体だったことを打ち明ける。サチコはそれが運命だったと解釈、自分だけが幸せをつかんでしまったとアツヒサは思ったのだろうか?
また逆にサチコに対する罪悪感が発生したのだろうか?
帰宅したナツミは激しく泣いている夫の姿とサチコの姿を見て動揺するも、心の内を話すことはなく、結局夫への不信感となった澱が浮気へと走らせてしまう。
さて、
アツヒサの本心は最後に明かされる。
それは「いつだって本心を言えたためしがない」ということだった。
それを日本人の一面として表現している。
確かにそこに着眼したのは面白いと思う。
それと男女、夫婦、あらゆる人間関係と絡めている。
親友のタケ
「オレが見守っててやるよ」とアツヒサを娘スズの元へと行かせた後、「ダメだ、見てられない」というのもまた、日本人的なのだろうか?
この作品のクライマックスとタイトル
最後の足搔きとしてようやく本心を伝えることができるというある種の情けなさを伴った人間の真実
モチーフになっている「影」
実体のないものの象徴
または実像の見誤りという象徴
それこそが「本心」なのかもしれないと、この作品は言いたいのだろうか。
また、
「めまい」の始まりがアツヒサの人生が狂い始めたサインで、それはナツミの葬儀に出席するときも続いていた。
ただ、それは運命のようにあって、少なくとも車の中で激しく感情が揺さぶられるまで続いたと思われる。
物語の中で最初に狂い始めたのは、サチコの訪問と帰宅したナツミにアツヒサが端然とした説明をしなかったことだが、それこそが本心を話せない彼の問題だったと考える。
サチコとの別れ
これもまた謎
おそらくサチコと婚約中にアツヒサはナツミと再会してしまったのだろう。
そう考えると数奇な運命と言いたいが、親友のタケにはそのようなことが一切ないのは物語の奥行きを感じさせない。
タケはキーマンでなければならないのに、アツヒサに寄り添う以外何のキーも持ってない。
ぶっ飛んでいるのはアツヒサの兄
祖父との写真に一緒に写っていることから、アツヒサの人生で重要なパーツなのはわかるが、ナツミの再婚相手を殺害するという暴挙はただ暴挙でしかない。
また彼の家族も奇妙過ぎる。
兄の収監先を訪問した後、家族写真を撮るという心境は理解しにくい。
また、
この作品には「言語」というモチーフも登場する。
彼らが語学を習いながら、自分自身の気持ちを相手に伝える練習をしているのだ。
「英語では思ったことが言える」
このセリフはこの作品の重要なパーツだ。
言うべきことが言えない日本人 主人公アツヒサ
アツヒサは葬儀場でナツミの断末魔を聞く。
聞こえるということは意識は端然とつながっており、おそらく愛があったのだろう。
収監施設で思い出した兄のグッドサイン 自己犠牲という愛の表現
いつも必ず受け止めてくれる親友のタケ
何があっても守りたかった娘のスズ
これらが重なって「本心」を言う決心をした。
さて、
この本心とタイトル 若干遠い気がするが、言葉で人に伝えるということを明確にテーマとしている。
悪くはないが、愛しているなら兄がナツミの夫を殺害すればナツミの生活はどうなってしまうのかということを考えなかった点には疑問が残ってしまう。

R41
琥珀糖さんのコメント
2024年9月11日

はい、Amazonプライムで、下のバーの右端に「検索」があります。ここを押して作品名を入れれば、出て来ますよ。
「茜色に焼かれる」も「余命10年」も
「アジアの天使」もプライムですから大丈夫です。
「ラブレター」だけはrentalでしたが。
他は見れると思います。
何でも聞いて下さいね。
(私が知らないこともたくさんあると思いますけど)

琥珀糖
琥珀糖さんのコメント
2024年9月11日

ううん、あれっとは思ったけれど、もしかしてそう言ったのかも?
と、思ってました。
ぜんぜん忘れっぽい方だから、気にしてないですよ。

Rさん、石井裕也監督の「茜色に焼かれる」は観ないんですか?
すごい高評価の映画ですよ。
あと「アジアの天使」は、オール韓国ロケで出演者も
韓国人多数出演。
若い監督はみんなアジアの市場を視野に入れてるから、話が来たらのるんですよ。藤井道人監督とか古いところでは岩井俊二監督はアジアですごく人気があります。
藤井道人監督の「余命10年」は観たんでしたっけ?
岩井俊二監督の「LOVE LETTER」は20年位前の作品だけれど、
観てる人は多いですよ。
作品選びに詰まったときに観て下さい。
後悔はさせませんよ笑)それではまた。

琥珀糖
琥珀糖さんのコメント
2024年9月11日

コメントありがとうございます。

香港の映画祭の「原点回帰。究極の愛」とのお題を
貰って、資金も1500万円出た。
それって「愛にイナズマ」の設定に似通った感じ、
しませんか?
「愛にイナズマ」は佐藤浩市まで出演したメジャー作品。
石井裕也監督の中では、この映画は、ポカッとスケジュールが空いたから、
「映画一本撮ったるか!!」って楽しんで撮影したのだとおもいます。たった3日で脚本書き上げて、声を掛ければ、仲野太賀、若葉竜也、大島優子、
が安いギャラで喜んで出演してくれる。
みんな映画バカ・・・なんですよ。
兄役は韓国人。日本語を話せないから、台詞無しの大麻で頭のイカレタ役。
こんな映画は真面目に論ずるより、心意気で見たらいいのでは、
私は十分に面白かったけど。
確かに神が宿っては居なかった。
大島優子の役は、インパクトがあり、社会と日本の世相を
映す反面教師に思えました。

琥珀糖