ステップのレビュー・感想・評価
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映画の持つ力
ハンディキャップを題材にするズルい型であり、散々使い古されたものでもあるが、実際には2つとない物語でもある。
そしてこれはどこの家庭でもあり得ることで、しかしそれはどんなにシミュレーションしても経験しなければわかりようのないことでもある。
つまり、誰にとってもそれは絶対したくない初体験として捉えなければならないのだ。
恵まれた環境という設定が割と変哲のない感じを与えるが、この環境設定に余計なハンディキャップを加えると物語がぶれてしまうのだろう。
加えて聞き分けのいい女の子という設定もこの作品がどこを向いているのか明確にしている。
この作品はトモコが亡くなった。ただそれだけのことに的を絞っている。
冒頭に表示されるタイトルのステップのテロップは、あの坂道に沿って、その坂道が主役でもあるかのようにひっそりと遠慮がちに映し出される。
そして思い浮かぶのが、「道のり」とかそのまま「坂道を上る」とか、父娘二人のこれからの歩みを暗示している。
やがて物語の中盤に語られる「ステップ」とは、ステップファーザー、マザーという血のつながっていない関係を指す英単語として再登場し、もう一歩的が絞られる。
この作品のなかに健一の両親は登場しない。その代わり妻側の両親や息子夫婦が多数登場する。
彼らは真摯に健一親子の力になろうとするし、彼の再婚の後押しまで演出してくれる。
そして再婚相手はもちろん美紀と血のつながりはない。
この作品が訴えているのがこの「ステップ」、血のつながりがなくても強い信頼性を築くことができるということだろう。
そしてその境界線を勝手に引いているのは、自分自身だということへの気づきだ。
小学校で母の日に描く母の顔。担任はそのことで健一に相談するが、健一は娘が嘘をついているとは思えず、担任の考え方がどうしても受け入れられない。
意外なほどトモコに似ているコーヒーショップの店員にお願いして美紀と遊んでもらう。
健一は担任からの手紙をそのままコーヒーショップに置いたままにしたが、どうしても文句が言いたくて連絡先を知るためにそれを取りに行ったが、たまたま手紙を店員が読んでいたことでそのようにお願いしたことで、よけいな文句も言わずに済んだ。
そのことさえも、関係ない人からいただいた貴重な援助だ。
トモコが亡くなってからまだ日も浅いとき、健一は義父母から気を使われることにどうしてもなじめず、「何か引っかかる」と繰り返し呟いていた。それがいつか、他人行儀にしていたのは自分自身だったと気づくのだ。
上司からのたびたびの誘いと営業部復帰の打診も、彼の周囲の支えを群像表現している。
その自分で勝手に引いた境界線が、「関係」のあるなしを決めているのだと、この作品は伝えているのだろう。
保育園のケロ先生も二人の家庭事情を深く鑑みお世話していたことは、健一にも重々伝わっていた。そういう良き人たちに支えられて自分たち親子が立っていられるということを、異動で営業に戻り、「家庭」というものが一体どういう場所なのかを仲間でブレインストーミングしている機会に、健一の意見によってよく表れている。
やがてトモコの死から10年が経ち、心の余裕からか健一にも気になる人ができた。
そのナナエを母としてどう受け入れればいいのかという美紀の問題が始まるが、賢く聞き分けのいい美紀は彼女なりに思案を繰り返しながら受け入れていく。
美紀も自分でその境界線を引いていたことに気づいたのだろう。
健一のセリフに「悲しみも寂しさも消えない。でも乗り越えていくべきものでもない。付き合っていくべきものだと僕たちが生きてきた日々が教えてくれた」というのがあるが、この健一の言葉こそが作品が訴えていることだろう。この言葉のためだけにこの作品があるのだろう。
使い古された型ではあるが、個々人からは永遠のテーマだろう。勝手に境界線を引いて何もかも一人で抱え込む必要はないし、誰かが手を差し伸べてくれる時にはお世話になっていい。これは未だに日本人が苦手なことであり、これからの日本人が受け入れていく必要のあることなのだと感じた。
シミュレーションなどできないからこそ、映画の力があると思う。
良い作品だと思う。
⭐︎4.2 / 5.0
二人の子役が可愛くて、お父さんと仲良く暮らす様々な感情を上手く演じ...
泣きすぎて頭痛い…
わたる世間は福ばかり
優しさに包まれた父と娘の成長物語
全編、優しさに包まれた、シングルファーザーと一人娘の心温まる成長物語だった。父子に寄り添い成長を見守るという視点で、非常に丁寧に物語が進行していくので、じっくり作品と向き合うことができる。騒然としたコロナ禍の現代を離れて、心和やかに、心穏やかになる秀作である。
本作の主人公は、武田健一(山田孝之)。彼は30歳で妻に先立たれるが、妻の両親の申し出を辞退して、シングルファーザーとして一人娘の美紀を育てる決心をする。彼は、様々な困難に直面しながらも、周りの人々に支えられ、懸命に子育てに邁進していく。やがて、美紀は逞しく成長し、子育ても一区切りついたかに見えた時、父子にとって避けては通れない試練が訪れる・・・。
物語は、美紀の2歳~12歳までを描いている。様々な出来事が起きるが、敢えて劇的な展開にせず、淡々と進んでいく。どの出来事にも明確でスッキリした回答は用意されない。父子に寄り添って、父子の成長を見守っていくという姿勢で貫かれている。父子の人生の一片を切り取って観ている雰囲気になる。それぞれの出来事を丁寧に描いているので、父子の想いにじっくり感情移入ができ、父子の想いが心に深く浸透していく。
試練のところでは、父子の想いはなかなか噛み合わず、父子関係はギクシャクするが、ここでも、父子に寄り添い、父子が成長するまで、ゆっくり父子の成長を見守っていく姿勢は変わらない。
國村隼、余貴美子など、脇を固める俳優陣は芸達者揃いであり、作品に落ち着きを与えている。美紀役は3人の子役が担当している。違和感なく2歳~12歳の美紀を演じ切っている。3人もの子役を揃えて、美紀の心情を丁寧に描こうとする作り手の意気込みが伝わってくる。
最近、複雑で劇的なストーリー展開の作品が多いなかで、本作は対極にある作品である。
派手さはないが、じっくり向き合うことができる。じっくり味わうことができる。じっくり感動に浸ることができる作品である。
自分に置き換えて考えてしまう
優しさが溢れてた。
現実に寄り添いながら、今を精一杯生きる
若くして妻を亡くし、父親1人で娘を育てる状況の葛藤。
死はいつかは必ず来るものであると改めて思った。
そのいつかが分からないからこそ、今を思い残すことなく生きることが大切だと感じた。
夫からすると、妻を亡くしたこと、会社で思うようなことができなかったこと。
娘からすると、母が小さいころから自分だけいないこと、新しい女性が家族に入ること。
義親からすると、娘を亡くし、息子夫婦には子宝には恵まれなかったこと。
このように、生きているうちには、何が起こるがわからない。
しかし、何が起こったとしても、現実に寄り添いながら、時間をかけて受け入れることが必要だと思った。
特に、娘が新しい女性を母と呼んだことや、義父が危篤のシーンは感動した。
生きていると何が起こるか分からないから、何が起こっても現実を受け入れ、
どこかで死が来るから、思い残すことなく、今を大切にしようと思わせてくれた。
感涙した。
よくできていた
自分と重ねて、将来を想像できた
男も泣く映画 家族大切にしようと思う映画
#山田孝之 あんた何やっても最高だよ!
#広末涼子 私が好きな役者ばっかり揃えてる映画!
#國村隼 全裸監督に出てましたよね⁉︎
#伊藤沙莉 あなたも全裸監督出てましたよね⁉︎
泣ける映画なのに全裸監督でも共演してるメンバーがいるから、ブリーフ一丁の山田孝之や顔にビニール袋を被せられる山田孝之がフラッシュバックする笑
冗談はさておき、
私も子供が二人いる父親です。4歳と1歳。そして、奥さん。
自分は恵まれてると感謝したくなる一作でした。(シングルが恵まれてないという意味ではありません。)
健康や、当たり前の日常は実は当たり前じゃないと気付かされました。
シングルで子供を育てる逞しさは胸にきました。
もし、自分が同じようにシングルファザーだったらと想像すると、、本当に辛いと思いました。
どうしたらいいか分からないことだらけで頭を抱えるでしょう。
この映画は家族に立ちはだかる困難を一歩ずつ乗り越えることを教えてくれる。
うちは夫婦間の考え方の相違で時々揉めます。揉めても良い。一緒にいてくれるだけで本当は幸せなんだ。
私は4歳の息子と一緒に寝てます。息子は私の布団や枕を占領してきます。そのせいで寝不足になることも。でも可愛い寝顔を見ながら一緒に寝れるのは今だけなのだろうとも思う。
この映画を見て何気ない家族の一瞬一瞬を大切にしたいと思いました。
そして、奥さんの両親や兄弟にも、もっと心を込めたいと思いました。
お世話になった同僚や上司にも真心を込めたいと思いました。
あと個人的にこの映画のGOODポイントは奥さんは死んでも、いつも家族を見守っているんだというのを強調している箇所や山田孝之が死んだ奥さんと対話している箇所はとても大事である。
人は死んで、焼かれて灰になって終わりじゃない。
永遠の生命がある。
それを映画全体を通して、一貫して表現してくれたことに感謝。
仕事も家族も諦めない。親父の意地。
最高の一作に巡り会えた。
本当にありがとう。
映画って最高だよ。
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