劇場公開日 2020年6月5日 PROMOTION

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ハリエット : 特集

2020年6月1日更新

「圧巻の演技が見たい」「胸を打つ歌が聞きたい」なら、本作を要チェック!
アカデミー賞・主演女優賞&歌曲賞ノミネート作 “次のオスカー女優”が
体現する、“絶対に失敗しないヒーロー”の誕生を見逃すな――

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第92回アカデミー賞授賞式でシンシア・エリボが披露した、圧巻のパフォーマンスに目を奪われた読者も多いのではないだろうか。魂の歌声は会場のみならず、中継を見守る世界中の観客の心すらも震わせた。

そんなエリボが主演した「ハリエット」が、6月5日から公開を迎える。実在した奴隷解放運動家の半生が題材だが、「それでも夜は明ける」などとは一線を画す。むしろ「キャプテン・アメリカ」「アイアンマン」などのような、“ヒーロー誕生”を描いた作品に近い。

あらすじなどの詳細は 作品情報を確認してもらうとして、本特集ではエリボの魅力や、主人公がどんな女性なのか、そして実際に鑑賞した感想を中心に記述していく。


アカデミー賞授賞式の“伝説的パフォーマンス”が話題!
主演はシンシア・エリボ “次のオスカー女優”は、この人に違いない!

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本作の見どころの一つは、なんと言ってもエリボ自身である。「圧巻の演技を見たい」「胸を打つ歌が聞きたい」。そう思ったならば、万難を排して本作を鑑賞してほしい。


[圧巻の歌唱力]ミュージカル出身の超新星!

1987年1月8日生まれ、英ロンドン出身。2011年の舞台「天使にラブソングを」英国ツアーで主人公デロリス役を務めたほか、16年に第70回トニー賞の最優秀主演女優賞を受賞したことで、一躍“ミュージカルスター”として注目を集めた。グラミー賞にも輝き、まさにその実力と名を世界中に轟かせている。

本作では主題歌「スタンド・アップ」を歌い、第92回アカデミー賞の歌曲賞にノミネート。同賞授賞式での歌唱は、荘厳であり、また非常に力強かった。そのテレビ中継を見つめていた映画.com編集部では、そこかしこから「すご……」「一気にこの映画が見たくなった」との声が上がっていた。


【映像】魂を揺さぶる歌声! 感動の波を呼ぶパフォーマンス!

[映画出演は3作目]なのに…難役“アメリカ史上最も重要な女性”を熱演

2018年のクリス・ヘムズワース共演作「ホテル・エルロワイヤル」でスクリーンデビューを飾ったエリボ。映画出演は今回が3作目で、経験はまだ浅いにも関わらず、非常に難しい役どころを任されている。

それは“アメリカ史上最も重要”とされる実在の女性、ハリエット・タブマン。

この女性を演じるには、年齢や背格好(152センチほど)だけでなく、強い意志をたたえた瞳、規格外の歌唱力が必要だった。それらすべてを体現できる女性……世界を見渡しても、エリボをおいて他にはいなかっただろう。

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[今後のアカデミー賞も有力]映画ファンはチェックしておくべき女優

結果として第92回アカデミー賞の主演女優賞や、第77回ゴールデングローブ賞の最優秀主演女優賞(ドラマ)にノミネート。惜しくも受賞はならなかったが、その実力は本物だ。

近い将来、アカデミー賞に輝く可能性は非常に高い。だからこそ、彼女が初主演を飾った「ハリエット」は記念碑的な作品であり、映画ファンと自負する読者はチェックしておかなければならない一作と言える。


【予告編】彼女は一度も失敗せずに、奴隷から英雄になった――

描かれるのは、“絶対に失敗しないヒーロー”の誕生
ハリエット・タブマン 奴隷たちを解放し、歌い続けた実在の英雄

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では、エリボが扮したハリエットという女性は、どんな人物なのか? 彼女のことを知っていれば、本作のさらに深い部分を楽しむことができるので、鑑賞前に予習してもらえればと思う。

ハリエット・タブマンは、19~20世紀のアメリカに実在した女性だ。彼女はもともと奴隷として生まれ育ったが、あることをきっかけに奴隷たちを解放する運動家として活躍するようになった。その英雄的な行動と実績から、当時は古代の聖人になぞらえ“黒人たちのモーゼ”と呼ばれていた。

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・アメリカでは誰もが知る英雄 ・“地下鉄道”の一員として、奴隷たちを解放し続けた ・任務を失敗することは、ただの一度もなかった ・歌と行動で人々を鼓舞した“真のリーダー”
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地下鉄道とは、アメリカ南部から、奴隷制が廃止された北部やカナダへと、奴隷たちを逃す手助けをしていた秘密組織である。ハリエットは生涯で800人以上の奴隷を助けたが、そのうち1人たりとも捕まったり、連れ戻されたりしたことはなかった。

つまり、ただの一度も任務を失敗しなかった、ということだ。ドクターXばりの失敗しない女。

逃亡の際には、奴隷たちと秘密裏に交信する手段として“歌”が採用されており、歌詞に込めた暗号で集合場所などを指示していたそうだ。ハリエットは歌と卓抜したリーダーシップで人々を導き、英雄として生涯、周囲からの尊敬を集めた。

アメリカの新20ドル紙幣(2020年5月現在、発行が延期されている)のデザインには、ハリエットの肖像が採用されている。これは、アフリカ系アメリカ人としては初の出来事である。

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【本編レビュー】「それでも夜は明ける」みたいな映画かと思ったら…
まったく違った! 感覚はむしろMCUやDCのような“ヒーロー誕生映画”

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「実在の黒人女性の物語」「奴隷解放運動家として活躍した」。鑑賞前、そんな情報が頭に入っていたため、「ハリエット」は“ハードめな奴隷生活”を描いているのだろうと思っていた。ちょうど、ある黒人男性の12年間におよぶ壮絶な奴隷生活をつづった「それでも夜は明ける」のような。

ところが試写が始まるや、予想とはまったく異なる“手触り”に驚かされた。支配階級に虐げられる奴隷たちの悲哀? それはこの映画の導入に過ぎない。作風はむしろ、「キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー」や「バットマン ビギンズ」など、ヒーロー誕生を描いた作品に近い。

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本作は、1人の奴隷女性が農場から逃亡し、奴隷たちを導く“ヒーロー”ハリエットとして覚醒していく姿を描いている。何者でもなかった彼女が、自らの能力に気がつく。そして大いなる力には大いなる責任が伴うことを知り、愛する人々のため、立ちはだかる“巨悪”との戦いに身を投じていく。

ハリエットという女性の生涯に、近年世界的に存在感を増してきた“アメコミヒーロー映画”のテイストを融合。ハリエットと、スティーブ・ロジャースやブルース・ウェインらヒーローの人生が重なる……意外性に満ちていて非常に興味深い。

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そして物語中盤からは、ハリエットは奴隷たちを逃し続けたことにより賞金首となり、“奴隷ハンター”につけ狙われる。死力を尽くした「追う、追われる」のシークエンスが続き、スクリーンにスリルとエモーションが充満。重たいテーマにもかかわらず、観客の気持ちは途切れず、興奮は持続する。

こうした構造により、本作は史実映画が陥りやすい欠点を克服している。史実映画は往々にして説教臭く、教科書じみた内容に終始してしまいがち。しかし本作は、観客はカタルシスあふれる物語を楽しみながら、随所にまぶされたメッセージや教訓を感覚的に摂取することができるのだ。

予期せぬ場所で、予想をはるかに超える映画に出合う――。この瞬間があるから、映画を見ることをやめられない。「いい意味で、鑑賞前に思ってたのと違う!」。そんなことを思いながら、いつまでもいつまでも、スクリーンを見つめていたかった。

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