「爆弾一勇士」リチャード・ジュエル 梨剥く侍さんの映画レビュー(感想・評価)
爆弾一勇士
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口が酸っぱくなるほど余計なことをしゃべるなとずっと言っていたのに、リチャードが「根拠はあるのか」と反問して席を立ったあと、ついていく弁護士がうつむき加減にニンマリするところが白眉。そもそも状況証拠すらなく心証だけで捜査を進めるのは何をか言わんやである。
冤罪事件を扱った他の作品と異なるのは、主人公自体思い込みで暴走するきらいのある若干困った人物であり、見た目もヒーローとはほど遠いこと。この体型の主人公と言えば、マイケル・ムーアぐらいか。だからこそ、かえってこんな権力の横暴がまかり通ってはならないというテーマに説得力を持つとも言える。
近年クリント・イーストウッド監督作の実話路線が継続中だが、「ハドソン川〜」「15時17分〜」と本作には、大惨事を防いだ人々をとりあげるという共通項があり、彼のシンパシーがその辺にあるやと推察したりもする。相変わらず奇をてらったところのない手がたい演出だが、早撮りで知られる監督だからこそ、編集のジョエル・コックスの手腕を改めて評価したい(クリント・イーストウッドとのタッグはもう40年以上に及ぶ)。
日本のオリンピック関係者にとっては、今年この映画を公開してほしくはなかったかも。
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