「態度保留にさせてください。」スキャンダル といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
態度保留にさせてください。
映画の面白さとは関係ない部分で、強烈に違和感を感じる場面が多々ありました。
その違和感を感じた場面が「実際にあったこと」なのか「映画上の創作」なのかが分からなかったため、私は現時点では本作に点数を付けることはできません。色々調べましたが目当ての情報を探すことができませんでした。
ただ、映画としては非常に面白く、楽しんで観ることができました。
「女性」というだけで下に見られ、性的対象として消費される機会が多かった女性ニュースキャスターたち。虐げられてプライドを踏みにじられた彼女たちが、世論を動かすほどの巨大な存在であるFOXニュースCEOのロジャーに反撃するというストーリー。取り扱っているテーマは非常に重いものですが、意外にも冒頭から軽快なテンポや演出で展開される物語はエンタメ性の高いものでしたし、虐げられてた女性たちのジャイアントキリングは映画的カタルシスを感じられ、気楽に面白く観ることができる内容でした。
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2016年に実際に起こり、「Metoo運動」のきっかけになったとも言われるFOXニュースのセクハラ事件を題材とした映画。アメリカ最大手のニュース専用ケーブルテレビ局である「FOXニュース」。かつて看板番組でメインキャスターを務めていた経験もあるグレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)が、CEOのロジャー・エイルズ(ジョン・リスゴー)をセクハラとそれを拒否したことによる左遷があったとして提訴した。
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私は実話を基にした映画の中で、必要以上に悪を悪として描くのは苦手です。特に既に亡くなった人を悪く描くのは強烈な嫌悪感を抱きます。
過去にレビューした冤罪をテーマにした映画『リチャード・ジュエル』でも、一番最初にリチャードに嫌疑をかける報道をした女性ジャーナリストを「CIA捜査官へのまくら営業で情報を入手していた」という描き方をしていることに対して私はかなりの嫌悪感を抱きました。何故なら彼女は既に亡くなっていて、尚且つ彼女が所属していた新聞社はまくら営業による情報収集を完全に否定しているからです。「死人に口なし」と言わんばかりの描写で「死人に鞭打つ」行為だと思いました。『リチャード・ジュエル』は映画自体は楽しめたのですが、どうも実在の人物を描くにあたっての配慮に欠けた映画に思えてしまって私は苦手です。
本作もとにかくロジャーをはじめ、登場する男性キャラクターたちが酷くステレオタイプの「男尊女卑思想」を持っているように描かれているのが非常に気になってしまいました。色々調べてみたのですが、これが実際にあったことなのか映画上の虚構なのかが判断できる情報がありませんでした。ロジャーに関するニュースを見ても裁判の中でセクハラを否定しているようですし、しかも2017年にはロジャー本人が亡くなっていますので、本作はあくまでも被害者女性たちへの取材によって作られた映画です。
私にはどうも、本作が『リチャード・ジュエル』のような「死人に鞭打つ映画」に思えてしまって、純粋に楽しむことができませんでした。
今しばらくは本作は評価せず態度保留とします。