「自分の心を語らない男」生きちゃった 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
自分の心を語らない男
石井裕也監督が、スケジュールのポカっと空いた3ヶ月で撮り終えた映画。
脚本は3日間で書き上げた。
一気に仕上げた熱量は凄い。
香港国際映画祭が提唱した
「原点回帰。 至極の愛」というプロジェクトから生まれた。
提示された資本はたったの1500万円(もちろんそれで制作出来る筈はない)
幼なじみの3人。
厚久(仲野大賀)奈津美(大島優子)武田(若葉竜也)は仲良しで、いつもつるんで
グリコの氷アイスを分け合う仲だった。
やがて、厚久は奈津美と結婚して、5歳の娘すずがいる。
そんなある日、奈津美が自宅アパートで、浮気している現場を厚久は目撃。
一瞬にして厚久は、家も妻もすずの親権も失う。
浮気した妻は、浮気相手と同棲を始める。
男は定職に付かないろくでなし。
けっこう50分位まで、寡黙な男・大賀が鬱々と悩むシーンが続く。
ところが57分から、不幸の連鎖・連続・・・で驚きの展開をして行きます。
ここからはネタバレです。
…………………………………………………………………………………………………………………………………………厚久の兄は引きこもりの大麻中毒でした。
この役・韓国人のパク・ジュンポムが演じますが、台詞はありません。
厚久の元自宅(厚久は追い出されている)を訪ねた兄は、奈津美の交際相手を、
撲殺してしまうのです。
そして半年後。
浮気相手の借金の保証人に奈津美はハンコを押していた。深く考えずに。
そしてまた半年後。
奈津美は借金返済のため、デルヘル嬢をしている。
ホテルで濡れ場は過激。大島優子も振り切った演技を見せる。
なんと客(北村有起也)が異常者で奈津美は刺し殺されてしまう。
奈津美の葬儀。
義母は「あんたなんかと結婚させなければ良かった。よく顔を出せたもんだ」と言うが、
「奈津美なんかと結婚しなければ良かった」は、厚久の台詞だ。
すずを取り上げられた厚久は、親友・武田の車で奈津美の実家へすずを訪ねる。
親友の武田が、厚久の心の代弁者・・・だったのだと思う。
まるでゲイかと疑うほど、厚久と武田は心が通じる。
奈津美とは通じなかった言葉。
奈津美を満足させられなかった厚久。
映画は厚久が気持ちを爆発させて、プツリと終わる。
愛し合ってるのは、大賀と若葉達也の、男2人ではないのか?
奈津美は無い物ねだりの欲深い女。
実家があんな凄い豪邸なら、親に借金すれば、デルヘリなんて危険を侵す必要はない筈。
仲野大賀と若葉竜也そして大島優子の熱演で見応えありました。
(ラストで、切なくて泣いてしまいましたが、やや不幸の押し売り的ストーリーに、
疑問も感じました。)
石井裕也監督は、この映画は今の日本人の置かれた状況そのまま・・・と仰ってますが、
いろいろご推薦ありがとうございます。
実は私、アマゾンプライムのみでしか映画を見ていません。
チェックしておくので、それらが表示された時には是非見ますね。
映画初心者です。
ありがとうございます。
勘違いしていました。
「愛にイナズマ」と「勝手にふるえてろ」
書いた後で頭の片隅のあった「?」
松岡茉優のイメージが被ってしまっていました。
こんな勘違いコメントでは返信のしようもないと思います。
大変失礼しました。
いつもありがとうございます。
「愛とイナズマ」の最後のセリフ「勝手にふるえてろ」は、主人公が相手の眼に映る自分自身に言った言葉が印象的に残っています。
従来の自分との決別
香港映画祭が提唱した「原点回帰。 至極の愛」の表現が「生きちゃった」なのですね。
本音を言えない自分との決別
この表現方法は似ているかもしれません。
愛とはすべてであれば、ある意味何でもありかもしれません。
琥珀糖さんがおっしゃる通り、楽しめばいいのかもしれません。
本心を言わない日本人の表現集で終わりでいいのかもしれませんね。
おはようございます。
なかなか難しい作品でした。
細部に神が宿っていないところが惜しいと思いました。
本心を言えない日本人
そこはうまく描いていたと思います。
本心を言えない演技はいいのですが、そのための細部が描かれていないことに疑問が払拭できなかったです。
ただ、収監された兄の面会の後家族写真を撮りますが、その心理はおそらく「清々した」という本心の表現だったのかなと思いました。
この本心を別の形で表現している箇所と、その本心をどう表現していいのかわからないままの主人公との対比が、あまり対比としてわかりにくい点が惜しいところですね。
親友二人が手を繋いで歩くシーン。
おっ?!と思いました。
ミュージシャン諦めたあたりの描写が欲しいところです。ギターは目立ってたから夢はあると思ったのに・・・