劇場公開日 2020年3月14日

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「現実をしっかり描いたダークヒーロー物です」ひとくず バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0現実をしっかり描いたダークヒーロー物です

2021年1月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

前から観たかった作品。気がついたら終わってて、復活上映見つけて、やったー!って感じで鑑賞。

まず作品の感想の前に・・・。
渋谷ユーロスペースでラッキーにも監督のトークショー付でした。知らなかったから嬉しかったです。でも・・・事務所の人が司会進行しないからかな?なんだか盛り上がりにかけました(笑)
観客が参加していーのか?わるいのか?この時節柄しゃべっていいのか?悪いのか?
ここで何をするのか?の説明もなく、かなり戸惑いました。
監督が進行とトークをやられていらっしゃったので・・・気の毒でした。
せっかく渡辺いっけいさんもリモート参加していただいたのに、、、残念感。

・・・さておき。

児童虐待、育児放棄がテーマになってます。オープニングから胸が痛いシーンです。
つらい。辛すぎます。子役の女の子の演技が素晴らしく、オープニングから辛い涙を流すことに。
全編にわたり虐待シーンや暴力描写がありますから殺伐としています。苦手な人はいるんじゃないかな?と思えるくらいに「しっかり」と描いています。子供の泣き叫ぶ声、鬼気迫っていて耳に残るほどです。本当に辛い・・・。
けど、トークショーで監督もおっしゃっていましたが本作品エンタメ作品です。
僕は「傷ついた心を持つ人物の救済エンタメ映画」と名付けたいです。
虐待される子供(だった人も含め)を救うダークヒーロー物と言ってもいいかもしれません。ヒーロー物のカタルシスがあるんですね。困った時にやってきてくれる・・・みたいな。
重罪人、ギャンブル好き、社会不適合者、不労者、コミュニケーション最悪、優しいわけじゃない・・・けど、、、、、ただ一点・・・「同じ痛みを知る」ヒーロー。

同じ痛みを知る人はそれと同じ痛みを誰かに与えてしまいがちになる(確率が高いそうですね)・・・しかし、しかし、あんな想いをさせないためにはどうしたら良いのか?を考え行動することが負の連鎖を止める唯一の方法なんだと思います・・・言うのは簡単ですが・・・本作のダークヒーローはひょんなことからその連鎖を止めるきっかけを得るわけです。

そしてダークヒーローは救い始めます。同じ痛みを持つ子供を。
そして、それはヒーロー自身の救いにも繋がっていっていると思うのです、僕は。過去の自分への救いですね。確かに、まさかね・・・と言うような展開はあります。ご都合展開。けど、これは(きっと)ヒーロー物なんですからいいんです。事実・現実を(辛いけど)より正確に見せるシーン、エンタメ作品の高揚感を得るシーンのバランスがとてもよくできているなぁと感心しました。
児童虐待、育児放棄の事実をこのような作品にして世間に拡げるって監督の考え方は賛同です。目を背けたくなるようなドキュメント映画だったら。多くの方々が「観よう」と思わないかもしれません。足が向かないかもしれません。間口を広げるためにこのような仕上がりにすると言うのは大賛成です。お話としては大変よくできています。ぜひ多くの方々にご覧いただき、スクリーン内に映し出される子供たちが「珍しくない現実なのだ」と言うことを知って欲しいと思いました。

ダークヒーロー(カネマサ)の存在は、もしかしたら虐待を受けている子供たちの願いなのかなぁ?なんて思いました。助けて欲しい、けど叶わない・・・こんな存在がいてくれたら・・・が具現化されたのかもしれません。
もしかしたら、それは僕たちへのメッセージなのかな?とも思いました。救える人が救うべきだと。

劇中でカネマサが学校の先生に言います。
「お前たちは口ばっかで何にもしねぇじゃねーか!お前はこいつん家の電気代払ってやれんのかよ!」と。傍観者、意見者ではなく、一歩踏み込んで行動して救うことが必要なんじゃないか?とふと思いました。僕たちに言ってるんじゃないかと?

残念ながら、2点、気になってしまったことがあります。

1点目、壮絶な子供時代を過ごし乱れた生活をしていたカネマサがなぜ鞠を助けようと思ったのか?そんな心が残っているのか?動機は作品内で描かれていますが、少し足りないかなぁ?って思いました。くずが人を助けるなんて・・・そんなことがすぐにできれば負の連鎖は起きないはずですからね。カネマサが「どういう子供(人物)だったのか?」の根っこの部分を描いて欲しかったかなぁ。
そうすれば、短絡的な方法を選んでしまったが数多くの行動にも説得力が出たかな?って思います。

<<<<<以下、若干ネタバレしますのでこれから観る方は読まないでください>>>>>>

2点目はラストなんですよね。
エンドロールっぽいのが流れた後のシーンは良いです。あれはいいんです。あの親子が見れたことは、カネマサの不恰好だけど注いだ愛の結果です。良かった。でもね、僕が蛇足かなぁ?って思うのはなぜあの人を出したのか?ってことです。
監督はトークショーでは「カネマサはあれで救われた」っておっしゃってましたが、僕は違うかな?って。家族(みたいなもの)が手に入ったことが救いになっていたと思うからです。
頼りにされて、求める物手に入れてさ。
あの涙はなんだったんだ?りんが肩にそっと頭を乗せた仕草はなんだったんだ?って。(「家族にならねえか?」のところですね)監督が泣ける、感動する作品です。って言ってましたが、泣かせるつもりで作った場面なのかなーって思ったらちょいとがっかりしました。もし監督が「泣ける=エンタメ」と言う認識なら勘弁して欲しいかな?って思います。また、泣けるから何回も見てくださいって監督がおっしゃってましたが、なんだろなー、それ求めてたの?って。冷めちゃいましたね。こーすると泣くでしょ?って言われてるようで、冷めます。やめて欲しいです。

まぁ色々書きましたが、観るべき映画だと思います。傑作です。

バリカタ
バリカタさんのコメント
2021年3月26日

あやぱーちゃんさん、コメントありがとうございます。
そうなんですよねー、観る方によって感じ方は違うと思いますが、僕は残念でした。

バリカタ
アヤベさんのコメント
2021年3月23日

はい。あの場面では私も泣けません。それに最後の母親を何故出したのでしょう。おっしゃるとうり

通りだと思います。監督の言葉を聞いてがっか

アヤベ