劇場公開日 2020年2月28日

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「この映画において「apocalypse」の意味することと「heart of the darkness」に関する考察」地獄の黙示録 ファイナル・カット もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5この映画において「apocalypse」の意味することと「heart of the darkness」に関する考察

2023年5月29日
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鑑賞方法:映画館

①欧米の批評家の何人かが言っている様に、この映画は前半と後半とがゴロッと違う。前半の、ドアーズの「The End」が流れる中、ジャングルから一瞬にしてオレンジの炎が噴き上がるシーン、ワーグナーの「ワルキューレ(戦死者を選ぶ者の意)の騎行」に載って米軍のヘリ戦隊がベトコンの拠点を攻撃するシーンと、戦争映画の絵としては見事なものである。(中身は無いが。) 特に後者はロバート・デュバルの好演もあってアメリカ軍の傲慢さに胸くそ悪くなるが。②一転、後半は、カーツ殺害を命じられたマーティン・シーンがひたすら川を遡りカーツ殺害に成功するまでを描くが全く前半とは別物のような映画となる。マーロン・ブランド扮するカーツが何故あのような行動に出たのか説明する筈の殺される前の台詞の数々の意味がマーロン・ブランドの台詞回しもあってよく分からない。最後の台詞である『The horror ! The horror !』はその最たるものである。「戦争の狂気」という言葉は何の説明にもなっていない。反則ではあるが、この下りを理解するためにこの後半の元ネタであるジョセフ・コンラッドの『闇の奥』も読んでみた。然し、『闇の奥』自体が難解な小説であることもあり、やはりもうひとつ分からない。ただ「horror」という言葉には「fear(恐れ)」という意味以外に「dismay」「disgust」「loathing」という意味もあるから、単に戦争の表面的な怖さだけでなく優秀な軍人であったのに自分の内なる権力欲・支配欲を暴走させてしまった自戒を含んでいたのかも知れない。何となく本人も死にたいと思っていたようだし。ただ『闇の奥』でカーツ大佐にあたるクルツは病気にかかった結果死んだだけで本人は死ぬ気はなかったから、この当たりはコッポラ独自の解釈かも知れない。③「apocalypse」とは神が黙して語らなかったことを預言者が代わりに語り記録したことを意味する。『Apocalypse Now』とは、この映画の場合「神」が誰を指すのかを解釈するのが難解だが、ベトナム戦争が米国始まって以来の負け戦であったこと、大義のない戦争であったこと、その後米国社会を変質させてしまったこと等当時既に指摘されつつあったことではあるが、コッポラなりにそれを記録しておこうという意志があったのであろうか。④しばらく『闇の奥』のクルツ、この映画のカーツの最後の言葉である「horror, horror」について考えていて自分なりに辿り着いた結論。

もーさん