「どこにも見どころが無い」映画 えんとつ町のプペル Beareolfさんの映画レビュー(感想・評価)
どこにも見どころが無い
仕事柄観る機会があったため、感想を書きます。
【映像】
今の技術を考えると、非常に低レベルです。
ガクガク、ガタガタ。10年ぐらい前のクオリティだと感じました。
【音】
そこまで盛り上がりもなく、記憶に残らない。
声の出演はひどいの一言。ハリボテだらけの作品なので、声優ぐらいは本物を使った方が良かったのでは。
【ストーリー】
粗が非常に目立つ。
舞台は外界の危険から隠れるため、煙突の煙で防護された閉ざされた街。
支配者が住民を守るため(外に興味を持たないように)、外の世界の存在をひた隠しにしている街。
そこに住む奇天烈な少年ルビッチは、同じく奇天烈な父親が街のルールを破り、外の世界を知ってしまった為に書き残したモノを見たので、外の世界を信じている。
ある日、悪臭を放つゴミ人間がやってきて、何故かルビッチはそのゴミ人間プペルと仲良くなり、街のルールを破ったり、街の住民を危険に晒したり、自分勝手な事を言いながら、街の外を目指す。
口八丁手八丁で洗脳した住民を使った数の暴力で、街を守る為に必死な町長達大人をぶっとばし、排除。
最後は火薬で街の煙をぶっ飛ばして、「わあ外ってあったんだね!」となり、住民達にも、何故か町長達にも大絶賛されて終わり。
掻い摘むと、こういうストーリーです。
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全体的に、原因と結果が何一つ繋がらないため、終始煙に巻かれたような気持ち悪さが残りました。
・何故ルビッチとプペルは急激に仲良くなったのかが分からない。
プペルは悪臭を放つ胡散臭い汚いゴミの塊です。何故、出会った瞬間にルビッチが懐くのか。一切の背景が描写されない為、ルビッチは特殊な性癖でもあるのかと疑ってしまう程。
・客観的に見るとどう見ても、支配者サイドは街や住民を守ろうとしている「善玉」側。ルビッチはそのルールを壊し、我儘一つで街を崩壊させようとしている「悪玉」側になっている。それなのに、徹頭徹尾ルビッチを正当化し、讃え、神格化するようなストーリーの流れにとても気味の悪いものを感じる。
・この手の話には、必ずルールを破壊する事への葛藤だったり、苦悩だったり、苦境を乗り越えた成長なんかが描かれて然るべきなのに、この映画にはそれらが一切何一つない。
「神の子」ルビッチは成功が約束された存在であり、苦境など存在してはならないらしい。
そんな内容なので観終わった後も、心に何も響かない。
・支配者は、「異端審問官」などという現実に居たらとても物騒な武力を使ってまで住民を守らなければならなかった筈なのに、煙を晴らした途端「外の危険」が綺麗さっぱり忘れてルビッチを大絶賛し出す。設定の通りなら、煙が無くなったせいでその後すぐ外敵に滅ぼされる筈なのに……
「大人達がなんか隠してる街で」、「秘密を知りたい少年が」、「ゴミ人間と仲良くなって」、「ルールを破壊する」
これがしたかっただけなのだと思います。
監督の安っぽいアイデアを入れ、「大成功して大絶賛」という結果へ至る事だけを目的に作られているため、各要素が全く接続されておらず、お話としてのデキが非常に悪いと言えます。
もう少し、プロットを練る能力が必要なのかもしれません。
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全体的に、チープで胡散臭い素材を並べて、ご都合主義に沿って作った、監督の作りたいモノを具現化した怪映像
というのが印象です。
新興宗教の洗脳用ビデオにそっくり、と言えば伝わるでしょうか。