劇場公開日 2020年2月28日

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「ひとを狂わせるもの」地獄の黙示録 ファイナル・カット andhyphenさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ひとを狂わせるもの

2020年3月6日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

私のようなにわか映画好きにとっては「とてつもなく有名だけど観たことない映画」が大量にあって、当然「地獄の黙示録」もそれにあたる。
で、今回IMAXで観られる機会を得たので行ってきたわけです。
話の筋はもちろん大体知ってはいるが、いや観るとあれね。本当に地獄ね。
鏡を殴って流血する、いかにもやばめなマーティン・シーン(若いな)がドアーズに乗って登場。
そしてロバート・デュヴァルのキルゴア中佐ですよ。強烈だ。戦場にサーフボード!サーフィンするために村を焼き払え!危険ななかで波乗りさせる!よく分からないけどとりあえずガンガンぶっ放す!なんとも趣味の悪い(けど悲しいかな、合ってると感じてしまう)「ワルキューレの騎行」!キルゴア中佐が "I love the smell of napalm, in the morning." って言ったときは「言ったーーーー!」って思ってしまいました。
前半というか、かなりの部分がただただ「戦争の狂気」を見せつけてくるやつ。マーロン・ブランド出てこなくてもこれだけでヤバい映画だな!というくらい、戦場はタガが外れている。制御を失ってしまった兵士たちの姿。何もかもに過敏になりすぎて神経をすり減らし、薬に走る様。
マーティン・シーンのウィラード大尉も冷静そうだけど、既に「取り憑かれて」しまっている。戦場にしか居られなくなってしまった奴。戦争を虚無と思いながらそこから抜けられない奴。
マーロン・ブランドはあれだけしか出てこないのにまじやばかったですね。いやもう...バッチリ映ってるとこほとんどないんですけどね。体型が当初のイメージと違いすぎて物語を変えさせてしまったというマーロン・ブランドですが、色々あっても台詞をひとこと発するだけで世界作るのはやっぱりやばい。戦場で生まれてしまった自分でも制御できない哲学っていうかね...。そういうのは感じた。
なんだか後半に進むにつれてどんどん映画も憔悴してくというか、実際マーロン・ブランドはあれだし、デニス・ホッパーは台詞覚えなかったらしいし、マーティン・シーンも倒れたし(というかそもそも最初の主役のハーヴェイ・カイテルは降板したし)、何もかもが壮絶だわな...。
ちなみにフランス人入植者のシーンは公開時にはなかったそうですね。あそこが一番知識が要るシーンだった。
「映画」として圧倒的に映像で押してくるものを感じた。美しいとか、気持ち悪いとか、怖いとかを超えて攻めてくるもの。物語は正直まとまりがなく散漫な部分も多いのだが、それでもなお「押して」くる。これでもかと。
しかしコッポラは三島の「豊饒の月」読んでイメージを膨らませたって何かで読んだけど、悲しいかなそこは読み取れない私なのであった。
そしてまあどうでもいいですが、戸田奈津子さんの字幕はやっぱり意訳がすごいね。良いとか悪いとか判断できるほどの英語力はないが。

andhyphen