「イーストウッドというアーチスト」リチャード・ジュエル むっしゅさんの映画レビュー(感想・評価)
イーストウッドというアーチスト
年に一作のペースで、老いても尚コンスタントに作品を送り出すイーストウッド監督。そしてその作品の完成度の高さ。いやむしろ完成していて当たり前。近年の作品のどれもが傑作揃い。本当に凄い人だ。
本作も題材が興味深く面白い、しかし大袈裟なエンタテインメントに走らず、静かにじっくりと、徹底して丁寧に描き出す物語は、イーストウッドの年輪を感じさせる味わいの深さとなってエンディングへと繋がってゆく。そのエンドロールが流れるとき、なんとも言えない優しさで包まれる。どんなに鋭い映画であっても最後は心に暖かい。これこそがアート。価値のあるものだ。
FBIやメディアに追い込まれてゆく主人公の内面演技の巧さ。その主人公に関わる弁護士と母親役の好演。女性記者の使い方は難しかったと推察されるも、登場人物のすべてがテーマから逸れずに活かされている。
エンタメに走るならもっとドロドロさせたりとやりようがあるのだろうが、そこまでを良しとしないイーストウッドの最適なさじ加減で収まっている演出が、それだけでも凄みを与えている。
素晴らしい映画をありがとう。そしてまだまだ多くの作品を作り出して欲しいと願う。
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