リチャード・ジュエルのレビュー・感想・評価
全78件中、1~20件目を表示
イーストウッド監督の残酷な視点と説得力
主人公のリチャードは、母親想いでマジメな愛国者だが、ある理由で爆弾テロの犯人だと疑われてしまう。端的に言えば「デブでキモいから」。イーストウッドはその映画に必要な本質的な要素以外を削ぎ落とすタイプの監督でなので「デブでキモい」という周囲の偏見を、補強して説明しようとしたりはしない。リチャード役のポール・ウォルター・ハウザーも、確かに多少奇矯な人物を演じているが、ムリにオタクっぽさを強調したり、常識外れなふるまいをしたりはしない。メディア側や捜査側はリチャードの経歴や行動から反抗理由を探し出そうとはするものの、結局は「デブでキモい」という偏見だけが彼らの背中を押しているのだ。酷い話である。
実話をベースにしたなんとも恐ろしい物語であり、世の中の偏見に火をつけた女性記者が、自分の過ちに気づくというくだりにはハッとさせられる。その女性記者を、実際の人物よりもステレオタイプに描いたという批判が本人を知る人たち(新聞社)から出たことはとても残念だが、あの女性が自分の間違いに気づいたところでもはや何かができるわけではないという冷徹な事実を描いていることは、この映画の長所であるとも思っている。
ヒーローの変遷
西部劇での名無し殺し屋→カウボーイ→ダーティな刑事という強いマッチョなヒーローから、自分の中の暴力性に悩むヒーロ―を通過し、市井のごく普通に生活する人たちの英雄的な行為こそが真のヒーロ―だっていう辺り、「七人の侍」に通じるものがある。
この「リチャード・ジュエル」も、肥満、容姿もいいと言えない、仕事も警備員と冴えない青年が主人公。それでも、人を守る仕事をしたいと、周囲から馬鹿にされながら、警察官(現代の保安官)になることを夢見て、日々精進することを怠りない。そんな、人物がアトランタオリンピックの記念公園に置かれた爆弾を発見し、群衆を避難させるのだが、第一発見者で、怪しい部分が見つかって、容疑者として報道されて、FBIにも重要参考人として取り調べを受ける。
イーストウッドは、この物語で、政府とマスコミが、巨大な権力を持っていると描いている。多少、事実を脚色しているのかもしれないが、よくある爆弾犯人の人物像とジュエルを取り調べること出てきた特徴が重なるということ、先に捜査情報がジャーナリストからリークされ、どこもが特ダネを狙って、FBIはメンツがつぶされたっていうことが、誤認に繋がった理由か。最後、母がスピーチをするシーンと、ジュエルが取り調べに応答するシーンが、演出過剰でなく、真に迫っていてよかった。
自分は、利害関係やら欲得が絡んで、マスコミが報道することなんて、信じられないというのが現代の標準だと思っている。安倍首相関連の政治問題、暗殺事件、ウクライナ戦争に新型コロナウイルス感染症まで。かといって、ネットの情報も玉石混交。何が真実なのか、本当にわからない時代になってしまった。
正義って何か?国や宗教、利害関係が違えば、正義は異なってくる。そんな時代に、今、私たちは生きているって自覚したい。
うわぁ90歳!
なんとまぁ、クリント・イーストウッド御大まだ撮っていらっしゃるとは!御歳90、卒寿であられます。
流石にガンアクションは無いけれど、爆弾は派手にぶちまけられるし、ヒトビトはパニクって大騒ぎになるし、ハリー・キャラハン相変わらずやるじゃねぇの、え?って感じでございました。
舞台はアトランタ・オリンピック。アトランタという場所は、規模としては大都会かもしれないけど、やっぱりNYCやLAなんかと比べると、一段格落ちな感じがする。だからこそプロモーションを頑張ったのだろうなぁ…と、思うけど。さてそのひとつケニー・ロジャースのコンサートに爆弾が仕掛けられたというので、正義の味方リチャード・ジュエルは身体を張ってそれを発見したのですね。
でもその後が悪かった。「まず発見者を疑え」という推理小説まがいの基礎理論にのっとり、正義の味方リチャード・ジュエルはあやうく起訴されかかってしまう。そこで登場するのがかつての職場に居た弁護士。彼もコトあるごとに正義の味方(映画では「法執行官」と訳されていたけれどなんかそぐわない気がする)を振りかざすリチャー(のトロさ)にほとほと呆れつつ、それでもなんとか不起訴にこぎつけることができた、という話。
こういう、愚直で鈍重な人はおそらくとても多いのだろう。みんなその辺上手くかいくぐっているつもりでも。こういう人たちこそ騙されやすくてとても危険。
リチャード・ジュエル、貴方とても良い人。それはわかるんだけれどとてもアブナイ人でもあるんだよ。
名監督が手掛けた作品
鑑賞記録にも記載しているが、VOD…動画配信サービスで観ることが日常化しています。映画館へ行くのとは違い、多くの作品を簡単手軽に観られるので感謝ですね。
さて、「リチャード・ジュエル」はAmazon primeなどでありがちな、あなたの観た作品に関連する作品としてピックアップしました。実話に基づく作品、そして評価が高かったので…その評価の通り、終わりまで目が離せませんでした。エンドロールに…監督クリント・イーストウッドって!!!
驚いて、すぐ色んな方々の評価を拝見し、改めてクリント・イーストウッドが監督だとわかりました。こういう驚きは凄く嬉しい。そして2周目へ。
リチャードの物語りは1986年アトランタから始まった。そして10年後、真面目に職務に取り組むが、いき過ぎた摘発などにより大学警備の仕事を失う。法執行官になることに憧れ、不器用だが彼なりに正義を追い続けていた。そしてアトランタオリンピックが開催され、彼が警備員として働くコンサート会場にて悲劇は起きた。爆弾テロだ。
この事件後、彼は懸命な救助活動や爆弾の第1発見者だったことで一躍時の人となり、世間から英雄扱いをされる。だが、同時にFBIから容疑者として目をつけられてしまうのだった。
大学学長によるリーク、プロファイリングの一致などを根拠として捜査を始めようとしていたFBI捜査官が新聞記者に漏らし、スクープ記事が出回ってしまった。そして不幸にもリチャードと彼の母の生活は一転し地獄のような日々となった。
本作が視聴者にどう映るのだろうか。社会への警鐘か、主人公の人となりの良さか、またはメディアの不用意な情報漏洩、度を越す報道陣の行動、法執行官のずさんな捜査、官僚主義的な組織など、それらへの怒りか。我々の身近なところでも似たような出来事は起こり得るだけに波紋は大きいだろう。そしてこの題材をいとも簡単に作品にするクリント・イーストウッド。流石です。ただ作品を観ている最中にクリント・イーストウッド監督が手掛けたことに気付けない私って…まだまだなんだなぁ。
引き込まれる映画
1996年のアトランタオリンピック爆弾テロ事件が題材の実話に基づいた映画。
全体的に丁寧な進行で観やすく、主人公のナヨナヨに若干もたつくけど、最後は泣けた。
脚色もあるはいえ、マスメディアの不確定な情報の報道による冤罪やプライバシー侵害、FBIの腐ったやり方にイライラ!!
しかもリチャードは本当に優しい人なもんだから、本当に世の中の理不尽さに泣ける。
クリント・イーストウッド作品といえば「ハドソン川の奇跡」でもヒーローをよってたかって好き勝手言ってマスメディア怖ってなった。
最後にリチャードが捜査対象から外された時の、震える手でベーグル?ドーナツを食べながら笑みを浮かべては涙を堪えるシーン!役者さんの演技力が爆発した!泣けた!
無実の罪をなすりつけられて辛い思いをしたのに、騒動後も法執行官として郡保安官補を勤め、44歳で病死。
もう、、、、なんて結末だよ、、、
友人弁護士も良い人だった。
「唯一僕を人間として扱ってくれた」とリチャードが言ったセリフ。
容姿でいじられながらも、人々を助ける仕事がしたいと真面目に生きてきたリチャード。
なんでそんな良い人になれるんだ、、、。
これ…
観賞後にちょっと調べてみて、実話を元にした作品だということを初めて知りました。そして、女性記者キャシースクラッグスは、ドラッグの過剰摂取で自殺しているのね…。
実際彼女は、酒を大量に飲む、ヘビースモーカーで警察とつるんでる、そういう人物像だったようだけど、映画でのキャラはちょっと悪意を感じるというか。ネタをとるためには手段を選ばない、下品な言葉使い、FBIの男とも簡単に寝るような女性として描かれている。この作品はメディアの印象操作や冤罪の話を扱ってるのに、そんなことで良いのか??一番それやっちゃダメなんじゃ…?という素朴な疑問。
あとFBIって、ちょっと女に言い寄られたからって、そんな簡単に捜査のこと漏らすの?ほんとに?あと、あんな騙し討ちというか詐欺師みたいな手口で犯人に仕立て上げるの?怖いわ。
作品は地味だしフツーだし、特に前半テンポが今一つ。でも特別悪くはないかな~と思ったけど、特に女性記者の件で一気にガッカリ、気持が冷めてしまいました。
私が若かりし頃、「ミザリー」で出会ったキャシーベイツを久々に見れて嬉しかったです。
冤罪の作り方
日本では取り調べに弁護士を排除するなんて「当たり前」だが、米国でもあるんだなあ。
法廷モノかと思いきや、法廷に行く前に「拳を下げた」形だが、
これが日本なら、
証拠なしに逮捕、
自白するまで長期勾留、有罪。
となるのは間違いない。
マスコミと法権力が嫌いになる胸糞映画
新聞記者とFBI捜査官が強烈なヒール役でヘイトをとても集めてて凄い
ジョエルの間抜け感も見てられなかったけど、実際詰められるとああなってしまうのかも
母親まで辛い思いをするのは心が傷んだ
全体的に目が離せなくて面白い映画だった
弁護士最強
ゴーンガールを思い出した
手抜き捜査に手抜き報道、大衆迎合の怖さまざまざ・・
実話ネタが大好きなクリント・イーストウッド監督らしい直球勝負、宣材写真で主演のポール・ウォルター・ハウザーさんは実際のご本人とそっくりなので驚いた、もっともイーストウッド監督は「15時17分、パリ行き(2018)」では本人たちを使っているから、こだわり方は監督らしい。
確かに権力の横暴や怠慢、マスコミへの批判もよく分かる、本人は自分の職務を果たしただけといたって謙虚なのに英雄に祭り上げたかと思ったら舌の根の乾かぬ間に犯人に手のひら返し。地方紙どころか大新聞やCNNまで大衆迎合の浅はかさ、かっての記者もの映画にもなったジャーナリスト魂はもはやレガシーなのでしょうか。
もっとも今ではネットの誹謗中傷で自殺者まで出る世の中、劇中でも不可解なのはピエモンテ大学の学長がFBIに直訴するところ、良識ある教育者がやりこめられた腹いせのようでもあるが事実であれば由々しきこと。私見や風評だけで他人の人生を踏みにじる昨今の風潮に一石を投じています。
リチャードの実直すぎる生き方が今の世の中には不器用にも見える、弁護士ブライアントが素晴らしい、おそらく彼の助けが無かったら泣き寝入りになっていたかもしれません。
感動したのは無実を訴えるリチャードがFBIに向かって「私が恐れるのはこれから、もし警備員が不審物を見つけてもリチャード・ジュエルの二の舞にはなりたくないと黙ってしまうかもしれない・・・」と語るところ、実際に言ったかは解らないが素晴らしいセリフでしたね。
実直であることが不都合な人たちや笑いものにする人たちが主流を占める世の中では安全安心も危ういものになってしまうでしょう。
記者の枕営業は捏造だと新聞社が訴えたらしいが本人はうつ病の処方薬の過剰摂取で事件から5年後に亡くなっていますから真実は闇の中、FBIからのリークが無ければ記事は書けませんから特ネタを聞きだしたことは事実でしょう。ただ、マスコミを敵にまわしたことで映画興行は芳しくなかったようで残念です。
最初から白黒は明白に描かれますし、真犯人も逮捕されましたのでミステリー感はないのですが実話の重みで見入ってしまいました。
国が有罪といったら無罪の証拠
あまりの捜査の杜撰さに驚きを隠せなかった。
確実な証拠もなしにプロファイリングだけで犯人だと決めつけ、ずぶの素人でもわかりそうなアリバイの裏付け確認を怠るFBI。
真の真犯人を突き止めることよりも、FBIが現場にいながら対処できなかったことの後ろめたさを、「早期犯人逮捕」という既成事実をでっちあげて批判をかわそうとしているようにしか思えず、憤りを感じた。
脅迫電話と事件現場の距離に整合性がとれないと「共犯がいた」とまでこじつける始末。しかもジュエルの友人をゲイ関係だとみなし、アリバイも確認せず共犯に仕立てようとする。
リチャードを騙して脅迫電話の証拠を捏造しようと画策したり、本当に目を疑うほどの酷さに権力の恐ろしさを感じた。【私は確信する】でも感じたが、証拠はどうした、証拠は。
結局リチャードを立件し裁判にまで持ち込めなかったからなのか、現場にいた他の被害者たちの証言が全くなかったのが少し気になる。テーマがぶれるからという理由で監督が割愛していたのならそれもまた潔しとは思うが、その辺の詳細も知りたかった。
一部批評家や観客からステレオタイプだと批判を浴びた新聞記者の描写もそうだが、監督が恣意的に少し事実を曲げている節は少なからずありそうだ。
しかし「メディア」による印象操作はいつの世も危険を孕んでいて、一度ついたイメージは受け手側が情報をアップデートしない限り永遠にそのままになってしまう可能性がある。監督はこの時代だからこそ、情報は鵜呑みにしてはいけないいう強いメッセージを送りたかったのではないか。
性善説に基づき人を判断しないと善き行いすら躊躇してしまう世の中になると、映画は問う。
少し愚直なまでの愛国心と正義心を持ち、劣等感の裏返しに権力側の職業につきたいリチャードのような人間は扱いづらく厄介な部分もあるけれど、あらためて「推定無罪」の重要性を感じた。
最後、結局44歳の若さで早世してしまったリチャードの母ボビが、弁護を引き受けたワトソンの子どものベビーシッターをしていたというエピソードに泣けた。
余談だがサム・ロックウェルとキャシー・ベイツのインタビュー映像を見たが、二人とも醸し出すオーラが凄い。特にサムはロックスターかよという凄み。劇中のオーラ消しの術が凄い。
人物描写、設定が雑すぎる。
以前リチャードが警備員として働いてた学校の学長が、犯人はリチャードに間違いないとFBIに言うとバカなFBIは全員証拠もないのに信じ込んでしまう。学長から話を聞いたFBIは色仕掛けで迫る軽薄な女性記者に犯人はリチャードだろうと漏らす。女性記者は裏付けを一切取らず大スクープと舞い上がり一面の記事にする。暫くたって女性記者は犯人の電話とバッグを置いた時間が合わないのでリチャードは犯人ではないと思い始め、FBIに話すがそんなことは分かっている、共犯者がいるということだと取り合ってもらえないが、リチャードの母親のスピーチに感動して涙を流す良い人になってしまうが別にリチャードの嫌疑を晴らそうとは思わない。最後にFBIがリチャードに意味のない質問を次々するのでリチャードは自分が有罪になるのならこれから誰も不審物を見つけても通報しないだろうと言って勝手に帰るがFBIはその言葉が理解したのかしないのかわからないがなにも言わない。他にも弁護士の助手がリチャードの家が盗聴されていると理由もなく気づいたり、リチャードが英雄になったのは、爆発時の活躍を警官、警備員が証言したためだろうが、容疑者になってからは誰も証言する様子がないのも引っかかる。一度嫌疑がかかると晴らすのは難しいという話だが、あまりにひっかかる箇所が多すぎて話についていけなかった。
アメリカのマスコミとFBIをバカにしたいのかな?笑
多くの人の命を救った主人公が、逆に容疑者として無実の罪に問われる実話の物語です。
よく冤罪の映画ってあるけど、これもその類いと変わりません。よくあるよねアメリカって。。( ̄□ ̄;)
主人公は少し変わり者で正義感が強いので、裁判に不利な証言をしゃべらないかヒヤヒヤさせられますが笑
担当の弁護士のおかげで、最終的には救われてハッピーエンドにはなっております。
・・・・・が、これだけインパクトあるストーリーなのだから、もっと感情を煽るような大袈裟な演出があった方が良かった気はする。。
ちなみに作中では、裁判のシーンはありません。
尋問調査の過程が多く、その都度弁護士とリチャード・ジュエルが話し合ったり感情的なやりとりがあるだけで、流れは終始平凡でした。
反撃するところは大胆に度肝を抜くくらいやってくれたほうがスカッとするし、感動するところもセリフを選んで欲しい。。
僕が一番感動したのは、リチャードジュエルの母親が記者会見で無実を訴えてるところでしたかね。。
キャラクターの立場を想像すれば同情して当然で、そんな感情移入だけの映画だと思ってしまいました。
FBI怖すぎ
権力サイドがちょうど良く利用できる人間を見つけた時ってこうも都合よく平然と利用す恐ろしさに加えて、主人公の誤解されやすすぎる性格に見ていて悲しくなってきてしまい…。見た目や出自なんかでわかりやすい力を持たない事の不利って残酷すぎる。
被害者と加害者がありながらも、どちらにも寄りすぎずに起こった事を冷静な視点で伝える映画に感じました。
次を起こさない1番の方法ってこれだよな、感情に訴える事じゃない。事実を見える様にする事だよな。
でも感情にしっかりドラマが刺さるんだよな、イーストウッドの静かな凄みがゴゴゴゴゴ。
FBIのやり口の汚さは当時当然の事だったのだろうと感じさせる内容で、たまたま目につく所に都合良く自分がいてそうなったらと思うとゾッとするよ。
弁護士が良い奴で本当に良かったと最後にしみじみ思ったのでした。
主人公の見た目や性格を活かした映画!!
正義感が強いクソデブで迷惑だなと言う第一印象を上手く活かしていると思います。弁護士に丸投げした後も度々抜けたキャラを発揮して、結果他には無い映画になっていました。序盤は丁寧に描かれていますが、中盤「英雄」としてちやほやされるパートが短すぎる気がします。あくまでリチャードの話で、捜査自体はどう進んだのかは分からず、誰も謝らず、終盤に行くにつれてあっさりした印象でした。
イーストウッド監督はやっぱ凄い!
見始めてから、どんどん引き込まれ、一気に見てしまいました。見終わった後、疲れた、安堵したというのが第一の感想。実話なのに、よりフィクションぽい。事件があったのも、虚覚えで、あれ?これ結局第一発見者が結局犯人だった事件だっけ?と思いながら見ました。しかし、とんでもない話だなと。人々を救った英雄が、また家族までもが、国家権力とメディアによって、人格や、生活、その後の人生まで変えてしまう、悍しい事件だと。彼が尋問で言った、今後爆弾を発見しても、二の舞になるのを恐れ、第一発見者にはなりたがらない、したがって爆弾を見てみぬふりする、こんな本末転倒なことが起きてはいけないのは当たり前のこと。行き過ぎなくらい法の執行者に憧れ、自分が疑われているのにも関わらず、捜査官に協力的なことは見ていて、イライラしたし、もどかしかったですが、身の潔白が晴れた後も、警官になっていた事に驚くと共に、彼の信念を貫く姿勢に感服しました。しかし、五輪期間中に本国で起こった事件をいち早く解決しようと強引に進める国家権力はわからないではないですが、犯行現場と予告した電話ボックスの距離の矛盾を考慮しないなど、致命的にお粗末な点が、冤罪を招きかねないと感じました。また、他紙を出し抜くスクープほしさに、裏を取らないで報道してしまうメディア、またそれを裏を取らないで追いかけるメディアは同罪だと思いました。どう彼に謝罪したのか知りたいです。これはフィクションだと思いますがFBI捜査官と寝て、知り得たというのは本当でしょうか?最大のミスはまだ捜査段階の初めにリークしてしまったことだと思う。しかし、人は恐ろしい。報道されるうちに、それが真実と感じ、怪しいと思うと余計に怪しく感じてしまう。彼の見てくれや、過去の事件など、最もらしく感じてしまう。現代のSNSなど、どんどん個人特定や、自殺するまでに個人を追い込む事件が起きてますが、そこへの問題提起をイーストウッドがしている気がします。サム・ロックウェルは格好良く無いけど、良い味をだし、キャシー・ベイツも良かった。ジョン・ハムも憎たらしいFBIを好演。残念ながら、リチャードは心臓疾患で既に亡くなられていますが、この映画を見てどう思ったか聞いてみたい。
「映画」の使い方
俳優が「映画に・恩返ししたい」という声は聞くが、
監督は「映画で・恩返ししたい」ような姿勢に思える。
映画は映画にすぎず、「伝えるための手段」として道具(ツール)として、割り切って映画を作っている感じも受ける。
映画とは、「楽しさ」「悲しさ」「感動」「恐怖」「探求心」「夢」を伝えるための手段。映画の神髄を理解しているからこそ、監督の作る映画は、とても真摯だし、観ていて姿勢が正せられる。
可能な限りたくさんこれからも作ってほしい。監督の「映画に対する心」をどんどん残していってほしい。映画に対して真摯な人間が作る次回作が楽しみでしょうがない。
あんたは火を放ったんだぞ
映画「リチャード・ジュエル」(クリント・イーストウッド監督)から。
1996年のアトランタ爆破テロ事件で、犯人に仕立てられた主人公が、
常に「法執行官」として人を守るということを念頭においている生き方に
強く心を揺さぶられた。
真犯人も捕まって25年経った今でも、彼を疑っている人がいることに、
クリント・イーストウッド監督は嘆き、これを映画にして
彼の汚名返上・名誉回復を図ったことにも敬意を評したい。
「個人を称える役目は名誉なことだ」が監督の言葉だ。
さて、作品で心に残ったシーンは、根拠も証拠のない段階で、
他紙をすっぱ抜いたと大喜びした女性記者が務める新聞社に、
主人公と弁護士が乗り込み、怒鳴りつける。
それに対して「事実を伝える、それが私の責任よ」と彼女、
「あんたは火を放ったんだぞ。彼の生活を破壊した。
謝罪すべきだぞ」と弁護士。
大騒ぎとなる話、誹謗中傷の類は、ほとんどフェイク情報で、
発した人は、その後の展開にはあまり興味を示さない。
ほとんど責任を感じることなく、面白がってニヤニヤすることも多い。
だから、今回の弁護士の発言に、大きく頷いてメモをした。
本当の放火犯なら逮捕され、社会の制裁を受けるが、
フェイク情報の放火犯は、何も制裁を受けることはない。
だから、ネット被害がなくならないんだろうなぁ。
アトランタオリンピックの頃はまだ小学校に通ってたな。
主人公リチャード・ジュエルはかなり記憶力が優れているし、ちょっとどこかネジが外れちゃっている感じで、自閉症?のような不思議さがある。
それがブレない正義感の強さと繋がっていて信頼できるキャラクターなんだけど、色々と分析力があって冷静な割に、周囲にはちょっと好きな様にやられすぎてしまうところは矛盾があってホンマかいなって思う。
・・普通あの様な状況で、電話つかって「俺がやりました」って言えなんて言われても従わないだろっ!!って思うのだけど、やすやすと応じてしまう感じがおいおいこの展開はないだろってヒヤリとした。
ただそのあとはおきまりの安っぽい展開にはならなかったので安心。無駄に面白くしようとしてなくて面白いドキュメンタリーでしたよ。
あとバカな記者役の人はマジでピッタシの配役だね。
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