子供はわかってあげないのレビュー・感想・評価
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タイトルに意味に気づいたとき、物語はより濃厚に変化する!!
ある日、手紙が届いた。それには直接的なことは書かれておらず、差出人もよくわからないような状態だったが、 美波にはそれが幼い頃に別れた父親からのものだと直感でわかったものの、名前も住所も書かれていなかった。
その手紙をきっかけに、実の父親を探すことになるわけだが、実はここにタイトルの意味が活きてくる部分があって、そもそも『子供はわかってあげない』というのは、タイミングのことではないだろうか。
そんな父は住所も書かずに、「会いたい」とも書いていない。もちろん本音としては、娘に会いたい気持ちはあるが、それをストレートに伝える勇気もない。だからこそ、まさか会いに来ないだろうと思い、会いたいけど伝えられない気持ちを感覚的に謎の手紙を出してしまったわけで、ある種の自己満足だったのかもしれない
しかし、美波は会いに来てしまった…嬉しいのは大前提ではあるが、一方で心の準備ができていない部分もある。つまり子供というのは、大人の心の準備ができるのなんて待ってくれずに、成長するし、行動してしまう。
これは父の視点だけではなく、一緒に暮らす母の視点も同じことがいえる。
親にとって、子供というのは、いつまでたっても幼いイメージがあったりするわけで、そんな中で成長した姿を見てしまうと、心の準備ができておらず、思わず涙を流してしまうことがある。
親の目線から『子供はわかってあげない』ということではないだろうか。それに気づくとこの作品が、子供の成長を見守る物語であると理解ができるのし、実は冒頭のオリジナル劇中アニメの中にも同様のメッセージが含まれている。
上白石萌歌のふんわりした雰囲気を活かした主人公・美波と、周りのくせ者揃いな登場人物たちとの掛け合いが、脱力感もありながら、独特の世界観が展開されていて、その中で家族愛や青春も、独自のペースで描いてみせた。
スクリーンは間違えていません
いきなりアニメがスタートしたので、やばい、スクリーン間違えたかも、、、と思ったのは私だけでは無いはず。
ストリートを文字にすれば意外と単純な話だけど、とても独得な長回しの演出と、アドリブなのかセリフなのか分からないのが、映画らしい映画でよかった。
正直、無駄なシーンも多く、ちゃんと編集すれば30分くらいは短くなるかと。ただ、無駄と見るか、余白と見るかは微妙で、余白があるのでとても日常っぽさが出て良い。
また、微妙なすれ違いや勘違いなど、何度もクスクス笑ってしまう。
同時に、後半のあのシーンは泣いてしまうね。
細田君も良かったけど、
とにかく、上白石萌歌一色も言っても良いかも。ケタケタ笑うシーンや、大粒の涙、照れるシーンなど、ファンは必見。
少女っぽさと少年っぽさが混じった魅力満載。
人生、こうではない。
ひと夏の思い出…期待を裏切らない作品!
予告編を何度か見ていて、インパクトがあったので鑑賞したいと思っていたが、なんといつの間にか8月下旬に差しかかっている。本来の公開予定日がずれ込んだためである。かなり待ちくたびれたのだが、その分「ああ、観てよかったなあ」という感慨もまたひとしおである。予告編のインパクトが強かったために「見掛け倒し」に陥っていないか不安になっている方には「杞憂である」ととにかく伝えたい。冒頭、本格的なアニメーションが始まり「別の会場に入ったかな?」と一瞬不安になったものだが(汗)それは、主人公が「アニオタ」であるという設定に大いに説得力を与えた。その上、上白石萌歌がありあまる躍動感をもってして「アニオタ」の女子高生を演じた。実の父親を探し求める旅はあっさり目的を達するが、それは、かけがえのないひと夏の甘酸っぱい思い出となる。
いい人しか出てこない、癒される映画
タイトルでなんか尖った青春映画かなと思って観に行ったのですが、笑い所もある楽しい映画でした。
冒頭で古舘寛治演じるお父さんが上白石萌歌演じる娘と一緒に踊るシーンでこの家族の仲の良さが一度に分かり、その後の展開に説得力を持たせました。
その後出てくるキャラクターも魅力的な人物ばかりで、中盤の切なさや、最後のクライマックスでは登場人物の言うとおり自分もなんで泣いてんだろ状態でした。ほんといい映画でしたね。
「町田くんの世界」のような観賞後感の映画だなあと思っていたらもじくん、町田くんだったんですね、全然気がつきませんでした。
カット割りが少なく、対話が続くのが特徴的だなと思いましたが、役者からすると気持ちがきれないのがやりやすい分NG出すと全部やり直しだからイヤだったろうなとは思いました。
上映館増やしてあげてくれ
いきなり結構長めにアニメ始まったので、一瞬スクリーン間違えたかと思いました、笑。
雰囲気がとても好きな映画でした。自然な優しさに包まれていて、クスッと笑える小ネタやワードセンスがある。ストーリーは平凡と言えば平凡な気もするけど、心地よくてずっと見てられます。
カメラアングルが面白いですね。萌歌ちゃん目線だったり、遠目のカメラだったり、いい映し方してるなーと思いました。無駄なカットも多くて、これがこの映画のリズムというか余白というか、優しい雰囲気を演出してるんだと思います。
萌歌ちゃんよかったですねー自然体。かわいいんだけど、なんか普通にその辺にいそうでもあるかわいさなのがちょうどいいです。なんか足とかも健康的な太さで、変にモデル体型とかじゃないのがいいんです。
細田くんも優しい雰囲気いいっすねー酔っ払いもよかった。ドラゴン桜以来気になっております。
千葉雄大もかわいいし、斉藤由貴のオッケー牧場ややぶからスティックも最高です、笑。トヨエツもお茶目で素敵すぎる。
今の家庭がとても温かくて幸せな空気をしっかり出しているから安心して見られる映画なんだろなーと思います。
ちなみに、うちの野球部の先生は、なっ、じゃなくて、いっ、ってよく言ってました。たぶん、いい?の省略形です、笑。
トヨエツにキュンです💕
幸せな夏休み青春映画
ド直球の夏休み青春映画であり、アニメおたくな少年少女のガールmeetsボーイもの。
笑いまくったし泣いたし、幸せな138分。
沖田監督のフィルムって、不思議なほど自分と波長が合う感覚を覚えます。
上白石萌歌はかわいいし、水着がいやらしくないのがまたいいし、なんといってもトヨエツの死体姿がたまらない。
しかし、冒頭から(作品中の作品)アニメパートだったんで、なんか違う作品に間違って入っちゃったのかと戸惑いました。
平和で楽しい青春コメディ
タイトルからすると大人と子供が揉めるのかと予想していたが、はじまって早々に、どうやら穏やかに進んでいく作品だと見当がついた。奇想天外な展開や奇抜な登場人物は皆無で、ありふれた市井の人々のエピソードが続くという想定だ。
映画はほぼ当方の想定通りにストーリーが進むのだが、途中で登場人物がただのありふれた人々ではないことに気がついた。ありふれた人々にしては、人柄がよすぎるのだ。
人間は自分を基準にしか判断できないとはよく言われることで、本作品の登場人物たちは寛容で悪意の欠片もないから、他人の悪意が想像も出来ないのだろう。他人の悪意を想像しなければ、怒ることもないし、揉めることもない。どのエピソードのどのシーンにも悪意がひとつも登場しないのだ。なんとも平和で楽しい、天国みたいな映画である。
ビゼーのカルメン序曲は聞いているだけでなんだか忙しい気分になる超有名曲だが、この曲をテンポを変えてBGMにしている場面がある。これがとても効果的で、楽しいような浮かれたような気分になる。音楽に加えて、ところどころにギャグみたいなシーンを突っ込んで笑いを取る。タイトルとは裏腹の青春コメディである。初恋の要素もある。
主演の上白石萌歌は好演。歌も上手いしスタイルもいいし、どうやら運動神経もよさそうだ。青春=走るということで、走るシーンを効果的に使って若いエネルギーが弾ける様子を映し出す。
相手役の細田佳央太は19歳とは思えないほど演技が達者で、映画「町田くんの世界」~テレビドラマ「ドラゴン桜」~本作品と、まったく異なったキャラクターを演じている。若い演技派としてこれからも活躍しそうだ。
そしてなんと言ってもトヨエツである。この人の存在感が作品全体を引き締める。大したものである。育ての父親を演じた古舘寛治さんはツイッターで「投票向上委員会」への入会を呼びかけている。政治的な発言をする俳優が増えるのはいいことだ。
良質な和製コメディ映画
役者、カメラワーク、シナリオ、演出どれを上げても素晴らしい。毎シーンクスクス笑いありで中々日本映画にはない作り。
カット割りも良い。長回しだったりドローンだったり気持ちの良い割。特に冒頭のカットインはあるもののヒキすべてを見せるシーンはこの映画はこんな雰囲気の映画ですよって、良い意味で安心する。
上白石萌歌がダントツに素晴らしい。嫌味なくシーンをこなし、水着姿も健康的で安心出来る。豊川悦司との掛け合いなど全く動じずにこれからが楽しみな女優。
沖田監督のコメディセンスには脱帽させられる。原作は未読だが、原作に劣らないと思う。各役者の演技が素晴らしいから。
もっとこの映画を世間に観てほしい、キラキラ映画観ている場合ではない高校生や大学生。このセンスのいい映画を観るべき。
なぜ製作チームは映画祭など狙わなかったのかこれほどの出来であれば確実に大きい海外映画祭に出せて世界にアピールできたのに。こう言う考え方がないから日本映画は世界に売れない。だから予算が下がりクオリティが下がる。悪循環。
【意識と無意識の間にあるもの/親子になること、人を好きになること】
この「子供はわかってあげない」は、思いがけず強く印象に残る作品になった。
原作のことは知らないけれど、興味深いものなのだろうと想像もする。
そして、映画も秀逸な作品に仕上がっていると思う。
この夏公開の、いわゆる大作ではない邦画なかでは、「サマーフィルム」と、この作品がオススメかもしれない。
それに、敢えて選べと言われたら、僕は、こっちの方が好きかもしれない。
子供は、子供になろうと思って、自ら、そこにいるわけではない。
親だって、子供が出来て、だんだん親らしくなっていくのであって、親になるんだと敢えて意識してるわけではないだろう。
だが、物心つく前に離れ離れになった、この親子、美波と藁谷友充は、敢えて、子供になろう、親になろうと思ったのではないのか。
だから、美波は、水泳部の合宿期間プラス1日を、父親の家で過ごしてみたのだ。
藁谷が、門司くんに対して、酒を酌み交わそうとするのも、美波の父親らしく振る舞ってみたかったからに違いないのだ。
そして、藁谷が、相手の意識をどのように読むのか説明する際に、例に取られたミルフィーユ。
親子になるのに、もともと意識をすることなんてないと思うと書いたが、当然、無意識にでもない。
本当は、意識と無意識の間に、もう一つ重要な何かがあって、親子だとか人間関係に影響を与えているのではないのか。
ミルフィーユの生地と生地の間に滑らせるように……。
親子の関係だって人間関係だ。
意識はしてなくても、親子の関係に次第になっていくのだ。
ミルフィーユという課題に対して、泳げるようになるために水死体のように浮かぶという回答。
教えられて、それを人に教えて、繋がって、広がっていく。
これも、意識するとしないとに関わらず、全くその通りではないのか。
二人は気が付いたのだ。
親子になったのだ。
そして、これは、きっと人を好きになる時も同じだ。
徐々に、そして、いつのまにか意識することになって……。
高橋源一郎さんまで良い味出して、藁谷や門司くん、お兄ちゃん、水泳部のコーチ、お母さんにお父さんなどキャストは皆素晴らしいが、美波こと上白石萌歌さんが光っていたと思う。
なんか、良い余韻が残る作品だった。
夏休みの真空パックのような青春映画
最強のバカンス映画ならぬ夏休み映画。
ガールミーツボーイandガールミーツファーザー。
先週みた『サマーフィルムにのって』も爽快だったけど、こっちは絵の厚みが違った。その分予算も違うのだろうけど。ワンシーンワンカット的な前半攻め攻めの演出、横切る人の厚み、仕掛けの多さによる楽しみ。部活動あるあるではないが先生と部長、仲間に至るまで手抜かりなく面白い。
物語は中盤の水泳大会あたりからグンと面白くなり、そしてトヨエツが出てきてからはもうボーっと眺めてていい。にしても強い日差し、日本の夏の海の色、合宿、夏を丸ごと閉じ込めた感ある。そして沖田監督作品の伝家の宝刀である食卓芝居は今回も最高。トヨエツも沖田作品になるとこんなふうになるんだ、と。にしてもモカが不意をついてもの凄いいい顔をしてくる。斉藤由貴が出てるからか、往年の相米映画を思い出したりした。
なんか今年に関して言えば、夏休みを体験したかのような気分になって映画館を出てこれる。冒頭のアニメもちょっと長いし前半ちょっと長い。けど、ひょっとしてこの長いって感じがないとこの鑑賞後感には至らないのかもしれない、ってくらい夏休みに部屋で横たわる感じが残る。
薄い物語になってしまっている、、、なぜだ?
先行公開にて鑑賞です。原作とっても好きなので楽しみにしてました。
それが良く無かったのか・・・期待しすぎてしまったようです。
ほんわか雰囲気は良かったかな?で、かなりクスクスポイントと笑いの種類(シュールっぽい)は「あぁ、この雰囲気」って感じでしたね。原作完全再現ではないですが、ストーリーは外れていないかな。あと演出面で言うと、長回しカットが結構あってそれが作品の雰囲気作りに一役買っている気がしました。序盤のサクの家族描写は秀逸だったなぁ。脇を固めている演者さん達の力でしょうが、空気感が良かったですね。中でも豊川さん、さすがでした。健在ですね。キーマンですからね。ここが揺らいじゃうと大変になってしまったでしょう。
さて、本作は原作知らなければそこそこ楽しめるのでは?と思いました。原作好きな方には物足りななかったんじゃ?って思います。原作で描かれたTHE・思春期の心の揺れ動きが十分描かれていないんですよね、というか伝わってこないんです。特にサクとモジくんの間が特に。
原作内のセリフや場面は描いていますが、そのイベントに至る心情が見えないから、セリフのみで「そういう気持ちなんだ」って理解するしかない・・・って感じです。
サクとモジくんの成長とまではいいませんが、ちょっぴり変化していくプロセスの描き方が少なくて最初と最後のサクやモジくんの変化を感じないんですね。イベントが通り過ぎていくだけに見えました。淡々と飄々と展開しているようで、知らずに心情が変わっていく様が映像にはできていない気がします。あのエピソード、もっともっとドキドキしたかったなぁ。ラストのサクとモジくんに唐突感あるって思う方もいらっしゃるような気がします。
全体的に急いでエピソードこなしている感が強く、登場人物の心情に厚みを感じられなかったんですよね。明ちゃんの扱いや善さんの大好きなセリフがなかったことも残念だったかな。ま、仕方ないかな。色々事情あるでしょうし。
余談ですが、NIGHT HEADを熱く観ていた者からすれば、霧原直人が子供持ったらこーなるのか?こんな将来像か?などと思って一人ニヤニヤしてました。ま、本編とは完全に無関係ですが。
ちょっと残念だったなぁー。
これは、愛おしい夏の思い出のような作品だ!
初っ端から、スゴイ!
「魔法左官少女バッファローKOTEKO」って、何だ!
あれ、観る映画勘違いしたかと思ってしまうが、これで30分はもってしまいそうな勢いだ!
「オッケー牧場」や「藪からスティック」は、オヤジのダジャレのように、すべらせるためのギャグだが、なぜか言うたびに、ストーリーがスイスイとなめらかにすべっていく。
細かなところまで、スキがない。取ってつけたような、セリフやシナリオもなく、ストーリーはスイスイと進んでいく。
この映画にギャグはない。上白石萌歌演じる主人公“美波“のキャラや、同じ学校に通うアニオタ“もじ“くんのキャラで、思わず笑わせてしまう。
これは傑作だ!すべてのキャストがイキイキと輝く!
通常、138分の尺は長く感じるものだが、もっと観ていたくなる!そんな作品だ!
何だったら、トヨエツ演じる実のお父さんのところへもう一度戻って、キャンプに行ってもいいぐらいだ!
そんなこんなで、ぜひ劇場へ足を運んでほしい!愛おしい夏の思い出のような作品です!
2時間笑いっぱなし。
美波は水泳部のアニオタ女子高生。母と再婚した父と幼い弟と幸せに暮らしている。ある日、友達んちに遊びに行ったら、実の父親から送られてきた謎のお札と同じものを発見。その事がきっかけで新興宗教の関係者であろう、実の父を探すことに。
何となく予想していたロードムービー要素は全く無し。お父さんすぐ見つかる。で、会いに行く。ここでも長年会えなかった親子のぶつかり合い全く無し。イライラとかモヤモヤとか葛藤とか、メンタルに訴える要素は皆無。小ネタだらけで笑いっぱなし。
上白石萌歌ちゃんは強烈な丸顔で、屈折感のない素直な役がどハマりする若手ナンバーワンのコメディエンヌだと思う。久しぶりに豊悦の楽しい役も観られた。
始まりの劇中アニメが長くてビックリ。違う映画に座ってしまったのかと思うくらい。
やっぱ、夏の思い出といえば、海やプールだよね。老若男女問わず、頭を空っぽにして笑える楽しいコメディ映画だよ。
若者の青春なのになんだか懐かしくなる
ひと夏の温かくほっこりする話。長回しや間を多く使い、のんびりとした空気が流れる。田舎の縁側で寝転んで観たいような映画。
アニオタの女の子が、同じ趣味で意気投合した男の子と心を通わせながら、生き別れとなった実の父を探し会いにいき、自分を知っていく物語。
「親の心、子知らず」という言葉があるが、「子の心、親知らず」でもある。
「子供はわからない」ではなく「子供はわかってあげない」。親の知らないところで逞しく成長していく子供たちの青春を描く。
「OK牧場」や「藪からスティック」など懐かしいワードが飛び交ったり、小粋なセリフの掛け合いが心地いい。役者たちの自然な演技が引き出されている演出。
2時間20分と長めで特別ドラマチックな展開があるわけではないが、ぼんやり眺めてしまう。
胸の高鳴りと混沌としたひと夏の感情、会話劇と思えぬキャラ立った愛くるしさが堪らない
「レモネード」と例えよう。大きな波を見せるわけではないのに、会話劇にグッと引き付けられて、気がつけば心は踊っている。ひと夏によって輝き出す、プールのような乱反射は、眩しく屈折し、尊いモノへと輝かせる。
上白石萌歌演じる美波は、屋上で自身が好きなアニメを描く少年を見つける。それが、もじくん。ゆるくてどこか初々しい二人の会話は、聞いていて心地よい。とは言え、美波の家庭は再婚しており、もじくんの長男は家を追い出されたりと、境遇が良いとは言い切れない。そんなとこから始まるのが、生まれの父に会うこと。ようやく見つけた父は、新興宗教の教祖と聞いていたが、全く異なる姿をしており…。ひと夏に輝き出すのは、失っていた時間と距離。父と過ごし、少しずつ何かが変わっていく。この短くも濃い一瞬に、美波をはじめとした関わる人が成長していくような暖かさを感じる。おそらく、これは「空白」に対して「埋める」物語ではなく、「埋まっていたことに気づく」物語なのだ。だからこそ、美波は父に水泳を教え、父はもじくんに覚悟を教えるのである。「わかってあげない」のは、わかっているからこそ、分かる必要がないのである。だからこそ、親が教えることは、最後の仕上げであり、唐突に湧いた感情に整理ができないままの、ありありとした感情に眩しさを覚えるのだ。
沖田監督作品は、ドラマを除けばこれが初めて。没入するように撮られたシーンの数々に、爽やかな夏の匂いを感じずにはいられない。甘酸っぱくて、爽やかなラストに、しびれるばかり。さあ、この胸の高鳴りを、何と呼ぼうか。
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