「太平洋、血に染めて…。 まるでSFのようだけれど、これってたった80年前に本当にあった出来事なんだよなぁ…。」ミッドウェイ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
太平洋、血に染めて…。 まるでSFのようだけれど、これってたった80年前に本当にあった出来事なんだよなぁ…。
1942年6月4日から7日にかけて行われた、日本海軍対アメリカ海軍の死闘「ミッドウェー海戦」を、日米それぞれの参加者の立場から群像劇的に描いた戦記映画。
監督/製作は『インデペンデンス・デイ』シリーズや『デイ・アフター・トゥモロー』のローランド・エメリッヒ。
航空母艦「エンタープライズ」の艦上戦闘機隊指揮官、クラレンス・マクラスキー少佐を演じるのは、『ワイルド・スピード』シリーズや『美女と野獣』のルーク・エヴァンス。
アメリカ海軍太平洋艦隊司令長官、チェスター・ニミッツ大将を演じるのは『ハンガー・ゲーム』シリーズや『グランド・イリュージョン』シリーズのウディ・ハレルソン。
日本帝国海軍連合艦隊司令長官、山本五十六大将を演じるのは『20世紀少年』シリーズや『3月のライオン』の豊川悦司。
日本帝国海軍第二航空戦隊司令官、山口多聞少将を演じるのは、『ステキな金縛り』『マイティ・ソー』シリーズの浅野忠信。
日本帝国海軍第一航空艦隊司令長官、南雲忠一中将を演じるのは、『ちはやふる』シリーズや『シン・ゴジラ』の國村隼。
アメリカ陸軍航空軍、ジミー・ドゥーリトル中佐を演じるのは『ダークナイト』『ハドソン川の奇跡』のアーロン・エッカート。
早速余談ですが、監督のローランド・エメリッヒってドイツ人なんですね。
『インデペンデンス・デイ』のイメージがあるので、てっきり共和党を支持するゴリゴリのアメリカ人かと思ってました。
つまりこの映画、🇩🇪ドイツ人監督による🇨🇳中国資本で作られた🇺🇸ハリウッド制作の🇺🇸🇯🇵太平洋戦争映画なんですね。
第二次世界大戦中なら絶対に考えられない座組みだな、と思っちゃいました。
それだけ平和になったということでいいのかな?🤔
「アメリカ&中国の作った太平洋戦争の映画なんか、日本人の俺が楽しめるわけないだろっ😤」
とか思ってましたが、アクション映画として普通に面白かった(^^)
個人的に太平洋戦争の知識が全くないため、事実と違う点が気になるとかそういうのは全くないです。
むしろ、ミッドウェー海戦のことがぼんやりとでもわかったので勉強になった。
日米合わせて3000人以上の戦死者をだした、これ程大きな戦が、僅か80年前の出来事だとは…😨
戦闘機や空母などはCGで描かれており、ここにはちょっと違和感。結構CG感が強めなのでリアリティにかける。
とはいえ、空戦や海戦の迫力は抜群。2時間以上ある上映時間で退屈なところは一つもなかった。
ハリウッド作品なので、当然アメリカの立場から戦争を描いているのだが、山本五十六や山口多聞、南雲忠一といった日本海軍もしっかりと描かれている。
日本人俳優たちの抑制の効いた演技には現実味があり、彼らの描き方は日本人の目線から見ても違和感はないんじゃないかな、と思います。
トヨエツが山本五十六というのは意外なキャスティングでしたが、見事に演じ切ってましたね。始めは彼だと気づかなかった。
東京の空襲を知った五十六が、陛下の身を危険に晒したことで自責の念に苛まれるシーンを入れていることにはけっこう感心。実際にもこういうことあったんじゃないかな、と思わせるリアリティがあった。当時の軍人心理みたいなものを色々と研究したんでしょうね。
日本側の描写が予想以上に良かったのに対し、アメリカ側の描写はちとテンプレ。
主人公格であるエースパイロット、ディック・ベストの活躍が描かれるわけだが、1人の英雄の活躍が戦争を勝利に導いた、というのは現代の価値観からするとちょっと古いかな、と感じてしまう。
ディックの西部劇気取りなパイロットというキャラクター像は面白い。ただ、描かれるディックの苦悩や家族の描き方がかなり薄っぺらく、いかにも戦争映画の英雄だなぁ、という感じがしてしまった。
ディックだけでなく、この映画の人間ドラマは総じて薄っぺらい。パールハーバーで戦死した友達とか、もっと掘り下げても良いんじゃ。その復讐がディックの原動力になるわけだし。
自信を失って飛ぶのを恐れている兵士が墜落して死んじゃうシーンとか、ポッと出てきたキャラクターだったから悲しみとか全然なかったなぁ…。
映画の構成が群像劇なので、いろいろなキャラクターが登場する。
『プライベート・ライアン』でも感じたのだが、軍服を着たアメリカ人の顔ってみんな一緒に見える…。これって私だけ?
日本側は着目する人物を3人に厳選していたのだから、アメリカ側もフィーチャーする人物をもっと絞ったほうが、映画がスマートになっていたと思う。ドーリットル中佐とか、別に出さなくても良かったよね。
映画監督の押井守が、『1917 命をかけた伝令』を語るという趣旨のインタビューで面白い発言をしていました。
彼曰く「戦争映画のことをアクション映画だと思ってしまっていること自体が間違い」だというのです。
また、戦争映画には人間ドラマを描くことは不要だと述べています。
押井守曰く、戦争映画には「戦場の緊迫感」と「兵士が戦場にいる時に感じた重たい時間」の2つが揃っていないとダメなんだそう。
「戦場の緊迫感」だけを描き、戦場の兵士が感じたであろうリアリティを描くことを疎かにするとただのアクション映画になる、というような事を語っていました。
これに当て嵌めて考えると、本作は「戦場の緊迫感」はしっかり描けているが、兵士の感情や彼らが体験したリアリティなどは描かれていない。
アクション映画としては合格だと思うのですが、本作を戦争映画として見た場合、やはり名作とは云えないよなぁ、というのが素直な感想です。
スカッとするアクションがみたい人にはおすすめ出来るかもしれませんが、やられてるのは日本兵だしなぁ…。いろんな意味で微妙な作品です。
※日本軍の暗号「AF」がどこを指しているのか解読している時、「真水」がどうたらこうたらなので「ミッドウェー」に決まり!というやりとりがあり、何のこっちゃ?と思ったのですが、その後調べてみて納得。
「AF」が「ミッドウェー」であることに目星をつけていたので、
・ミッドウェー→ハワイに「海水ろ過装置が壊れて水不足」というメッセージを平文で送信。罠を仕掛ける。
・これを傍受した日本軍が「AFは真水不足」という暗号を送信する。
・これをアメリカ軍が傍受したことにより、「AF」=「ミッドウェー」が判明。という流れだったのね。
※中国資本で作られている映画ではありますが、日本人が必要以上に残虐に描かれているとか、そういうのはあまり無いです。
とはいえ、何点か気になるところも…。
・ディックが戦闘機から日本の空母に爆弾を落とすシーン。わざわざ日の丸の真上に落とさんでも…。
・捕虜となった米兵が錨に繋がれて海に沈められるシーン。ここ、ただ日本兵の残虐さを強調するためだけの、全く必要のない描写だったと思う。実際、捕虜となった米兵オスムスが何者かに斬殺されるという事件があったらしいので、史実をもとにしているといえばそうかもしれませんが…。
・ドーリットル中佐が初の本土空襲を実行し、中国に降り立った後のシークエンス。完全にここは蛇足。日本が民間人を狙って爆撃しているというやり取りがあったが、その直前にあんたも無差別爆撃をしとるやないかいドーリットル中佐。
この辺りはちょっと気になるかも。右翼思考の人なら怒っちゃうかもね🙄
共感ありがとうございます。
視野の広い公平で中立なレビューですね。
偉そうにすみません。
とても面白くて為になりました。
この映画、映画間で観たのですが、とても面白くて飽きませんでした。
確かに日米公平に描くとか、無理ですものね、中国資本も入って、
でもエメリッヒ監督がドイツ人だからか、日本には好意的に感じました。
戦争エンタメみたいで、痛みに震えた
「硫黄島からの手紙」の描く戦争映画とは別物でした。
たなかなかなかさんへ
はなから「戦争アクションです」「エンタメです」って言ってくれれば良いのにw
「20年かけて史実調べました」とか、ちょっとなぁ、と言うミリヲタ/戦史ヲタのグチですね....
スンマセンでした!
たなかなかなかさんへ
右翼思想で無くっても、ミリヲタは怒ってますよ。戦闘シーンがリアリティ無さ過ぎなのでw
私は「戦争映画は反戦映画であるべき」、少なくとも「ヒーロー映画にしちゃダメ」だと思っているミリヲタなので、更に憤慨中w