「良作なオムニバスアニメです。」どうにかなる日々 スキピオさんの映画レビュー(感想・評価)
良作なオムニバスアニメです。
原作が志村貴子の漫画って時点で、満貫確定なんですが、監督も百合アニメの名手、佐藤卓哉(あさがおと加瀬さん、フラグタイム。来年は裏世界ピクニックもやるんか〜)で、ハネマン確定。声優が花澤香菜、みかこし、ファイルーズ、早見沙織、石原夏織、とドラが5枚。あ、木戸衣吹って久々だな〜、裏も1枚乗って、数え役満かな〜。
とベタ褒めですが、地味な作品です。これといった盛り上がりはない、4本のオムニバス。全編でも1時間弱の短い作品です。
百合、BL、従姉妹のお姉さん、幼なじみ、の軽かったり重かったりする恋愛もの。心情描写は絵だけで、セリフも最小限で静かな作品。志村貴子の漫画の雰囲気のまんまです。
別に百合でも、BLでも、従姉がAVにでたことも、幼なじみと中二でベストカップルに選ばれたことなど、自分人生では経験がないのに、なんだか懐かしくも切ない気持ちになります。
観ていながら、セリフと行動の間の心情を勝手に補完しているので、そんな気持ちになるのかな、と思いました。あ〜、絶対にこう思っているのに、真逆のこと言っちゃうんだな、とか、だからここで振り返ってしまうわな、とか。
逆にセリフと行動だけを観て感動できる作品ではないので、そういうつもりで観ると、「で、どこで感動すれば良いの?」となってしまうかも。
以下はネタバレ込みのエピソード毎の感想。
1.えっちゃんとあやさん
映画が始まる前に特典映像で声優の対談が5分あります。そこからの、ガチ百合エピソードなので、ちょっと悶々します。みかこし×花澤、この順で合ってたっけ?、として脳内補正してもよし。
みかこしが言っていた通り、成り行きでそーなった後の初デートの「探り探り感」が萌えますね〜。お互いの元恋人の悪口をネタにして、ちょっと踏み込もうか、引いておこうか、って距離感のとり方が、う〜っときます。お互いの元カノが早見沙織って豪華すぎ。
2.澤先生と矢ヶ崎くん
ちょっと難解なエピソードですね。澤先生にとっての「理想」は矢ヶ崎くんのような美高校男子なんでしょうが、「現実」は?ってメタファーが姉の住む元「連れ込み宿」なんでしょうかね。理想男子とワンワンで恋がしたい一方、現実は不特定多数が出入りする「連れ込み宿」=「男子校」でわちゃわちゃする程度で満足するか、って感じかな?
そう思うと、ラストで生徒たちと元「連れ込み宿」へ向かうのが、笑えますよね。
3.しんちゃんと小夜子
次の「みかちゃんとしんちゃん」に繋がる2部作です。ストーリー的な部分は後段で語るとして、この時代設定が昭和な感じで良いですね。AVがVHSのビデオテープって、古いわぁ。90年代ですかね。子供部屋が風通しがよく、お母さんが「ここは涼しい」というシーン。個々の部屋にエアコンがない時代。80年代終わりか90年代って設定なのかな〜。
あと、木戸衣吹が男の子役。3では小学5年生なので、時々、女の子っぽい甲高い声になる。でも4では中2で変声期が終わった設定なのかな?そこを演じ分けているのが上手かった。
4.みかちゃんとしんちゃん
小学5年から中学2年の男女の成長がテーマですかね。
みかちゃんは、小5時代は割と大胆で、ぐいぐいとしんちゃんを引っ張って翻弄する。小夜子への対抗心で脱ぎ出したり、3の最後に「実は寂しかった」というしんちゃんに対して「何の話?」とピシャっと言い切る強さですね。一方で、中2になると、しんちゃんの事が気になり過ぎて、弱々しく不安でいっぱいに。
逆にしんちゃんは、従姉の小夜ちゃんとみかちゃんの間で右往左往していた小5から、みかちゃんにヤキモキさせる色男になる中2へと成長する。小学生の頃は思いっきり意識しているのに、中学生になると「ただの幼なじみだし」的な態度になる。
この辺りって、男女の思春期の迎え方の微妙な差で、この年代を取り扱う作品の一番面白いところ。これが高校生になると、お互いを意識し合うので噛み合うのかな。
まあ、本作ではちゃんと中2で意識があってハッピーエンドでしたがね。
公開初日の朝9時の回って、どんだけ楽しみにしてんだ、ってがっつきで観に行きました。