「これは今のリアルではない」老後の資金がありません! てつおさんの映画レビュー(感想・評価)
これは今のリアルではない
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端的に言うと感情移入が出来ませんでした。
その理由ですが、この物語は中流の中か上くらいの階級の家族を描いています。
しかし、コロナ禍以降の日本の現状にはそぐわない点がいくつかあります。
具体的には、失業した際に「景気が良くてどこも人手不足だから仕事なんてすぐ見つかるだろう」や「50代で700万しか貯金がない夫婦なんて他にいるのかしら?」といったセリフが登場人物の口から語られます。
持ち家があって700万の貯金があるなんて、今の若い世代からすれば夢物語です。
子供も自立している、もしくは自立が近い。
次に義両親の入っていたケアマンション。
入居金3000万+月の費用20万ほどと言いますが、これは高級といわれるランクの老人ホームです。
それだけのお金を自分で払える義親がいて、両親は自分の蓄えで好きに暮らしている。
はっきり言ってしまうと、これはかなり恵まれたケースです。
少なくとも、タイトルにあるような切迫つまった感じではない。
そういった事もあり、共感は出来ませんでした。
そして気になったのが、私が鑑賞した回はほぼシニア層の観客ばかりだったのですが、劇中の様々なシーンで笑い声がよく聞かれました。
コミカルタッチな映画なので、それはそれで制作側の狙い通りなのでしょう。
しかし現役世代からすれば、失業、親の介護、葬儀の費用負担、それらを巡る兄妹(きょうだい)間の確執などはすぐそばにある問題であり、私は観劇中まったく笑えませんでした。
世代間の格差と認識の違いを改めて感じさせられる2時間でした。
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