「純粋にひたむきに仕事に向き合った男の物語」リチャード・ジュエル ポップコーン男さんの映画レビュー(感想・評価)
純粋にひたむきに仕事に向き合った男の物語
世の中に起こっている出来事の一つ一つに触れる機会は非常に多いが、そのニュースであったり一つ一つの真贋や当事者たちの人となりや経緯にまで気付くことはなかなか難しい。
今作は96年に起きたテロ事件において英雄から疑惑の容疑者へと祭り上げられた一人の青年のお話。
アメリカでは良く見る太った白人の青年は見ているだけで何か頼りないと言うイメージを彷彿とさせ、知識はあるが正義感なのか仕事への姿勢なのか行き過ぎた行動も度々見られる。
その行動が後に疑惑の温床へと変わっていくのだが、、、。
冒頭からサム・ロックウェル扮する弁護士とのやりとりが面白い。誰よりも細かい事に気が付き、そして気配りやポイントを掴んでいる。非常に好感の持てるキャラクターだなと感じた。
この様なリチャードの人となりを丁寧に時間をかけて描いていくので、お世辞にもテンポは良いとは言えないが、やはり追体験していくと言う点では非常に重要なパートだと気付かされた点でもある。
周囲を取り囲む俳優陣もかなり鬱陶しくw(褒め言葉)
キャシー・ベイツはかなり良いキャラクターとマザコン(とまではいかないが)の息子と良い距離感で接しているありきたりな親子と言う感じが良い。また会見のシーンは本当に見ていて辛いと感じさせる演技はさすが、、、。
ジョン・ハムも本当に見ていて「なんやこいつ、悪い奴やなー」と思いながらもワンシーン・ワンシーンでなんとしても犯人に仕立て上げようとする冷徹な感じがニクイ。
そしてなんといってもオリビア・ワイルド。非常に不快感と嫌悪感を抱いた人は多いはずww(まあ演技なんですけど)
彼女の一言一言にイライラとさせられるが、やはり報道の持つ力の大きさ、そして事件の真相が不明なままでの容疑者の取り扱いには細心の注意が必要だと感じた。
容疑者の容姿が太っていたから、、、。身だしなみが汚いから、、。
外国人だから、、、。そんな些細な事ではあるが、一定のフィルターを通すと容疑者では無いのか?と疑心暗鬼になり加速度的に不安も生じていく。
今一度そんなフィルターを取り除かないとこの様な冤罪は無くならないと感じた。
日本の警察にも言える事だが、FBIもろくな証拠も無く決めつけで動いてしまう、しかも国の中の大きな権力が、、、。これが一個人にむかうのだから非常に怖い。
リチャードにはブライアントと言う頼りになる弁護士がおり、その点では非常に恵まれていたが、取り調べや家宅捜索のシーンで協力的に行っている場面では「何やってんねんww」と心の中で連呼していたw
しかしここもリチャードの良さと言うか、「僕は容疑者だがあなたたちの立場もりかいできる」的な、自分には犯行の証拠が無いのでどうぞなスタイルは理解でき無くも無いが、置かれているミスマッチな状況と相まってイーストウッド感が半端ないw
所々に心にずっしりとくるセリフや演技が散りばめられていて、映画とは何かと言うのを今回も監督は自分たちに提示してくれたと感じました。
「権力は人をモンスターにする」はFBIを示唆している様にも感じましたし、最後のFBIとの対決のシーンではスカッと晴れ渡る気分と彼の職務に対する凄まじい姿勢を垣間見た気がして心打たれました。
事件当日、ただの忘れ物として処理しようとしていた警察を遮り、「ただの警備員」が指摘し多くの人命を救った。
人間の価値は給与で推し量られる事もあるかもしれないが、誰より人命や職務に対して真面目に取り組んだ彼は非常に素晴らしく称賛されるべきだと監督も感じたのではないか?
悲しい事に若くして亡くなったそうだが、彼の行った行為とその行動は見習わなくてはならないし、色々と公平な目で(見ていく自信はまだないが)判断をしていかないと感じた。
エンドロールも非常に静かで作品の余韻を楽しみながらまたジーンときてしまった。
また新しく素晴らしい映画に出会った。