「40年ぶりの劇場での再観に、当時を凌駕する程の衝撃」地獄の黙示録 ファイナル・カット アンディ・ロビンソンさんの映画レビュー(感想・評価)
40年ぶりの劇場での再観に、当時を凌駕する程の衝撃
当時、70mm版に拘って日比谷の有楽座で鑑賞し、そのあとでエンディングロールが付いた35mm版でも観ている。
しかし当時は、当時伝わってきていた(マックィーンらの)大スター級の俳優の出演は結局叶わず、知名度的に当時まだ弱い感じの、マーチン・シーンとほぼ無名のクルー達に、脇役クラスだったデュバルという出演陣には、正直少々ガッカリしたものだった。
(その辺りの経緯は、例のドキュメンタリーでも語られている)
今回、数十年ぶりのグランドサンシャインのレーザーIMAXでの鑑賞で、その有楽座で初見した時の記憶が蘇ってきた。
改めて観て、CGの無い当時もすごい迫力に(出演者の件を忘れさせる)度肝を抜かれた感が有ったが、ムシロこの現代に観る事で「有り得ない、戦場の完全再現」が実写である事に当時よりも強いくらいの衝撃を受ける。
恐るべき映画であると思うと同時に、アメリカ人というものの傲慢さ身勝手さに嫌悪感を抱く。
そういう「戦場の目撃者」であるように錯覚を覚えさせるほど、恐るべき映画であるということであろう。
ストーリーを知りたいだけならDVDやBD等のホームメディアで十分だろう。
しかし、この映画の本質を知りたいのなら、劇場での鑑賞は絶対の条件であると確信する。
ただ、今回のバージョンは前の完全版程は長くないが、それでも前半の見せ場が余りに圧倒的すぎることからか、後半にかけてがやや間延びというか、緩慢に感じられるフシはあると思った。
もう一つ、今回の版もエンディング自体は(70mm版と違って)付いているものの、当時の35mm版にあった「カーツ帝国の(爆撃による)徹底破壊」映像がその背景に映し続けられる部分は使われていなかった。
個人的な印象では、シンプルで手堅く(資金を出資したヘラルド映画の意向で)シェイプしてまとめられていた「初公開版」も捨てがたいと思った。
更に細部を徹底して知りたい向きには、むしろ完全版も是非どうぞと言ったところか?
今回の版はその中間をいく感じの、良いとこどりといった趣向のようです。
これが「劇場での初体験」という方にとっては幸せなこととも言えそうです。