「のろしを上げる者の覚悟とリアル」スキャンダル ニコさんの映画レビュー(感想・評価)
のろしを上げる者の覚悟とリアル
実話をベースにした映画には、元の出来事や登場人物をどれだけ知っているかで面白味が左右されるものがある。当時の報道で訴訟の顛末自体は大まかに知っていたが、FOXニュースの元々の報道姿勢やモデルの人物の顔立ちはあまり知らないまま見た。
カズ・ヒロ氏がオスカーを獲得したことで、実在の人物に寄せるため特殊メイクが用いられていることが話題になったが、ELLE JAPANの記事によると主役の3人以外も実在の人物はことごとく風貌を寄せてある。こちらは特殊メイクかそっくりさんかは知らないが。アメリカではこの寄せ具合が実感出来る分、この作品の楽しみ方が少し違うものになっているのだろうと思うと何となくもどかしい思いがした。
予告映像で3人がエレベーターに乗り合わせる場面が流されたせいか、もっと共闘するイメージがあったが、互いの行動に感化されたりする場面はあるものの、実際はほとんど三者三様の行動を取っている。また、同じ社内の女性達でも、異論を唱えることへの恐怖から沈黙する者、テレビ界の帝王に隷従することで得られる地位を重視する者、家族や生活を一番に守りたい者と様々だ。これらの描写でむしろセクハラの構造の根深さ、「ファーストペンギン」となって問題と対峙することに要する途方もない勇気とエネルギーを想像することが出来た。
決着の仕方から考えて何故映画化されてるのかと思ったら、町山智浩氏によると映画制作にあたり登場する実在の当事者の許可は取っておらず、訴訟上等で作っているそうな。本当だったらアメリカすごいな。
追記 映画の感想を自分のイデオロギーの表明文にしてしまうタイプの作品で、「映画の」レビューとは何だろうと(勝手に)考えさせられた。そんなの自由でいいんだけど。