「本当の「強さ」ってなんだろう」リチャード・ジュエル hhelibeさんの映画レビュー(感想・評価)
本当の「強さ」ってなんだろう
ストーリーラインを聞いた時には「ハドソン川の奇跡」に似ている印象だったけど、実際に見たら全然違った。主軸は「強いものや権威に憧れていた男が、自分自身による本当の強さを獲得する話」だと感じた。
イーストウッド作らしく、キャラクターに寄り添いすぎないドライめな視点が心地いい。派手さはないけど、主人公も弁護士も過度に英雄視しない分、ラストは気持ちよく感動できた。
無理やり泣かせる感じではなく、内側からじんわりと滲み出るような感動で、見終わったあとにしみじみと「いい映画観たなぁ」という気持ちになり、余韻がとてもよかった。
周囲の人たちからも、多くすすり泣きが聞こえた。また、要所要所ではかなり笑いも起こっていた。リチャードと弁護士のキャラもあいまって、全体的に固すぎなく見やすい。
あと単純にサム・ロックウェルがかっこいい(個人の感想です)。
日本がオリンピック直前だということを差し引いても、さまざまな今日的テーマが描かれていて見応えがあった。マスコミの過剰報道や警察による自白強要などはもちろん、最近話題の「子供部屋おじさん」など、「見た目や生活環境により安易に疑いの目を向けられる」という恐ろしさにもリアリティがあった。
冤罪事件で犯人扱いされることは、誰にとっても他人事じゃない。
その時に私たちは顔を晒され、仕事や家族構成や学生の頃の様子などを調べ上げられ、まともな生活を奪われる。
もしそうなった時に、私たちはどう振る舞い、何を選択するのか。主人公のような「強さ」を獲得できるのか。そんなことを考えずにいられない。
一点だけ、オリビア・ワイルド演じる女記者がリチャードの母親の演説で泣いていたのはちょっと違和感。ああいう仕事の仕方をしていた人物が、あの短期間であそこまで変わるとは思えない。