劇場公開日 2021年8月20日

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「コメディ映画界トップランナーの真髄」子供はわかってあげない 今日は休館日。さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0コメディ映画界トップランナーの真髄

2021年8月27日
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『南極料理人』『モヒカン故郷に帰る』に次ぐ、3本目の金字塔を打ち立てたと言って過言ではない。映画史に残るコメディの大傑作。

今回、沖田修一作品の中でも圧倒的に磨きがかかっていたのが、唯一無二の「間」。普通の映画なら切るところで、まぁ切らない。予想だにしない間。独特でアグレッシブな間の作り方に、今回さらに拍車がかかっている。遠慮がない。
この間は映画的というより、お笑いのそれに近いと思う。長回しのシーンも素晴らしいのだが、要所のこの変な間が、全体の個性的なテンポを組み上げていく。緻密な計算と編集。この間を作られると、何もなくても、もう間だけで笑える。

そして同監督の得意技、というよりもう必殺技の域に達している「子供」と「素人」の使いこなしが圧巻。国内で長らく同監督の右に出る人はいない。

冒頭に挙げた2作品でも子役や素人(おそらく地元の協力者の方々)がザクザク爪痕を残すのだが、今作でもじんこちゃんや主人公の弟はもちろん、習字教室の子供達、フラダンスのおばちゃん達まで隙なく素晴らしい。
普通の監督は「マリオのお姉ちゃんの真似ー」なんて、訳分からんセリフを子役から引き出せない。化粧がちょっと濃いめの面白い顔のおばちゃんフラダンサーにスポットを当てない。奇跡のようなシーンに、もう感動すら覚える。

主要キャストの素晴らしさは言わずもがな。笑いのために作品を逸脱するシーン、アニメの予想外のクオリティ、オネエというよりババアな千葉雄大、背後で微動だにしないピンボケのトヨエツ、エスティマ〜など、語り尽くせない魅力の数々。

上映館数の少なさや、悲しくなるほど陳腐な作品群の予告編と並列されることなどへの不満もあるが、野暮なことは言わんとこう。

本当に素晴らしい。
私は今後、この作品を何度見返すのだろうか。

今日は休館日