うたのはじまりのレビュー・感想・評価
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うたの始まりはコミュニケーション願望?
うたは好きなのでタイトルに惹かれて鑑賞、音楽映画かと思ったら、なんと難聴のため音楽が理解できない主人公が子育てを通じて子守歌に目覚めるまでのドキュメンタリーでした。
聴覚障害と音楽だとベートベンの逸話を真っ先に思い浮かべてしまいます、今時のことは不勉強なので障害者プロレスのチャンピオンで、写真で数々の賞をとっている名カメラマンで自身の体験のエッセイストでもある齋藤陽道さんのことは本作で初めて知りました。
うたの始まりはコミュニケーション願望だろうということは分かりました。
驚いたのは主人公のバイクシーンと奥さんの出産シーン、調べてみたら平成24年4月の道路交通法の改正で聴覚障碍者でも二輪免許取得可能になったんですね、出産シーンをあれほど露骨に撮るのはプライバシーの侵害にしか思えませんでした、ひどい監督です。反面、良かったのは、通常の字幕に加えて音楽シーンでは作家・小指が音楽を色彩で表現した絵「SCORE DRAWING」を添える発案とシンガーソングライーターの七尾旅人さんが主人公の家で子供にギターを弾きながら語り掛けるシーンは良かったですね、七尾さんを引き合わせたのは、河合監督がかって七尾さんのライブ映像を撮っていた事からの繋がりでしょうね。
・出産の現場を初めて見た。ろう者同士の出産というのも興味深くて、思...
・出産の現場を初めて見た。ろう者同士の出産というのも興味深くて、思わず魅入った。
・障害者プロレスの迫力ぱない。教会みたいなところで賛美歌BGMにしてプロレスやる神秘性というか芸術というか…古代ギリシア感を感じる。1度は生で見てみたい。
・絵字幕、面白いし綺麗だったけど、これどれくらい忠実なんだろうか。ろう者がみたときどんな感想を持つのだろうか。
・障害、健常関係なく友達がいて関わりあっていることの大切さを改めて感じた。
・シンガーソングライターの歌が、なんかとてもよかった。
・「ろう者と音」はもっともっと深く考えられるテーマで、沢山の投げかけがあったけど、私の中で消化しきるのが少し難しかった。論理的に考えたいところなのに、感情が先に出てきてしまってそれがごちゃごちゃノイズになってダメだった。これはレビューというか、ただの私の問題ですが…!
耳が聞こえないカメラマンの子育て
うたは、コミュニケーション
「音」を「見る」
興味深い映画だ。
ただ、題名にこだわるのも変だが、この題名でなければもっと素直に楽しめたかもしれない。
作品のコンセプトに係わるからだ。
とはいえ、観客を呼ぶには良い“キャッチー”な表現だ。
冒頭の出産シーンは、スゴい。
上映後の夫人のトークによれば、「あたりまえのこと」だし、「自然な流れで撮ってくれたので、深い考えはなく」、「とても良いシーン」とのこと。
また、格闘技のシーンもある。
全体的にみて、題名が内容を表しているとは、必ずしも言えないと思う。
子供を「子守歌」で寝かしつけるシーンは、この映画のハイライトだろう。
必要に迫られ、コミュニケーションの道具として、飛び出してきた「うた」。
ただし、齋藤さんは、先天的に聞こえないので「音」はただの振動だとしても、全く「うた」を知らないわけではないようだ。
自身の“声”をどう把握しているのか分からないが、少なくともリズムや抑揚は、子供の頃にイヤイヤながらでも叩き込まれているらしい。
「音」と「うた」との微妙な関係。
だから自分はこのシーンを見て、「うたのはじまり」とも“原初的な衝動”という感じも全然しなかった。
作品としては、そこに観客を誘導したがっているのは、もちろん分かっているつもりだが、「うたへの“興味の”はじまり」と表現するのが正確なはず。本作の題名が腑に落ちない理由である。
「必要は発明の母」と言うが、子供を寝かすためには、好き嫌いを超えて、「うた」と“和解”せざるを得ないところが微笑ましかった。
自分としては「歌にはリズムが不可欠なのか」という、当たり前かも知れないことに気付いて、そうか~と唸ってしまった。そういえば、特にメロディーのない詩や短歌でさえリズムがある。もちろん、“ラップ”も。
また、ダンサーを撮影中に、齋藤さんは音が何だか分かったという。
「音を見る」。
実際は、無音状態で踊っていたのだが。
聴者にとっても刺激的なテーマだ。
自分は「絵字幕版」を見たが、作り手にとって、かなり思い入れのある手法のようだ。
「音を見る」ための変換装置だが、別の絵描きなら別の絵を描くはずで、絵描き個人の感性によるところが大きいと思った。
もしアートではなく、聾者に対するコミュニケーションの道具として使うなら、まずはリズム記号を伴った共通言語を作った上で、複雑さを表現する工夫が必要ではないか。
齋藤さんの知り合いの音楽家が、音楽は「栄養」だと語っている。
自分は、その「栄養」が存在しない世界は想像できないが、そういう世界を垣間見させて考えさせる作品だと思う。
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