劇場公開日 2020年10月3日

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「自分の心を語らない男」生きちゃった 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5自分の心を語らない男

2022年7月3日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

石井裕也監督が、スケジュールのポカっと空いた3ヶ月で撮り終えた映画。
脚本は3日間で書き上げた。
一気に仕上げた熱量は凄い。
香港国際映画祭が提唱した
「原点回帰。 至極の愛」というプロジェクトから生まれた。
提示された資本はたったの1500万円(もちろんそれで制作出来る筈はない)

幼なじみの3人。
厚久(仲野大賀)奈津美(大島優子)武田(若葉竜也)は仲良しで、いつもつるんで
グリコの氷アイスを分け合う仲だった。
やがて、厚久は奈津美と結婚して、5歳の娘すずがいる。
そんなある日、奈津美が自宅アパートで、浮気している現場を厚久は目撃。
一瞬にして厚久は、家も妻もすずの親権も失う。

浮気した妻は、浮気相手と同棲を始める。
男は定職に付かないろくでなし。

けっこう50分位まで、寡黙な男・大賀が鬱々と悩むシーンが続く。
ところが57分から、不幸の連鎖・連続・・・で驚きの展開をして行きます。
ここからはネタバレです。

…………………………………………………………………………………………………………………………………………厚久の兄は引きこもりの大麻中毒でした。
この役・韓国人のパク・ジュンポムが演じますが、台詞はありません。
厚久の元自宅(厚久は追い出されている)を訪ねた兄は、奈津美の交際相手を、
撲殺してしまうのです。

そして半年後。
浮気相手の借金の保証人に奈津美はハンコを押していた。深く考えずに。

そしてまた半年後。
奈津美は借金返済のため、デルヘル嬢をしている。
ホテルで濡れ場は過激。大島優子も振り切った演技を見せる。
なんと客(北村有起也)が異常者で奈津美は刺し殺されてしまう。

奈津美の葬儀。
義母は「あんたなんかと結婚させなければ良かった。よく顔を出せたもんだ」と言うが、
「奈津美なんかと結婚しなければ良かった」は、厚久の台詞だ。

すずを取り上げられた厚久は、親友・武田の車で奈津美の実家へすずを訪ねる。
親友の武田が、厚久の心の代弁者・・・だったのだと思う。
まるでゲイかと疑うほど、厚久と武田は心が通じる。
奈津美とは通じなかった言葉。
奈津美を満足させられなかった厚久。

映画は厚久が気持ちを爆発させて、プツリと終わる。

愛し合ってるのは、大賀と若葉達也の、男2人ではないのか?
奈津美は無い物ねだりの欲深い女。
実家があんな凄い豪邸なら、親に借金すれば、デルヘリなんて危険を侵す必要はない筈。

仲野大賀と若葉竜也そして大島優子の熱演で見応えありました。
(ラストで、切なくて泣いてしまいましたが、やや不幸の押し売り的ストーリーに、
疑問も感じました。)
石井裕也監督は、この映画は今の日本人の置かれた状況そのまま・・・と仰ってますが、

琥珀糖
kossyさんのコメント
2023年10月30日

親友二人が手を繋いで歩くシーン。
おっ?!と思いました。
ミュージシャン諦めたあたりの描写が欲しいところです。ギターは目立ってたから夢はあると思ったのに・・・

kossy