劇場公開日 2020年1月10日

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「私たちは毎日戦っていると。」マザーレス・ブルックリン ku-chanさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0私たちは毎日戦っていると。

2020年3月2日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ライオネル( Edward Norton)は母親に小さい頃死なれて、探偵事務所経営のフランクに拾われ親か友達にようにして育てられた。その、フランク(Bruce Willis)が殺され、そこで働く彼の謎解きが始まった。ライオルはトゥレット障害 Tourette’s syndorome(瞬き、顔しかめ、首ふり、肩すくめ、咳払い、鼻鳴らし、叫び声、汚言症) の障がいを抱えていて、それにOCDもあるから、物事に対して執着心があり、これらの才能でフランクの殺人事件を解決する。

ライオネルが人と話すと、相手は『なに言ってるんだよ』というから、よっぽど彼を理解してあげていないと付き合うのは難しい。だから本人はガールフレンドともうまくいかなかったと。かれのこの障がいを『人は毎日戦ってるのよ』だから、みんな同じそれぞれ違った問題(障がい)をかかえているのよというようなことをローラ(Gugu Mbatha-Raw)はいう。ーー人は皆同じだという意味のこのシーンが好き。

驚いたことに悪人役のモーゼス ランドフ(Alexander Rae Baldwin)にとってはすぐライオネル才能を見つけ出し、障がいに関して興味を示さずどうでもいいようである。人種差別はするが、障がいのある彼には弱みを握られているせいかどうかは知らないが、モーゼスはDeveloper (街や土地を開発する不動産会社)人の良さや才能をすぐ見つけ出す能力がある。一般論だが、障がいを持っているの人はどこか他のところに長けている。フランクがミーティングでライオネルに公衆電話の裏にいて影の存在になってもらうところがいい。ーーいいアイデアだね。

この映画を見始めて、20分で飽きてしまって、やめようかなと思った時、興味のある内容に入っていった。すべての映画が政治と結びつくと絶対飽きないで見られる。私にとって、出だしのスローな展開が辛かったけどこれは小説の映画化だからね。(これは90年代の小説を映画
の脚本にノートンが書き換えた)小説は読んでいないが、ノートンの脚本は小説のようで好き。内容が深くて言葉で表現する映画で、かれは才能あるね。

この映画の好きなところは:
50年代のニュヨーク開発(ブロンクスやブルックリンなど)で、橋や公園を作ったりしたのは低所得者の人の住まいが多いスラム街(?)の住民を強引に出させ、そこを取り除き、再開発したものだが、アクティビストやそこに住んでいる人々は、「我々はスラムに住んでいるんではなく,ここに住んでいるのは労働者だ」と。そうだと私も思う。下から上への動きでこういう草の根運動から私は力をもらう。
アクティビストは『ニグロ(1950年代の黒人はこう呼ばれていた)を撤去させてる」と憤慨。現実はローラ曰く、ニューヨークに公園は255あるが、ハーレムに公園は一つしかないと。
50年代のデベロッパー(不動産会社)は公園や橋を作ったが(ここから収益を上げるつもりで)、今の不動産会社は、低所得者の住んでいる地域を一掃して、住まいを増やしたり、企業や商店が入れるビルを作ったりしている。住まいは所得が高くないと入れないような高額な住まいやアパートだ。これは、「gentificationジェンティフィケーション」といって、低所得者、特にマイノリティーを追いやって、そこを再開発する現在の社会問題と似ている。追いやられた特にマイノリーティーは十分に生活できなく、他の州に引っ越して生活できればいいが、再開発によって生活できなくなった人々は車の中に住んだり、ホームレスになったり、遠距離に家を購入して、そこから例えば、月曜日の朝早く通って、どこかに車を止めて寝て、金曜日に遠距離に購入した家に帰っていく。50年代も今も同じなんだな!

当時のニューヨークのハーレムのジャズは最高だ。
トランペットのソロはWynton Marsalis. https://www.youtube.com/watch?v=ST5NgujQiMk

https://www.youtube.com/watch?v=P09T9JYvo2w

最後はThom Yorke https://www.youtube.com/watch?v=gFjep-baGuU
の曲でライオネルの障害があるための寂しさや孤独感をよく表しているとノートンかだれかが話していた。Frederick Law Olmsted (April 26, 1822 – August 28, 1903)の名前が出てくるが、かれはニューヨークのセントラルパークやナイアガラの滝の公園を造園した人。
Robert Moses,  (December 18, 1888 – July 29, 1981) というデベロッパー(不動産業者)であり、政治的にもボスであった現実に存在した人がモーゼス ランドフに(アレック ボードウィン)に近い存在だと。

俳優エドワード ノートンが脚本、主演、監督を手掛けた映画で映画俳優や声優だから名前はしっているが、ここで彼の才能をまた開花させたと思う。収益をあげた映画ではなかったが、彼の場合、やりたいことをやるような人に見えるので、これが、いい足がかりになると思うが(?)かれは、日本に留学したこともあり、日本びいきで伊丹監督の『タンポポ』を好きな映画の一つにあげている。

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